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4月29日の米国市場 

29-Apr-2008.png

主要インデックスの終値

DOW: 12831.94 -39.81 (-0.31%)
Nasdaq: 2426.10 +1.70 (+0.07%)
S&P500: 1390.94 -5.43 (-0.39%)

本日の主なニュース

(市場全般)

The Conference Boardが発表した4月の消費者コンフィデンスの指数は上昇修正された3月の65.9(1985=100)から下落し62.3となりました。 以下添付の関連記事によるとこの数字は、過去5年間で最低だそうです。
プレスリリース

S&P/Case-Shiller Home Price Indicesの2月の米国の中古住宅の価格は米国全体として悪化の傾向にあり、20の都市の指数は12.7%の下落、10都市の総合の指数は12.7%との下落となりました。

プレスリリースの中でStandard & Poor’sのChairman of the Index CommitteeのDavid Blitzer氏の以下の発言が引用されています。

「指数が底に達した兆候はありません」「一戸建ての価格は全国で引き続き下落しています。全ての20の大都市圏では、1月から2月にかけて下落となっています。さらに、20都市の内,19は一年間でマイナスとなっています。月ごとのデータでは、全ての都市が2007年の9月以来下落を続けています。その上、下落幅は20都市の内、8都市は急激に下がっており、どちらのコンポジット(10都市のものと20都市のもの)も、月の下落幅は最大を記録しています。」

(以下、プレスリリースからの引用です)
過去12ヶ月で大きく下落した都市は、Las VegasとMiamiで、それぞれ22.8%と21.7%の下落でした。この二つの市場は、2004から2005年にかけて、最も伸びた地域でそれぞれ50%, 30%を上回る年間の上昇を記録しました。

2月は、西海岸の市場が大きく下落しました。最もパフォーマンスが悪かったのは、サンフランシスコ、ラスベガス、そしてロサンジェルスでした。それぞれ、4%を超える下落となりました。Charlotteだけが、年間(過去12ヶ月)で上昇となりました。

プレスリリース

(企業決算関連)

Countrywideの第1四半期の結果は、8億9300万ドルの赤字となりました。これで、3四半期続けての赤字です。売り上げは昨年同期に比べ72%下落の6億7900万ドルでした。アナリストの予想平均は、一株当たり2セントの利益で、売り上げは15億ドルを見込んでいました。四半期でのCountrywideのローンの借入者の支払いの遅延は、約2倍となり9.3%となりました。約4.8%のローンの遅延は、90日以上支払いが滞っているものとのことです。

明るい話としては、住宅ローンの申請件数が第4四半期に比べ27%上昇し22億ドルとなったことです。そして、ローンを行う事業部は、税引き前で2億3200万ドルの利益を記録し、昨年の1億7100万ドルから上昇しています。Countrywideの株は本日若干上昇しました。

Countrywide loses $893 million in 1Q on rising loss reserve

MasterCardの第1四半期の結果は、利益が昨年同期に比べ倍増の4億4690万ドル、EPS$3.38でした。ブラジルの会社Redecardの株の売却益と顧客契約の完了に伴う収益効果を除いた分でも、EPS$2.59でアナリストの予想EPS$2.0を大きく上回りました。添付の記事に書いてあるのですが、特筆すべきはMasterCard, Visa, American Express, Discover Financial Servicesの2008年初め頃の結果は、どこも米国のカード保有者の消費額が増えているとのことです。MasterCardの場合、ドル建てでの(カード)決済額(消費額)は、昨年に比べ8.9%上昇の2590億ドルとのことです。ただし、アナリストのカンファレンス・コールで、CEOのRobert Selander氏は米国の消費者が住宅の装飾品等の贅沢品の購入を控える様になってきている傾向があり、消費者は非常に厳しい状況にあると認識していると語ったとのことです。平行して、米国外でのカードの使用は急速に上昇しており、カード使用による購入額は30%の上昇で3520億ドルに達したとのことです。地域としては、南米、南アジア、中近東とアフリカが特に伸びているとのことです。

MasterCardの株価は本日12.98%の大幅な上昇となりました。

MasterCard profit more than doubles as card use abroad rises

主なセクター・株の動き

(ファイナンス)下落しているところが多いですが、幅はそれ程でもありません。Goldman, Wachovia, Merrillは上昇しています。尚、昨日市場終了後決算発表したVisaは、昨日のアフターアワーズでは下落となっていましたが、本日はMastercardの予想を上回る好決算が発表された後上昇となりました。

(住宅)  上昇と下落に分かれていますが、幅はそれ程大きくありません。

(小売り)上昇している方が多い様に思えました。目立ったのはWal Martで2.2%の上昇でした。

(テクノロジー)主要なところで目についたのは、IBM 0.95%, Apple 1.63%, RIMM 3.19%, Google 1.15%, Yahoo 3.52%がそれぞれ上昇しています。

まとめ・コメント

Conference Board発表の消費者コンフィデンスは予想よりは良かったものの、数字自体はかなり悪いものでした。また、S&P/Case-Shillerの発表した住宅市場の状況は、住宅販売価格の下落が大きく、下げ止まる様子がないことを示しており、住宅市場の低迷が深刻であることを再確認する様な結果でした。
この様な指標が発表されても、住宅セクターの株は今日も上昇するところがあるのには、あきれることを通り越して、買う気になる人がいることに感心してしまいます。

株式市場全体としては、昨日と同様多少変動しましたが終値はそれ程変わらない水準で終了しています。消費者コンフィデンスや住宅市場の指標等は悪くても、ほぼ予想通りで下落の材料にはならない、といった反応だった様な印象を受けました。

しかし、今日の決算発表でのMasterCardの結果には驚かされました。好決算になることは予想されていましたが、予想を超えるものでした。海外の事業が急成長しているのは想定の範疇ですが、米国内の事業に関しても伸びているのでは、買いが大きく入るのは十分に理解できます。MasterCardの結果につられ、Visaまで上昇となりました。両社ともバリュエーション的には(完全に)オーバーバリュー気味になってきていますが、今の市場状況と今後の動向を考えた場合、買いが集まる傾向になるのは理解できます。一方で、ダウンサイドのリスクはかなり高くなってきていると思います。

明日は、いよいよFOMCの発表です。また、その前に第1四半期のGDPの速報値が発表される予定です。ほぼ予想通りの内容になる様に思いますが、市場は発表に注視している様です。個人的には、金曜日に発表予定の失業率の結果によっては、そちらの方が市場に与える影響は大きいと思っています。実際どうなるのか、注目です。

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バフェットからの手紙 (11-2)- 2007年版  

バフェットからの手紙 (11)- 2007年版 のの続きです。これで、2007年のバフェットの手紙はいよいよ最後です。

The Annual Meeting (年次株主総会)-続き

DodgeとPacificの間の72番通りに位置し77エーカー(注:約31万1609平米)の敷地に建つNebraska Furniture Martで、我々は再び“バークシャー・ウィークエンド”の割引きセールを行います。我々は11年前に、このNFMでのスペシャル・イベントを始めました。そして、“ウィークエンド”期間中の売り上げは、97年の530万ドルから2007年には3億90万ドルに伸びました。この売り上げは、殆どの家具屋の年間の売り上げよりも多いものです。

バークシャーの割引を手に入れるためには、総会出席の証明書を呈示し、5月1日の木曜日から5月5日の月曜日までの間に購入しなければなりません。この期間の特別価格は、いくつかの著名な製造メーカーの製品にも適用されます。これらの製品は、通常、割引に対して厳しく制限されていますが、我々の“株主の週末”の精神にのっとって、あなたのために特別な例外を適用します。我々は、彼ら(有名ブランドの企業)の協力に感謝致します。NFMの営業時間は、月曜日から土曜日までは午前10時から午後9時まで、日曜日は、午前10時から午後6時までです。今年の土曜日、午後5時30分から午後8時まで、NFMにおいて、ビーフとチキンのタコスをBaja Beach Bashが振る舞います。

Borsheimsでも、いつもの株主に限定したイベントを二つ行います。最初の一つは、カクテル・レセプションで、5月2日金曜日に午後6時から10時まで開催します。二番目は、5月4日日曜日、午前9時から午後4時までメインの特別な催し物を行います。土曜日は、午後6時まで開店しています。

週末の間中、Borsheimsにもの凄い数の人が集まります。皆様への便宜を図るため、株主価格は4月28日月曜日から5月10日までの間、適用できることとします。総会出席の証明書あるいはバークシャーの株主である証明書と身分証明書を提示して下さい。

日曜日、Borsheimsの外にあるテントにて、米国のチェス・チャンピオンを二度獲得したPatrick Wolffが目隠しをして、訪れた挑戦者と対戦します。対戦者は、6人の組で目はばっちりと開けて対戦できます。その側では、ダラスから来た素晴らしいマジシャンのNorman Beckが観衆を驚かせることでしょう。さらに日曜日の午後、二人の世界トップのブリッジ・エキスパート、Bob HammanとSharon Osbergが、我々の株主の方々とブリッジの対戦をすることができます。

Gorat’sは、5月4日の日曜日、いつもの様にバークシャーの株主だけのために開店します。食事を提供する時間は、午後4時から10時までです。昨年、株主向けの日曜日、240席あるGorat’sは915の料理を提供しました。3日間のトータルでは、2487の料理を提供、そのうち656は食通(cognoscenti)が好むメインディッシュ, T-ボーンステーキでした。(株主向けの)その日にGora’sに行く場合は、予約が必要です。予約する際は、4月1日に402-551-3733に電話して下さい。(その前にはしないで下さい)

今年も、米国外から来られた株主のためのレセプションを土曜日の午後、4時から開催します。毎年、我々の会合には世界中から多くの人が訪れます。チャーリーと私は、遠路はるばるお越し下さった方々に、直接、ご挨拶したいと考えています。昨年、われわれは様々な国から400人以上の方々をお迎えし、お会いさせて頂きました。米国、カナダ以外の国から来られる株主の方にはすべて、このレセプションに参加する特別の証明書と説明が渡されます。

************

84才と77才、チャーリーと私は、望む以上の幸せを得ています。我々は、アメリカで生まれ、素晴らしい両親から良い教育を得て、素晴らしい家族と健康に恵まれ、そして、“事業(ビジネス)”の遺伝子を持っていたため、我々の社会に貢献する多くの人々よりも、不釣り合いなくらい大きな富を得ています。さらに、我々は、才能があり愉快な仲間から、数えきれない方法で助けられながら、我々が愛する仕事を長い期間続けております。毎日が刺激的です。仕事するのにタップダンスをするのも不思議ではありません。

しかし、バークシャーの年次株主総会(Berkshire’s annual meeting)で株主の仲間の方々にお集まり頂くこと程、楽しみなことはありません。ですから、5月3日にクエストでの我々の年に一度の資本家達の祭りにお越し下さい。そこでお会いしましょう。

2008年2月

Warren E. Buffett
取締役会 会長

Source:
Warren Buffett's Letters to Berkshire Shareholders
February 29, 2008
http://www.berkshirehathaway.com/letters/2007ltr.pdf



おかげさまで、無事全て訳をすることができました。皆様、おつきあい下さいまして、ありがとうございました。楽しみにされていた方、途中、更新が滞りすみませんでした。

別途、エントリーで、バフェットの手紙に関しての私の感想を含め翻訳後記を書くつもりです。

4月28日の米国市場 

28-Apr-2008.png

主要インデックスの終値

DOW: 12871.75 -20.11 (-0.16%)
Nasdaq: 2424.40 +1.47 (+0.06%)
S&P500: 1397.84 -1.49 (-0.11%)

本日の主なニュース

(市場全般)

株式を公開していないプライベートの会社Marsが、シカゴのWilliam Wrigley Jrを一株80ドル、約230億ドルで買収することを発表しました。買収価格は、Wringleyの金曜日の終値に対して、28%のプレミアムが付いています。Marsは、SnickersやM&Ms等のチョコレート製品で有名な大手の会社です。Wrigley'sは、チューイングガムの大手で、Juicy Fruit, Orbit, Extra, Big Red等のブランドの商品を製造販売しています。Wrigleyは、1891年に創業された歴史のある会社で、Wrigley家によって創業時からずっと経営されていました。

Marsは、買収金額の調達に当たってウォーレン・バフェット氏の経営するBerkshire Hathwayに打診し、バークシャーは資金援助をすることを承諾したとのことです。現在の予定では、バークシャーが、買収後に設立されるWrigleyの子会社の株21億ドル分を購入するとのことです。

同時にWrigleyは、第1四半期の決算を本日発表しました。結果は、1億6860万ドルの利益、EPS61セントで昨年の同期から18%の増益となっています。Wrigleyの株価は、本日23.2%, $14.46上昇し、$76.91で終了しています。(買収提案価格より若干低い)

Mars buying gum maker Wrigley with financing from Buffett

上記のMarsによるWrigleyの買収の発表に関連して、CNBCの電話インタビューに対してバフェット氏が答えた話の中で、米国のリセッションは、多くの人が考えているよりもさらに厳しいものになるのでは、との見方を示したことが、報道されています。以下、それに関連する記事の添付とその抜粋です。

Buffett says recession may be worse than feared

この記事の中で、バフェット氏の発言として引用されている部分の邦訳を以下に記します。

「これは、私の専門分野ではありませんが、私の一般的な感覚として、(今回の)リセッションは、ほとんどの人が思っているより長く深刻なものになると思います。」「今回のものは、短く、浅いものではないでしょう。」

週末のエントリーで、投資家のセンチメントが上昇していると書きましたが、その一方でMorgan Stanleyのアナリストが顧客に対してファイナンシャルの株を売る様に推奨し、現在のクレジットクランチはまだ始まったばかりだと言っているとのロイターの記事が報道されています。以下にリンクを添付します。

Morgan Stanley see big bank woes just beginning

投資家のKirk Kerkorian氏が、Fordの株を4.7%取得したことを発表し、更に追加で一株$8.5で最大2000万株まで購入する予定との声明を行いました。追加購入で提示した$8.5は、金曜日の終値から13.3%のプレミアムを付けた価格です。Fordの株は本日9.5%上昇し、$8.21で終了しました。
Kerkorian seeks to boost Ford stake, citing solid turnaround

(企業決算関連)

米健康保険業大手のHumanaの四半期の結果は、利益が13%の上昇で市場の事前予想を大きく上回りました。また、2008年の利益見込みに対しても、一株当たり$4.10から$4.35の間に引き上げました。(その前は、$4.00から$4.25) Humanaの株価は、本日3.34%上昇しました。

Humana profit rises 13 percent

携帯電話サービス大手のVerizonの四半期の結果は、17億4000万ドルの利益、EPS61セントでした。昨年のEPSは60セントで1セント上昇しています。アナリストの予想はEPS61セントで、結果は予想に合致しています。株価は本日2.46%上昇しました。
Verizon Profits Match Estimates, Sales Rise

市場終了後にVisaが四半期の結果を発表しました。結果は、3億1400万ドルの利益で、EPS39セントでした。昨年に比べ28%の上昇となっています。Visaは先月IPOしたばかりで既に大幅な上昇を続けてきていたのですが、今日の決算発表後のアフターアワーズでは5%程度下落しています。
Visa quarterly net income rises 28%

主なセクター・株の動き

(ファイナンス)上昇したところと下落したところに分かれていますが、変動の幅は大きくありません。

(住宅)  今日も主要なところはほとんど上昇しています。

(小売り)下落したところが多い様に思えましたが変動の幅はそれ程大きくありません。BestBuyは上昇しています。

(テクノロジー)上昇と下落に分かれています。主要なところで上昇したのは、Intel, Apple, Google, Sun Micro, Motorolaで、下落したのは、Microsoft, Yahoo, Cisco, TI, IBM等です。

まとめ・コメント

週末のエントリーで、投資家(ファンド・マネージャー)の間でクレジット・クランチは最悪の時期を脱し、企業決算動向も心配した程悪くない等の理由から市場に対して楽観的な見方が増えている。 (Barron’sの記事等) また、ヘッジファンドが債券を売り、株を買う動きがここ2週間で活発になってきている。(WSJ、FT)、といった記事を取り上げましたが、上に書いた様に今日の朝、報道されたMorgan Stanleyのアナリストの話や、バフェット氏のリセッションに対する見方についての報道があり、対照的な見方の報道がされています。(バフェットさんは以前からその様に言っていました。)

物価の上昇、原油の高騰や商品の高騰により当面の間は、さらなる物価の上昇の見込み、失業率の上昇、人員削減を行う企業が増えてきている、この様な状況の中で、消費者のコンフィデンスも下がってきています。また、住宅市場の低迷に関しては、回復の兆しはまだなく、販売価格が下落していることが明らかになっています。この住宅市場の低迷、住宅価格の下落に関連した悪影響はこれからもっと大きくなることが予想されます。

これだけの悪材料を考慮した場合、経済の先行きに対して当面はかなり厳しい状況となると考えることが自然だと思います。それに対して、米国の株式市場は多少調整はありましたが、かなり戻してきています。やはり、あまり楽観的な見方はできないのでは、と思います。

後は、どれだけ今後、好材料が出てくるか、にもよるかと思います。明日からFOMCが始まり水曜日にFedの金利政策が発表される予定なので、市場はFOMCの結果とFedの今後の政策待ちとなってきている様です。今回、Fedは25bpの引き下げを行い、その後は経済動向を見ながら柔軟に対応していく、といった姿勢を示すと見られている様です。

週末掲載された気になる記事 

金曜日25日のエントリーにも書きましたが、米国の消費者コンフィデンスが四半世紀以上(過去26年)で最低となったことが、発表された一方で投資家のコンフィデンスは急上昇している様です。

「クレジット・クランチの最悪の時期は終わった」との見方が強まってきており、投資家のコンフィデンスが上昇しているとの記事が、この週末のWSJ、FT、Barron's等で掲載されています。これらの記事で、特に興味を持ったものについて、以下に記します。

Wall Street Journal

Belief That Worst Of Credit Crunch Is over Lifts Stocks
(コメント)
タイトル通りの記事で、簡潔に金曜日の市場の動向等をまとめています。

26日のMoney&Investingの一面に上記記事が掲載されているのですが、その隣(こちらの方が大きい)に、Peter Bernstein氏のインタビュー記事があります。Bernstein氏は今回の市場の問題は非常に深刻な問題を抱えており、解決するまでには非常に長い期間かかるであろうと、見ている。と語っています。(以下に添付の記事は、無料で読めます。是非、一読をお勧めします。)
One Guy Who Has Seen It All Doesn't Like What He Sees Now

Financial Times

Japanese bonds see biggest rout in five years
(コメント)
この記事は、日本の債券が大きく下落したことを取り上げ、このことが全世界で債券市場の幅広い売りを誘発したと書いています。背景として、投資家のコンフィデンスが上昇し、債券を売り、証券を買う動きが顕著になってきているとあり、ヘッジファンドが先週の初めから債券を売り始め、証券を買う動きが活発に行われていると報道しています。

Barron's

Back in the Pool (オンラインのメインページのタイトルは”The Bulls are Back"です。)
(コメント)
米国のポートフォリオ・マネージャーに対する調査(アンケート)をまとめた記事なのですが、市場が今後上昇すると予想している投資家が非常に多いことを示しています。また、ファイナンス・セクターは、完全にアンダー・バリューとなっているため大きく上昇すると見ている様です。一方、住宅市場に関しては回復に対しては時間がかかるであろうとの見方が大勢を占めている様です。また、テクノロジーが最も上昇すると考えている人が多い様です。個人的には驚いたのですが、DOWが今年の終わりには15000に達し、来年はさらに大きく上昇すると見ている人も多くいる様です。このシナリオとして、OILの価格が半値になることを過程(前提条件)としている様ですが、個人的にはもっと色々な楽観的なシナリオの条件がなければそこまでは上がらないと思います。

非常に興味深い結果です。大勢の見方が、自分の見方と大きく異なる、と言った点で参考になりました。ファイナンスが大きく上昇する理由として、バリュエーションを挙げています。しかし、今後損失計上が大幅に減ったとしても、ここ数年の様なLBOのブーム等の恩恵で得られた莫大な利益は当分の間見込めず、巨額な資金調達をしたことにより、利息の支払等のコストの増加等が収益の増加の足かせとなったりすると、個人的には考えています。どの様に考えれば、収益が大幅に上がるシナリオが描けるのか、私には判りません。私も、5年10年と言った長期的な視点で見れば、ファイナンス・セクターの株はバリュエーション的に魅力的な水準だとは思いますが、短中期的に大幅な株価上昇を支える程、収益が得られるのか懐疑的です。

マクロのトレンドとして自分の見方は異なりますが、先週の市場の動きやBarron'sの記事、債券市場の動き等を見ると、少なくとも短期的には、買いのトレンドが強くなる可能性は高くなってきている様です。

来週以降、市場がどう動くのか注目です。やはり、FOMCが鍵を握るのでしょうか?

バフェットからの手紙 (11)- 2007年版  

バフェットさんのバークシャーの株主宛の手紙の邦訳の続きをエントリーします。これが最後のセクションです。2回に分けてエントリーします。前回までのエントリーは、このブログの”ウォーレン・バフェット”のカテゴリーから読むことができます。

The Annual Meeting (年次株主総会)

今年の我々のミーティング(総会)は、5月3日土曜日に行なわれます。いつもの様に、クエスト・センター(Qwest Center)のドアは午前7時に開きます。新しいバークシャーの映画(映像)は8時30分から上映されます。9時30分から、質疑応答は始まり3時まで執り行う予定です。(クエストのスタンドで昼食の休憩があります。)それから、小休憩の後、3時30分に、チャーリーと私で株主総会を招集いたします。もしもあなたが本日の質問の時間の最中に退出なさるおつもりでしたら、どうぞチャーリーがしゃべっている時にして下さい。

最も良い退出の理由は、もちろん、買い物です。我々は、ミーティングの場所に隣接した19万4300スクウェア・フット(注:約18000平米)の会場にバークシャーの子会社の製品を展示しています。昨年、2万7000人の人がミーティングに来られ、彼らの役目(買い物)を果たしてくれました。殆ど全てのところで、記録的な売り上げを達成しました。しかし、あなた方(の力)で、もっと良くすることができます。(必要であれば、私がドアをロックします。)

今年、我々はクレイトン・ホーム(Clayton home)の展示を再び行います。(Acme brick(バークシャーの子会社の煉瓦), Shaw carpet (同カーペット), Johns Manville insulation (同建物の断熱材等), MiTek fasteners(同ファスナー), Carefree awnings and NFM furniture(手入れが不要な日よけと家具)が使用されています。)この1550スクウェア・フット(注:約144平米)の家は、6万9500ドルという素晴らしい価値を提供する価格となっています。そして、その家を購入した後、そばにフォレストリバーRV(RV: リクリエーショナル・ビークル)と平底舟(pontoon boat)が展示されていますので、こちらもご購入を検討してみてはいかがでしょう。

GEICOは、多数の国内のトップ・カウンセラー達がブースに待機しており、自動車保険の見積もりをお出しする準備ができています。殆どの場合、GEICOは株主特別割引(通常8%)を提供することができます。この特別オファーは、我々が業務を行っている50の司法区域の内45(注:米国の州のことだと思います。)で認められています。(一つの補足ポイント:もしも、あなたがその他の割引、例えば団体割引の権利が得られる場合、この割引は追加として適用できません。)あなたの現在の保険の詳細を持参の上、我々がお金を節約することがでくるかどうか、チェックしてみて下さい。最低でも皆さんの中の50%の方は、節約できると思います。

土曜日に、オマハ空港にて、皆さんの視察用にいつものNetJetsの飛行機を配列しておきます。クエストのNetJetsのブースに立ち寄って、これらの飛行機についてご覧になってみて下さい。オマハまでバスで来て、帰りはあなたの新しい飛行機で帰って下さい。そして、機内に持ち込みたい全てのヘアジェルとはさみを持ってきて結構です。
(注:米国の通常の航空機では、持ち込みに厳しい制限があり、通常、はさみやヘアジェルは機内に持ち込むことができません。)

次に、もしもお金がまだ残っていたのであれば、Bookwormを訪れて下さい。そこには、25の本とDVDがあります-いつもの様にPoor Charlie’s Almanackを筆頭として、全て値引きされています。宣伝もまったくしていなくて、本屋の陳列もないにも関わらず、チャーリーの本は今の時点まででに驚くべきことに5万部近くも売れています。ミーティングに参加できることができない皆さんは、poorcharliesalmanack.comに行ってコピーを注文して下さい。

(注:アマゾンの仲介の(個人)売買でもこのマンガー氏の本を扱っていますが、プレミアムがついて(倍以上の値段)販売されています。
http://www.amazon.com/Poor-Charlies-Almanack-Wisdom-Charles/dp/1578643031)

ミーティングとその他のイベントに参加するために必要となる証明を手に入れる方法を説明したものが、このレポートと一緒に同封されている委任状の書類に添付されています。航空機、ホテル、車の予約については、皆様に特別なお手伝いを行うために、我々は再びアメリカン・エキスプレス(800-799-6634)と契約しました。Carol Pedersenがこれらの事柄について取り扱います。彼女は、毎年素晴らしい仕事をしてくれます。私はそのことについて彼女に感謝しています。ホテルの部屋を見つけることは難しいのですが、Carolと話して下さい。部屋を押さえることができるでしょう。



ここで一旦終了します。後、一回で終わります。このエントリーで取り上げた部分からも、バークシャーの株主総会(Annual Meeting)はかなり大きなイベントなことが伺えます。しかし、昨年は27000人も参加したとは、驚きです。エントリーするのが遅くなりすみませんでした。後1週間(5月3日)で、このバークシャーのAnnual Meetingは開催されます。

4月25日の米国市場 

25-Apr-2008.png

主要インデックスの終値

DOW: 12891.86 +42.91 (+0.33%)
Nasdaq: 2422.93 -5.99 (-0.25%)
S&P500: 1397.84 +9.02 (+0.65%)

本日の主なニュース

(経済指標関連)

4月のミシガン大学消費者コンフィデンスの指数は、3月の69.5から下落し、62.6となりました。この数値は、過去26年間で最低とのことです。下落の理由は、高い燃料費と食費、収入の増加の減少と住宅価格の下落のためとのことです。今後の見込みの指数(Consumer Expectation)は、3月の60.1から下落し53.3になりました。
プレスリリース

(企業決算関連)

昨日市場終了後に発表されたAmerican Expressの第1四半期の結果は、利益が6%減の9億9100万ドルEPS85セントでした。継続している事業からの利益は、昨年同期に比べ9%減の一株当たり84セントでアナリストの予想を4セント上回りました。American Expressの株価は、5.37%上昇しました。
プレスリリース

ハードディスクドライブの大手Western Digitalの第1四半期(経理上は第3四半期)の結果は、利益が2億8000万ドル、EPS$1.23でした。昨年の同期は、利益が1億2100万ドル、53セントだったので、今回の利益は倍増以上の大幅な増益となりました。次の四半期の、Western Digitalの利益の予想は、一株当たり77セントから83セントの間になると発表しました。アナリストの次の四半期の利益予想は、80セントでした。次の四半期の利益も予想の範囲内ではありましたが、一部の投資家の間では今後の収益に対する不安が高まった様で、株価は本日9.09%の大幅な下落となりました。
Outlook weighs down Western Digital shares

半導体ウェハー製造の大手MEMC Electronic Materialsの第1四半期の結果は、4180万ドル、一株当たり18セントの赤字でした。損失の原因は、所有する太陽光発電の機器製造のSuntech Power Holdingsの価値が低下したことによるものとのことです。ワンタイムコストを除いた場合、一株当たり84セントの利益でした。アナリストの予想は一株当たり85セントで1セント予想を下回りました。また、今後の見込み等に慎重な見方を示したことが、投資家の不安を高めた様で、本日株価は6.44%の大幅な下落となっています。

MEMC Reports First Quarter Results

主なセクター・株の動き

(ファイナンス)今日も上昇しています。上昇の幅が大きかったのは、Wachoviaで5.22%上昇しています。

(住宅)  今日も主要なところはほとんど上昇しています。

(小売り)主要なところは殆ど上昇しています。一方、消費者向け製品の製造メーカーの株は若干下落しているところが目につきました。(例:Johnson&Johnson, Kraft, P&G, Pepsico)

(テクノロジー)昨日市場終了後に決算を発表したMicrosoftは、6.19%の大幅な下落となりました。Yahooも1.83%の下落となっています。Apple, Googleは微増、Intel, HP, Cisco, Oracleは下落しました。

まとめ・コメント

本日朝、4月のミシガン大学消費者コンフィデンスの指数は過去26年の中で最低となったことが発表されました。しかし、Dow JonesとS&P 500は上昇して終了しました。個人的には、理解に苦しむところですが、上昇した理由として、以下に添付する記事の中で引用している投資関係者の話を抜粋します。

Dow ends up 43 as many investors overcome economic worries

「企業の第1四半期の業績報告は、投資家達に全般的に状況はそれ程悪くない、と確信させる様な結果だった。」Tom Lydon, president of Global Trends Investments

上記記事の中で、消費者支出が米国の経済の約70パーセントを担っている状況の中で、(ミシガン大学消費者コンフィデンスが大きく下がっていることに対して)S&P 500の企業について「米国のビジネス・アクティビティ(ビジネス活動)は強く、グローバルな分野では特にそうです。」「今後を計る上で見るものとして、それ(消費者コンフィデンス)は間違ったものです。」
David Bianco, UBS equities strategist

(引用終わり)

正直なところ、2番目の引用の発言に対しては「本気でそう思っている訳?」と聞きたくなる様な発言なのですが、実際にその様に思っている人もいるのだと思います。そうでなければ、今日の市場の動きは説明できないと思います。

しかし、消費者コンフィデンスが急激に悪化していることは事実で、本日発表のレポートでも下落の理由として挙げられている燃料費、食費の高騰、収入の上昇の低下、住宅価格の下落は全て、実際に起きていることです。今後、米国の消費者支出が下落することは、ほぼ確実と思われます。どの程度消費者支出が下落するのか、その米国経済にあたえる影響がどの程度あるのか、は不明ですが、与える影響はかなり大きいものとなると考える方が妥当だと思います。

ただし、今日の市場の動きもそうですが、上に書いた様な私の考えが仮に当たっていたとしても(普通そう考えると思いますが)、それが株価にすぐに反映されないのも現実だと思います。個人的には、ここ最近のファイナンス、住宅セクターの株価の上昇は”Irrational Exuberance” だと思っています。株価の動きに対して、そう思うことは、しょっちゅうあるのであえて書く程ではないのかもしれませんが、今日の市場の動きは典型的な気がしています。

一方で、全てのセクターで投資家のセンチメントが再び盛り上がっている訳ではありません。MicrosoftやWestern Digitalの株の大幅な下落等、テクノロジー株は決算発表後に大きく売られるケースが多くあります。2倍以上の大幅な増益の結果発表を行ない、今後の見込みに関しても大幅な減益あるいは赤字転落を予想している訳でもないにも関わらず、アナリストの予想より少し低かっただけで大きく下落したりしています。(Western Digital等)一方で、予想を大幅に上回る赤字を発表する住宅メーカーが、決算の発表後に上昇したり、減益が続き、資金繰りに窮し、(将来的な収入に対して明らかにネガティブな要因となる) 多額の資金調達を発表した金融企業の株が発表後にあがる等、セクターによって非常に対照的な動きが目につきます。

来週は、FOMCに再び注目が集まってくることとと思います。25bp引き下げが有力視されている様ですが、Fedも市場が底を打ったと見ている訳ではないと思うのですが、どの様な発表をするのか注目です。

4月24日の米国市場 

24-Apr-2008.png

主要インデックスの終値

DOW: 12847.90 +84.68 (+0.66%)
Nasdaq: 2428.92 +23.71 (+0.99%)
S&P500: 1388.78 +8.85 (+0.64%)

本日の主なニュース

(経済指標関連)

米国商務省 国勢調査局が発表した3月の新築住宅の販売結果は、修正後の2月の季節要因を考慮した年間販売換算数に対して8.5%の下落、昨年の3月と比べた場合36.6%の下落となりました。この結果は、過去16年半の中で最も低い数値とのことです。販売価格の中央値は22万7600ドルでした。これは、昨年3月と比べ13.3%の下落で、一年間の価格の下落の幅としては、1970年7月に記録した14.6%以来で最も大幅な下落となりました。在庫は、現在の販売ペースで11ヶ月分あるとのことです。

米国商務省プレスリリース

New home sales plunge to lowest level in 16 1/2 years

(企業決算関連)

Fordが発表した第1四半期の結果は、赤字の予想に対して、1億ドルの黒字でした。尚、Fordは2008年は赤字となること、売り上げの見込みに関しては引下げることを同時に発表しています。
Ford swings to $100M profit in 1Q, surprises Wall Street

3Mの発表した第1四半期の結果は、利益が28%減の9億8800万ドル、EPS$1.38でした。売り上げは、9%上昇し64億6000万ドルでした。減益ではありますが、アナリストの利益の予想EPS$1.35を上回りました。また、08年の年間の収益見込みに関しては、従来の一株当たり$5.48を堅持すると発表しました。3Mの株価は、本日1.64%の下落となりました。

3M 1Q profit fell from year-ago, but beats expectations

市場終了後にMicrosoftが四半期の決算を発表しました。結果は、昨年同期に比べ11%下落の43億9000万ドルの利益、EPS47セントでした。結果はアナリストの予想EPS44セントを上回っています。また、次の四半期の利益見込みを一株当たり45セントから48セントに引き上げました。しかし、発表後のアフターアワーズでの取引では、5%近い大きな下落となっています。

Microsoft 3Q profit falls from Vista-heavy 2007 quarter

(市場関連全般)

今日の市場の大幅上昇に大きく寄与したのは、なんと言ってもファイナンス・セクターです。このファイナンスセクターの大幅上昇の切っ掛けとなったのは、Deutsche BankのアナリストMike Mayoの調査レポートです。このレポートで、投資銀行の損失計上は収束に向かい、クレジット市場の混乱は終わりが近いだろうと書かれており、市場は大きく好感した様です。

Sector Snap: Investment Banks rise

主なセクター・株の動き

(ファイナンス) 大幅に上昇しているところが多いです。Goldman 5.26%, Merrill Lynch 7.08%, Morgan Stanley 6.35, Lehman Brothers 6.16%それぞれ上昇しています。

(住宅)  主要なところはほとんど上昇しています。

(小売り)昨日、プロフィット・ウォーニングを発表したStarbucksは、10%を超える大きな下落となりました。

(テクノロジー)全般的に上昇しています。

まとめ・コメント

米商務省が発表した3月の新築住宅販売結果は、かなり悪く、上にも書きましたが、販売状況は過去16年以上の中で最低のペースとなり、住宅販売価格に関しても大きく下落しました。価格が大きく下落しながらも、販売は落ちると言うのは、非常に深刻な状況だと思います。さらにFedの金利の引き下げにより、住宅ローン金利もかなり低い水準になってきていることも考慮すると、本当に問題だと思います。

しかし、今日の市場は、大きく上昇しました。上昇の理由の大きな一つは、上でも取り上げましたが、Deutsche Bankのアナリストがファイナンス企業の損失の計上は収束に向かっているとレポートで書いたことがきっかけとなり、ファイナンスセクターが大きく上昇したことです。CDS(Credit Default Swap)のプレミアムも急速に下がってきている様なので、確かにCDO等のストラクチャード・ファイナンスの市場に関してはある程度収まり、峠は過ぎたとは、私も思います。

市場としても、これでクレジットの問題、混乱は解決に向かうのではといった期待が高まっていたので、今回のレポートをきっかけに急速にセンチメントが回復したことは理解できなくもありません。しかし、ファイナンス関連に関してはそれ以外にも問題が多く、住宅市場の深刻な不況による副作用の影響はまだまだこれから多く発生してくると思っています。

市場全体は上昇しましたが、その中で3Mは決算結果は減益ながらもアナリストの予想を上回り、また今後の見込みを維持したにもかかわらず、株価が下落したことは興味を引きました。市場終了後にMicrosoftが決算を発表し、こちらも減益ながら予想を上回り、さらに今後の見込みを引き上げたにもかかわらず、こちらもアフターアワーズでですが、下落となっているところは、結果に対する株価の反応としては似た形になっています。Microsoftの場合、好決算となるだろうとの見方が強く、ここ1週間でかなり(30ドル前後から、32ドル近くまで)上昇していたので、結果が期待した程良くなかったこと等から売られた、と解釈することもできるかと思います。

上には書きませんでしたが、市場終了後にAmerican Expressが決算を発表し、結果は減益でしたがアナリストの予想を上回ったとのことで、アフターアワーズで4%近くの上昇になっており、Microsoftとにた様な傾向(減益ながら、アナリスト予想より良い)でありながら、全く逆の株価の動きになっています。これは、ファイナンス・セクターに関しては、今の結果が多少悪くても好意的に解釈される傾向を端的に示している様に思います。

また、興味深いのは、今日の市場で住宅関連のセクターも大きく上昇していることです。発表されている市場の統計結果、関連企業の決算は大幅な赤字を発表するところが続いているにもかかわらず、今年に入ってから住宅セクターの株は大きく上昇しています。このまま済むとは思っていないのですが、中長期的にどうなるのか注目しています。


4月23日の米国市場 

23-Apr-2008.png

主要インデックスの終値

DOW: 12763.22 +42.99 (+0.34%)
Nasdaq: 2405.21 +28.27 (+1.19%)
S&P500: 1379.93 +3.99 (+0.29%)

本日の主なニュース

(企業決算関連)

Ambacが第1四半期の決算を発表しました。結果は、16億6000万ドル、一株当たり$11.69の赤字でした。本日か株価は、42.62%の大幅な下落となりました。
Ambac posts hefty 1Q loss as it takes $3 billion in charges

Boeingの第1四半期の結果は、予想よりも良い38%の増益となる12億ドルの利益、EPS$1.62でした。また、2008年の見込みは従来の予想を維持、2009年は予想を上回る一株当たり$6.8から$7.0の間の利益を見込んでいると発表しました。株価は、本日4.49%上昇しました。

Boeing profit jumps 38 pct as orders grow in 1st quarter

市場終了後に注目のAppleが決算を発表しました。結果は、利益が36%増の10億5000万ドル、EPS$1.16でした。アナリストの事前予想は、EPS$1.09で上回っています。売り上げは43%増の75億1000万ドルで予想を上回りました。今四半期(Appleの決算上は第3四半期)の見込みは、一株当たりの利益が$1.0でアナリストの予想$1.1を下回っています。(Appleは、慎重な予想をすることで有名です。)売り上げの予想は、アナリストの予想を上回っています。株価は、本日は1.68%の上昇でした。発表後のアフターアワーズでは、発表直後は今後の利益見込みがアナリストの予想より低かったこと等から、一旦は大きく下げていましたが、米国時間夕方の今は0.5%程度の下落となっています。

Apple 2Q profit jumps 36 percent

Amazon.comも市場終了後に四半期の決算を発表し、純利益は30%増の1億4300万ドル、EPS34セントでした。アナリストの予想はEPS32セントで、結果は予想を上回りましたが、2008年の予想を従来のものから若干引下げたことから、アフターアワーズの取引では5%ちょっと下落しています。

Amazon earnings jump as sales beat forecasts

また、Starbucksがプロフィット・ワーニングを発表し、アフターアワーズの取引で現在12%を上回る大幅な下落となっています。

Starbucks expects 2nd-quarter earnings below analyst view

主なセクター・株の動き

(ファイナンス) 下落しているところが多いですが、幅はそれ程大きくありません。

(住宅)  下落しているところが多いですが、幅はそれ程大きくありません。

(小売り)上昇と下落に分かれていますが、幅はそれ程大きくありません。

(テクノロジー)上昇しているところが多いですが、IBM, Sun, HP, Googleは若干下落しています。Yahooは1.61%の下落となりました。上昇で目についたところは、昨日市場終了後に決算を発表したBroadcomが16.1%の大幅な上昇、決算発表を木曜日に控えているMicrosoftが3.97%の上昇、Cisco, Intelも堅調でした。

まとめ・コメント

本日は、Ambacが予想以上に悪い決算を発表し、株価は40%を超える暴落となりましたが、市場全体としては、上昇しました。数ヶ月前は、AmbacとMBIAのモノライン大手2社がダウングレードされるかどうかで、市場全体が大きく上下に動いていましたが、その時と比べると今は、市場全体に与える影響は殆どない状況へと一変してしまった様なのが、非常に印象的です。

Boeingの四半期の結果は予想以上に良く、また、来年からは787の導入が始まる予定なので、2010年くらいまでは、既に受注が入っているので良い状況にあると思います。

大注目のAppleは、予想を上回る好決算を発表しました。Appleの結果が悪かった場合、市場に与える影響はかなり大きくなる、と考えていたので少し安心しました。まあ、きっと好決算になるだろうと思っていたので、予想通りではあります。Appleの場合、iPhone, iPod, Macどれをとっても、高マージンで、特にMacの事業が伸びてきているため、安定した収益の伸びが期待できると思います。個人的に考えるダウンサイドは、iPhoneの売り上げが落ちてくることなのですが、今の時点では大丈夫の様です。私は、Macの事業が再び大きなドル箱になってくると予想しています。

Amazonも好決算を発表しましたが、2008年の見込みを若干下げたことが失望を買った様でアフターアワーズでは、5%程度の下落となっています。明日以降の株価の動向に注目したいと思います。また、Starbucksがプロフィット・ワーニングを行ないました。米国の事業比率が高く、消費者のマインドの影響を大きく受ける可能性が高く、発表は「やはり」と思ったのですが、Starbucksの今後はさらに厳しくなると思います。

明日は、3月の新築住宅の販売結果、企業決算ではMicrosoftを始め多くの企業が決算を発表します。Microsoftは、かなり良い決算を発表すると見られており、今日も株価は順調に上昇しました。恐らく期待通り良い結果を発表することと思います。Yahooに対する買収提案の件も、今週末が設定した期限なので、再び攻防が活発になってくると予想しています。既に、バルマー氏が昨日今日と牽制球を投げています。

テクノロジー株が再び見直されてきている、と言った論調の記事もまた目にする様になりました。これが本格的なトレンドとなるかを計る上でも、今週来週の決算発表、特に今後の見込みが大きな焦点となってきていると思います。今週が終わると、来週はFOMCです。現時点でのメディアの予想では25bp引き下げが有力視されているようですが、この辺りの話題も週末頃から再び盛り上がってくるかもしれません。現時点では、特定のセクター(住宅、金融)を除けば企業決算自体は増益を発表するところが多く、インフレの懸念となる材料も多い中、Fedがどの様な対応、見方を示すのか、再び注目されてくるのではないか、と思います。

4月22日の米国市場 

22-Apr-2008.png

主要インデックスの終値

DOW: 12720.23 -104.79 (-0.82%)
Nasdaq: 2376.94 -31.10 (-1.29%)
S&P500: 1375.94 -12.23 (-0.88%)

本日の主なニュース

(経済指標関連)

National Association of Realtors (全米不動産協会)が発表した3月の中古住宅の販売結果は、季節要因を考慮した年間の販売ペースで、2月と比べ2%下落した493万戸でした。昨年の3月の販売ペースは611万戸で、それに比べて19.3%の大幅な下落となっています。

販売価格の中央値は20万700ドルで、昨年3月と比べ7.7%の下落となっています。

在庫は、1.0%上昇して406万戸で、現行の販売ペースで9.9ヶ月分となりました。

プレスリリース

(企業決算関連)

AT&Tの第1四半期の結果は、利益が22%増の34億6000万ドル、EPS57セントの好決算でした。売り上げは6.1%増の307億ドルです。CFOのRick Lindner氏は、米国景気の低迷の電話の需要は多少弱い面が見られるものの、米国景気の停滞による業績への影響の兆候は殆ど見られないと語っています。携帯電話の事業が好調で、業績に大きく貢献したとのことです。
プレスリリース

AT&T 1Q profit up 22 percent on strong wireless growth

ヘルスケア大手のUnitedHealthの第1四半期の結果は、9億9400万ドルの利益、EPS78セントでした。アナリストの事前予想は、EPS80セントで若干下回りました。また、2008年の収益見込みを10%引き下げ、一株当たり3ドル55セントから3ドル60セントの間と発表したことから、株価は本日9.68%の大幅な下落となりました。

UnitedHealth shares tumble on lower 2008 forecast

McDonald’sの第1四半期は、9億4610万ドルの利益、EPS81セントで昨年に比べ24%の上昇の好決算となりました。アナリストの予想はEPS69セントで、予想を上回りました。好調な海外の事業の伸びに加え、米国内事業も新メニューが成功する等、堅調な結果だったとのことです。しかし、3月の既存店の売り上げが若干ながら下落したと述べたことが否定的に受け取られた様で、株価は0.55%の下落となりました。尚、4月の既存店の販売は上昇しているとのことです。

McDonald's profit up 24%; international sales strong

市場終了後に、Yahooが決算を発表しました。結果は、アナリストの予想を若干上回る好結果でした。

Yahoo results better, not seen moving Microsoft

結果発表後のアフターアワーズでは、若干下がっています。

Broadcomの第1四半期の結果は、22%の増益でした。ただし、アナリストの予想と比べると売り上げは上回ったものの利益は大きく下回りました。(EPS 14 cents vs 27 cents)
しかし、今後の見込みに関しても慎重な見方を示しながらも、第2四半期の売り上げは20%以上の増加を見込んでいると語ったこと等が好感され、株価はアフターアワーズで10%近い大幅な上昇となっています。

Broadcom beats revenue view, sees growth continuing

主なセクター・株の動き

(ファイナンス) 下落しているところが多いですが、幅はそれ程大きくありません。

(住宅)  下落しているところが多いですが、幅はそれ程大きくありません。

(小売り)下落しているところが多いです。その中で、Wal-Martは上昇しています。

(テクノロジー)下落しているところが多く、幅もそれなりに大きいです。その中で、Googleは3%を上回る上昇で目立っていました。一方で、決算発表を明日に控えるAppleは本日4.73%下落しました。

まとめ・コメント

本日は、AT&T, McDonald’sが予想を上回る好決算を発表したのにも関わらず、株価は下落して始まる等、センチメントは再び慎重なムードへとなってきていることを示す様な状況でした。UnitedHealthは2008年の収益見込みを引下げたため、増益にも関わらず、株価は大幅な下落となりました。

一方、3月の中古住宅の販売結果はやはりかなり悪く、住宅市場の改善の兆候は見られない様な結果だったにもかかわらず、住宅関連の企業の株価はそれ程下がりませんでした。

テクノロジー・セクターは、昨日市場終了後に発表されたTIの結果が否定的に受け止められた様で、全体としてそれなりに大きく下落するところが多く見られました。”やはり、テクノロジーは今は良くても、これから収益が停滞する”と言った様な見方が、再び台頭してきた様です。

今日の決算結果と株価の反応を見ると、市場は第1四半期の結果よりも、今後の見込みを重要視している様に思われます。2008年の収益見込みを少しでも引下げて、株価が大幅下落したUnitedHealthが典型ですが、TIの株価の反応も同様だと思います。上に書きましたが、Broadcomに関しては、第1四半期の利益は予想を大きく下回ったたものの、第2四半期の見込みが予想よりも良かったこと等からアフターアワーズで大幅な上昇になっているのも、市場の反応の傾向を示していると思います。

明日は市場終了後にAppleが決算を発表します。それなりに好決算を発表すると思っていますが、市場は今後のビジネス動向に注目が集中していると思います。Appleの場合、コンスーマー向けのビジネスが中心で、米国の事業比率も比較的高いので、米国景気、消費者動向の影響を計る上でも、重要な決算動向だと思います。

昨日、TIの結果から携帯電話向けの半導体の今後は厳しくなりそうだと書きましたが、今日のBroadcomの発表はその懸念を少なからず和らげるものでした。もしかすると、TIの携帯事業固有の問題の可能性も出てきました。どちらかなのかと言った点でも、明日のAppleの決算結果で、iPhoneのビジネスがどうなのか注目しています。

4月21日の米国市場 

21-Apr-2008.png

主要インデックスの終値

DOW: 12825.02 -24.34 (-0.19%)
Nasdaq: 2408.04 +5.07 (+0.21%)
S&P500: 1388.17 -2.16 (-0.16%)

本日の主なニュース

(企業決算関連)

本日の朝発表されたBank of Americaの第1四半期の結果は、利益が昨年同期に対して77%下落の12億1000万ドル、EPS23セントでした。アナリストの予想は、EPS41セントで予想を下回りました。株価は、本日2.46%の下落となりました。

Bank of America's 1Q profit shrinks amid economic worries

市場終了後にTexas Instruments(携帯電話向けのICで圧倒的なシェアを持つ)が決算を発表しました。第1四半期の結果は、前年同期に対して28%増加の6億6200万ドル、EPS49セントでした。TIの株価は本日は、3.3%上昇しましたが、今後の収益の見込みがアナリストの予想よりも若干低かったこと等から、発表後のアフターアワーズでは、2.5%程度下落しています。
Texas Instruments 1Q profit rises, but outlook weighs

宅配レンタルビデオ(DVD)のNetFlixの第1四半期の結果は、1340万ドルEPS21セントでした。(昨年同期は、9900万ドルEPS14セントで36%の大幅な増益となっています)結果は、アナリストの予想と合致しましたが、2008年の収益の見込みの上限を一株当たり1セント引下げた(1ドル30セントから1ドル29セントに)したこと等が失望を買い、アフターアワーズで12%を超える大幅な下落となっています。尚、本日の日中は1.97%の上昇でした。

Netflix 1Q profit rises, but stock plunges on tepid outlook

主なセクター・株の動き

(ファイナンス) 下落しているところが多いですが、幅はそれ程大きくありません。

(住宅)  下落しているところが多いですが、幅はそれ程大きくありません。

(小売り)上昇しているところが多い様に見受けられますが、上昇の幅は大きくありません。

(テクノロジー)主要なところでは、Apple 4.42%, TI 3.34%, Broadcom 3.25%, 等が順調に上昇。一方、Google, Intel, IBMは若干下落しています。

まとめ・コメント

Bank of Americaの決算発表は、予想を下回りましたが、セクターや市場全体が大きく下落することもなく、市場は比較的冷静に結果を受け止めた様でした。ここ最近の市場の動きとして、ファイナンスセクターの企業の決算が大幅な減益になっていること自体は、大きな下落要因として扱われなくなっていることを表しているとも言えるかと思います。

BoAの結果で、収益の悪化の理由として住宅ローン関連だけではなく、ホームエクイティ・ローン(住宅を担保にした消費者ローンの様なもの、米国では非常にポピュラーです)、クレジット関連等での損失を上げていることが、気になりました。個人的には、これらの分野での損失は、今後増加する傾向にあると予想しています。

今日の市場の動き等を見ても、企業決算結果は、ファイナンス・住宅以外のセクターの決算で収益動向に減速・ 下落傾向が見られるかどうかに 市場の注目が集まっている様に思えます。

テクノロジーは、先週はGoogle, IBM, Intelの様な主要企業の決算が予想通り、または、それ以上だったため、多少、買いが集まる傾向が出てきた様に思えます。ただし、これが一時的なものに留まるかどうかは、今後発表される主要企業の結果次第なのでは、と考えています。

それを占う上でも重要と思われるTIの結果は、アナリストの予想通りであったものの、今後の収益予想に関しては、予想を若干下回りました。特に気になったのは、携帯電話向けのDSPの売り上げが前年同期に対して落ちていることです。一方、今回の増益に貢献したのは、コンスーマー向けのデジカメ、ミュージックプレイヤー等に採用されているアナログ半導体とのことです。

これは、急速に拡大し続けてきた携帯電話の市場が成熟してきていることを意味します。携帯関連向けの事業の比率が高いところは、今後、厳しくなってくる可能性が出てきました。TIに関しても、今回はアナログ半導体の売り上げ増で、携帯向け事業の低迷を補うことができた様ですが、今後、米国の消費者動向が急速に停滞した場合、大きな打撃を被る可能性も出てきた様に思えます。ここ数年のテクノロジーの事業で大きく伸びていたのは、企業向けよりもコンスーマー向けだったので、今回のTIの結果は要注意だと思います。

今週は、Apple, Microsoft, Yahooが決算を発表するのでこちらも要注目です。どちらも好決算を発表すると予想されています。私個人もかなり良い結果を発表するだろうと見ています。Yahooに関しては、決算が悪かった場合、Microsoftからの買収提案を受け入れる様に株主の圧力が高まると予想されるます。反対に、良い数字であれば、対Microsoftに対しての価格交渉でも強気に出れるので、 そのため少しでも数字を良く見せる様動くと思っています。

4月17日の米国市場 

17-Apr-2008.png

主要インデックスの終値

DOW: 12620.49 +1.22 (+0.01%)
Nasdaq: 2341.83 -8.28 (-0.35%)
S&P500: 1365.56 +0.85 (+0.06%)

本日の主なニュース

(経済指標関連)

フィラデルフィア連銀の発表した製造業景況指数は、3月のマイナス17.4からさらに下落し-24.9 になりました。これで、5ヶ月連続でマイナスとなっています。また、多くの企業が仕入れのコストが上昇しているとしており、出荷価格も上昇となっていると報告しています。尚、6ヶ月先の見込みに関しては、3月の-0.5に対して、13.7に大きく上昇しています。(37%が上昇を予測、24%が下落を予測しているとの事です。)
Business Outlook Survey - フィラデルフィア連邦準備銀行

(企業決算関連)

Merrill Lynchの第1四半期の結果は、21億4000万ドル、一株当たり2ドル19セントの赤字となりました。第1四半期に新たに計上した損失は65億ドル以上になるとのことです。また、3000人の人員の削減を併せて発表しています。
アナリストの事前予想は、一株当たり1ドル99セントの赤字で、それよりも悪い結果でした。CEOのJohn Thain氏は、後数ヶ月、あるいは数四半期はさらに厳しくなる可能性があり、それに備えていると語っています。
Merrillの株価は本日4.05%の上昇となっています。
Merrill Lynch posts steep first-quarter loss on write-downs

Nokiaの結果は、利益は予想よりも良かったものの、今後の見通しに対して投資家の失望を買い14%を上回る大きな下落となりました。
Nokia Earnings in Line, Market View Hits Stock

大手製薬会社のPfizerも決算を発表し、EPSは61セントで、アナリストの事前予想の66セントを下回りました。株価は本日3.32%下落しています。

市場終了後に注目のGoogleが決算を発表しました。結果は13億1000万ドル、EPS4ドル12セントの利益でした。特別な出費を除いたEPSは、4ドル84セントでした。アナリストの事前予想は$4.55で予想を上回りました。株価は、本日は1.21%の下落でしたが、発表後のアフターアワーズでは、17%を超える大幅な上昇となっています。
Google beats estimates amid worry over 'paid clicks'

また、E-Tradeも決算を発表。結果は予想を上回る大幅な赤字となりました。 赤字は、アナリストの予想の一株当たり10セントに対して、一株当たり20セントでした。 赤字の理由はホームエクイティ・ローン(住宅を担保にして貸し付けを行なう金融商品)の損失が主な要因とのことです。株価は本日8.71%上昇し、アフターアワーズで更に3.5%程度上昇しています。
UPDATE 1-E*TRADE 1st-qtr net loss higher than expected

主なセクター・株の動き

(ファイナンス)主要なところはほとんど上昇しています。

(住宅)  Meritage Homeが7%と比較的大きく下落しましたが、それ以外は上昇、下落に分かれていてもあまり大きな値幅ではありません。

(小売り)上昇と下落に分かれています。

(テクノロジー)昨日市場終了後に好決算を発表したIBMは、本日上昇しましたが、下落しているところが多かったです。。

まとめ・コメント

大きく上昇した昨日から明けた本日、どの様に動くか注目でしたが、全体としては比較的落ち着いており、DowとS&P 500はほぼ変わらず、Nasdaqは若干の下落となりました。比較的落ち着いている様に思えますが、細かく見るとかなり荒い(大きな)値動きをしている株も多くありました。

昨日市場終了後のIBMの好決算と08年の見込みの引き上げは、IBM単体の株価の上昇に留まり、テクノロジーセクター全体としては下落となりました。また、それ以外の企業の決算発表とそれに対する株価の反応も極端な動きをしているところが目につきます。

まず、本日の朝に発表されたMerrill Lynchの結果は、予想よりも悪い決算結果で今後に関しても慎重な見方を示しているにも関わらず、株価は4%を上回る大きな上昇となりました。一方、Nokiaの結果はアナリストの予想通りの増益でしたが、今後の動向に対しての不安から14%を超える大幅な下落をしています。決算結果に対する反応としては、両方とも極端で、しかも対照的なのが印象的です。

E-Tradeの結果も、予想よりも悪かったことが発表されても、株価は大きく上昇しました。

注目のGoogleの結果は、ここ最近高まっていたたビジネスの急速な停滞に対する不安を払拭する結果だったため、アフターアワーズで17%を超える大幅な上昇となっています。Googleの今回の結果は、約30%の増益で企業の規模を考えれば、素晴らしい結果だと思いますが、P/E等で見た場合再びオーバーバリュー気味になってきました。利益を今後とも大きく伸ばす事ができれば、問題はない株価の水準ではありますが、今後の事業動向によっては、ダウンサイドのリスクは再び高まっていると思います。

今日の決算結果と株価の動きを見ると、投機的な取引が活発に行なわれている様に思えます。今の時点の事業結果よりも、今後、状況が改善すると見られる株に買いが集まり、状況が悪化する可能性がある株は売られる、といった状況にあると、解釈することもできるかと思います。

最後に、フィラデルフィア連銀の製造業景況調査の4月の結果は悪かったものの、今後に対しては、慎重ながらも改善の見込みをする企業が多くなってきている点が注目だと思います。単月の結果だけで判断するのは危険ですが、今後に対して改善の見込みを予想する企業が増えている事は、興味深い点です。この点に関しては、来月以降の結果と比較してどうなるのか、引き続き注意して見ていきたいと思います。



4月16日の米国市場 

16-Apr-2008.png

主要インデックスの終値

DOW: 12619.27 +256.80 (+2.08%)
Nasdaq: 2350.11 +64.07 (+2.80%)
S&P500: 1364.71 +30.28 (+2.27%)

本日の主なニュース

(経済指標関連)

原油の先物価格は、記録を更新する115ドルを超えました。
Oil futures jump to record over $115 on supply concerns

労働統計局(Bureau of Labor Statistics)が発表した3月の完成品のPPIは、前月に比べ1.1%の上昇となりました。2008年第1四半期の間で、完成品の指数は季節要因を調整した後の年間のレートで10.2%の上昇となりました。(同レートで07年第4四半期は11.5%上昇しています。)

消費者物価は0.3%上昇、昨年から上がり続けている食品の価格は3月も0.3%の上昇となりました。
労働統計局ニュースリリース
March consumer prices up, reflecting higher energy prices

(企業決算関連)

本日朝発表されたJPMorgan Chaseの第1四半期の結果は、純利益が24億ドル、EPSは68セントで、昨年同期に比べ約半分となりました。利益の中には、IPOしたVisaの株を売却した事による9億5500万ドルの税引後の利益(税引き前では15億ドルの利益)を含んでいます。

今後の見通しに関しては、経済環境は引き続き厳しい状況が続くと見ており、それによりクレジットの損失、事業全般の売り上げ、利益に対しても悪い影響を及ぼすとしています。この状況は、年内いっぱい、あるいはそれよりも長くなると予想しているとのことです。

JPMorgan Chaseニュースリリース

Wells Fargoの第1四半期は、希薄後のEPSが60セント、純利益が20億ドルでした。(昨年は、同66セント、22億4000万ドルでした。)売り上げは、前年比12%増の106億ドルとなりました。
Wells Fargoニュースリリース

Coca-Colaの結果は、15億ドルの利益、EPS64セントで、昨年と比べ19%の増加となりました。アナリストの事前予想は63セントでした。売り上げは21%増加となりました。尚、売り上げ増の半分はドル安の恩恵との事です。

Weak dollar, international growth lift Coke

市場終了後にIBMが決算を発表しました。結果は、純利益が26%増加の23億2000万ドル、EPS1ドル65セントでした。売り上げは11%増加し245億ドルでした。このうち、為替による売り上げ増加分は7%とのことです。
アナリストの事前予想は、EPS1ドル45セントで、売り上げは237億ドルで結果はどちらも上回っています。また、2008年の収益見込みを一株当たり8ドル50セントに引き上げています。
IBM raises full year earnings target

主なセクター・株の動き

(ファイナンス)主要なところはほとんど上昇しています。ただし、Wachoviaは微減(殆ど変わらず)、Etradeも少し下落しています。

(住宅)  大幅に上昇しています。

(小売り)上昇しています。

(テクノロジー)多くの企業が順調に上昇しました。一方、Seagateは5.5%も下落しています。

まとめ・コメント

注目されていた大手銀行、JPMorganとWells Fargoは共に予想よりも良い結果を発表した事、昨日市場終了後に発表されたIntelの結果も予想通り、今後の見込みに関しては予想以上の内容だった事等から、市場のセンチメントは再び非常に良くなり、市場全体が大きく上昇しました。また、Coca-Colaの決算結果も予想を上回る等、先週末のGEと月曜日のWachoviaの予想以上に悪い決算発表で高まっていた企業の収益動向の急速な悪化、景気の先行きに対する不安が、薄れてきています。

政府が発表したPPIは上昇となっており、住宅着工件数は過去17年で最低の水準になる等、インフレと景気に対する不安要因となる結果でしたが、殆ど材料視されませんでした。

市場終了後に発表されたIBMの結果も予想以上に良く、今後の見通しに対しても引き上げる等、企業の収益動向は減速するどころか堅調に推移している様な発表があったことで、明日に向けても市場のセンチメントはさらに良くなってきている様に思えます。

個人的には、テクノロジーセクターに関しては、ファイナンス・住宅セクターとのビジネスの関連性が相対的には少なく、また、海外のビジネスの比率が高いため、為替の恩恵も含め、決算が予想以上に良いのはある意味、想定の範囲だと思うのですが、あまりその様な見方はされていない様に思えます。

一方で、経済指標等を見た場合、物価も上昇のトレンドを示し、 原油は高騰を続け記録的を更新、住宅市場が非常に悪化していることを裏付ける結果となっており、注意が必要だと思います。また、JPMorganの結果は50%の大幅な減益で、しかも、Visaの株売却による大きな利益を含めています。Visaの株の売却益がなければ、減益は多大で、今後の収益動向に関しても予断は許せる様な状態ではないと思います。

昨日今日は決算結果も順調で、ネガティブ・サプライズに関してはあまり見られないので、ここまではかなり順調にきていると思います。昨日も書きましたが、明日のMerrill LynchとE-Tradeがどうなのか、また、それ以外の企業で予想外に悪い結果を発表するところがあるのか、注目しています。Merrill Lynchに関しては、WSJ等が60億から80億ドルの損失を計上する見込みと報道しており、また、新たな資金調達が必要となってきているとの報道もされていますが、株価は本日順調に上昇しています。

この勢いがこのまま持続するのかが、短期的には大きな分かれ目だと思います。思いの外、良好な企業決算が相次ぎ楽観的な見方が支配的になっています。しかし、数日前までの悲観的な見方のきっかけとなったGEとWachoviaはどちらも堅実な経営をすることで定評のある会社です。この様な会社の決算が思いの外思わしくなかったことは、市場環境が悪化している事の裏付けです。

さらに経済指標や銀行の収益動向、大幅な赤字を続ける住宅建設会社の決算結果、消費者のコンフィデンスの急速な悪化、失業率の上昇、これらを考慮した場合、どう考えても今後に関しては悪材料が多すぎる気がします。


4月15日の米国市場 

15-Apr-2008.png

主要インデックスの終値

DOW: 12362.47 +60.41 (+0.49%)
Nasdaq: 2286.04 +10.22 (+0.45%)
S&P500: 1334.43 +6.11 (+0.46%)

本日の主なニュース

Johnson & Johnsonが第1四半期の業績を発表しました。結果は、昨年同期に対して40%増の36億ドルの利益、EPSは1ドル26セントでした。アナリストの利益予想はEPS1ドル20セントでそれを上回りました。また、2008年の見込みに関しても引き上げました。

J&J reports 40% boost in quarterly profit

Washington Mutualの第1四半期の結果は、11億ドル、一株当たり1ドル40セントの赤字でした。

Washington Mutual swings to 1Q loss on $3.5B provision

市場終了後にIntelが決算を発表しました。結果は、14億4000万ドル、EPS25セントの純利益でした。これは、アナリストの事前予想の数字と同じです。売り上げに関しては、 アナリストの予想を上回る 9%の上昇となり史上最高を記録しました。

第2四半期の売り上げの見込みは90億ドルから96億ドルで、こちらもアナリストの予想と合致しています。グロスマージンに関しては、56%プラスマイナス数パーセントの予想で、こちらは、第1四半期の実績の53.8%から引き上げています。Intelの株は、本日1.06%の上昇で、発表後のアフターアワーズでは、8%以上の上昇となっています。

Intel 1Q profit meets subdued forecasts, revenue hits record

Infosysの四半期の結果は、3億1400万ドル相当の利益(124億9000万ルピー)で、予想通りの結果と今後の見通しに関しても予想通りでした。この結果から、アナリストがレーティングをアップグレードした事等により、株価は本日8.51%の大幅上昇となりました。

Infosys shares surge on in-line results, forecast

市場終了後に、ハードディスク製造の最大手、Seagateが決算を発表しました。結果は、前年同期に対して66%増の3億4400万ドル、EPS65セントの利益でした。売り上げは10%上昇し31億ドルとなりました。

一時的な出費を除いた場合、利益はEPSで70セントでアナリストの予想の69セントを上回っています。
しかし、今後の売り上げの予想に慎重な見方を示したため、株価はアフターアワーズで大きく下落しています。

Seagate profit rises but forecast misses estimates

主なセクター・株の動き

(ファイナンス)主要なところはほとんど上昇しています。

(住宅)  ほとんど上昇しています。

(小売り)ほとんど上昇しています。

(テクノロジー)上昇と下落に分かれています。幅はそれ程大きくありません。

まとめ・コメント

本日発表された決算の結果は、ほぼ予想通りでそれ程大きなサプライズはありませんでした。市場全体の動きとしても、若干の増加となり、ある意味決算発表結果の状況を踏襲した様な状況となっています。

しかし、細かく見た場合、興味深いところも多かったです。以下に、記します。

WaMuは予想通りの悪い決算。一方、J&Jに関しては、予想・期待通り良く、アナリストの予想を上回る40%の増益となる好決算となりました。また、2008年の見込みに対しても、予想を引き上げる文句なしの結果だった、と思いました。しかしながら、株価は、一瞬前日比でプラスになったものの、下落の状態が続き、最終的には戻して前日比微減で終了しました。

この様な、予想を上回りしかも大幅な増益、さらに今後の収益予想に対しても見込みを引き上げる発表をしたにも関わらず,株価が下落するというのは、さながら前四半期のテクノロジー株の様な展開となりました。J&JのP/Eは約18で、配当も2.5%、数字を見た場合、オーバーバリューでもないのですが、好決算発表の後売られるのは、市場のセンチメントが非常に悲観的になっていることの表れと思いました。

Infosysに関しては、アナリストの好意的な発言等が材料視され大きく上昇しましたが、これは、単独の株としての動きとも言え、市場全体としては、かなり慎重になってきている様に思いました。

J&Jの株の動き等を見て、これではIntelの発表が思いやられるな、とかなり悲観的になっていたのですが、Intelの結果は予想通り、グロスマージンを引き上げたところが、ポジティブサプライズでしたが、思いの外、アフターアワーズでは上昇しています。ここ数日Intelの株は急速に下がっており、悲観的な見方も強かったので、ある意味、予想通りだったので安心して買い直しに動いた、とも考えられます。明日以降の動きに注目したいと思います。

一方、市場終了後に発表したハードディスク世界最大手のSeagateは、アナリストの予想を若干上回り、60%以上の大幅な利益増でしたが、今後の見通しに慎重な見方をしたことから、アフターアワーズで大きく売られています。決算発表の席上、CEOのWatkins氏は、ノートパソコン向けの市場に対して、製品の価格が下がっている事から、積極的に販売する事を控える決断をしたと語りました。これは、利益を重視し、売り上げをあきらめる戦略的な判断だと思うのですが、売り上げ予想が下がった事をアナリスト・投資家が嫌った様です。Seagateの株はバリュエーション的にも低いにもかかわらず、この様な株価の動きをするのは、ここしばらく続いている市場のテクノロジー株に対する反応の典型です。

今日の決算結果は、ほぼ予想通り、株価の反応はJ&Jに対しては慎重、反対にIntelに対しては好意的な反応があったことは、意外でした。明日は、JP Morgan Chase, Wells Fargo, IBM等が決算を発表します。IBMに関しては、不安要因はあまりないと思っていますが、銀行大手2社の発表が予想外のものがあるかが、注目かと思います。

個人的には、明日発表予定の決算結果はそれ程大きな驚きはないと思っていますが、木曜日は、E-Trade, Merrill Lynchが何か驚くべき損失を発表するのか、さらにGoogleの決算で、売り上げの伸びに鈍化が見られるのか、と言った様な不確定要因があり、市場に対しても影響が大きい発表があるので、それらがどうなるのか、そして市場がどう反応するのか、注目しています。

4月14日の米国市場 

14-Apr-2008.png

主要インデックスの終値

DOW: 12302.06 -23.36 (-0.19%)
Nasdaq: 2275.82 -14.42 (-0.63%)
S&P500: 1328.32 -4.51 (-0.34%)

本日の主なニュース

Wachoviaが第1四半期の決算を発表しました。結果は、驚くべき事に3億5000万ドル、一株当たり20セントの赤字でした。アナリストの予想平均はEPS47セントでした。Wachoviaが赤字となったのは、2001年以来で初めての事です。同時に、70億ドルの資金調達を行なった事、配当の削減と人員削減を発表しました。

資金調達は、35億ドル分の普通株式を24ドルで販売することと、35億ドル分の転換優先株(7.5%の配当と30%のプレミアム)で計70億ドルを調達する見込みとのことです。このオファーは15%まで拡大、合計で80億ドル5000万ドルに達する可能性があるとのことです。

四半期の配当に関しては、41%減の一株当たり37.5セントに削減すると発表しました。また、今四半期中にコーポレートと投資銀行業務で500人を削減する予定との事です。

Wachoviaの株価は、8.13%下落となりました。

Wachovia posts surprise loss, raises $7 billion

国勢調査局発表の3月の小売りの販売結果は、前月に比べ0.2%の増加となりました。添付のニュースリリースの3ページ目にアイテム別の比較が載っていますが、ガソリンの販売が前月に比べ1.1%の増加、昨年同月に対しては18.9%の増加となって突出しています。(つまり、ガソリン価格の上昇によって、売り上げが上がっている。2番目に添付している記事の中でも、ガソリンの上昇がなければ、売り上げは横ばいだった、と書かれています。)

国勢調査局プレスリリース

Retail Sales Up a Bit, Led by Gas Costs

レンタルビデオ大手のBlockbusterがCircuit Cityに対して、一株当たり最低6ドルで買収する提案を発表しました。BlockbusterはCircuit Cityに対して6ドルから8ドルの間の提案額で、既にアプローチをしていましたが、今回、提案額を公にしました。この提案額で換算した買収の総額は、10億1000万ドルから13億5000万ドルの間です。Circuit Cityの株価は本日27.44%の上昇、10.22%の下落となりました

Blockbuster offers to buy Circuit City

(コメント)今回の買収提案も、業界再編の動きの一環だと思います。Blockbusterはレンタルビデオの最大手ですが、宅配のレンタルの事業を行うNetflixに追いつめられており、事業は低迷を続けています。Circuit Cityも家電販売で全米第2位ですが、事業は低迷を続けています。ちなみに、Blockbusterの時価総額はCircuit Cityよりも低く、500億ドル少しです。資金調達をできるのか、買収したところでうまくいくのか、と言った懐疑的な点は多々ありますが、どこかバックについていて(Carl Icahn氏との見方もあります。ちなみにIcahn氏は、Blockbusterのボードメンバーです)の提案だとは思いますが、生き残りをかけて勝負に出てきている様に思えます。

また、Delta AirとNorthwestが早ければ、明日にも合併を発表するとWSJが報道しています。


主なセクター・株の動き

(ファイナンス)主要なところは全て下落しています。

(住宅)  下落しています。下落幅は数%から5%程度です。

(小売り)上昇と下落に分かれていますが、幅はそれ程大きくありません。

(テクノロジー)下落しているところが多いのですが、その中で、IBM, HP, Apple, Oracleは上昇しています。

まとめ・コメント

先週金曜日のGEに続き、四半期決算を発表した大手銀行のWachoviaは、市場の予想を大きく下回り、しかも赤字となる決算を発表しました。この2社の決算結果から、企業の第1四半期の収益動向に対する不安が高まっています。

ファイナンスセクターは、当然のことながら下落となっています。今週、主要な大手の銀行が決算結果を発表するので、その他がどうなのか非常に注目です。テクノロジーも全般的に大きく売られているケースが目につきましたが、その中で、ほぼ間違えなく良好な決算を発表し、今後に対しても不安要因があまりない企業に関して、(特にIBM, Oracle, HP等はそうです)買われているのが、今日の動きの特徴でした。

3月の小売りの販売結果は、若干の上昇となり予想よりは良い結果でしたが、内容としてはガソリンの売り上げ増が寄与している部分が多いため、景気の動向の指針として好材料と判断できる様なものではないと思います。

明日は、主要なところではJohnson & Johnsonが決算発表の口火を切る予定です。J&Jは好決算になると予想されている様ですが、私もJ&Jは大丈夫だと思っています。市場終了後には、Intel, Infosys, Washington Mutual等が決算を発表します。

Intelは前四半期は、51%の増益だったもののアナリストの予想より少し低かった事等から株価は大幅に下落しましたが、今回はどうなるのか注目しています。Washington Mutualは結果はかなり悪いだろうと予想されているので、ある程度は株価に織り込まれていると思います。

水曜日、木曜日にさらに多くの主要企業の決算発表があるので、全体の流れとしては、今週が終わるまでは、その日毎のニュースで多少なりとも動く様な展開になると思います。今の時点では、GEとWachoviaのネガティブ・サプライズにより市場はかなり慎重・敏感になってきているので、さらなるネガティブなサプライズがあった場合、市場全体が大きく下落する可能性は高いと思います。一方、市場全体が大きく上がる様なシナリオはあまり想像できません。

いずれにせよ、今週来週の決算結果の動向によっては、市場全体のトレンドが明確になってくる可能性は大きいと思っています。

GEの08年第1四半期決算結果について 

注目されていたGEの第1四半期の決算の結果が発表されました。結果は予想を下回る6%下落の43億ドルの純利益、EPS43セントでした。アナリストの予想はEPS51セントでした。また、GE自身の見込みとして公表していた50セントから53セントを下回りました。

さらにGMは、2008年の利益予想を引き下げ、EPS2.2ドルから2.3ドルの間に修正しました。従来のGMの予想は2.42ドルで、アナリストの予想は2.43ドルでした。

GEの株価は、12%を上回る下落となりました。GEにとっては、87年のブラックマンデー以来で最大の下落幅とのことです。GEの予想外に悪い結果から、市場はリセッション入りしたことを示す結果との反応から、市場全体が大幅な下落となりました。

以下、GEのプレスリリースのハイライトからの抜粋したものを訳したものです。

- 継続して行なっている事業は、44億ドルの利益となり、昨年第1四半期の49億ドルから12%下落。
- 継続している事業からのEPSは44セントで、昨年の48セントから8%の下落。
- 基盤設備の事業は、二桁の利益増で、業務用ファイナンス(Commercial Finance)、GE Money、健康管理事業の二桁の下落を埋め合わせした。
- 中止した事業の影響を含んだ場合、2008年第1四半期の利益は43億ドル(一株当たり43セント)で、2007年の第1四半期は46億ドル(一株当たり44セント)。
- 継続して行なっている事業の売り上げは、8%増加し、422億ドル。金融サービス事業の売り上げは3%増加し18.1億ドル、産業向け(Industrial)の売り上げは242億ドルで2007年第1四半期に比べ12%の増加。

(コメント)

安定した事業を行なっているGEが、予想を下回る結果をとなり、しかも、今後の利益見込みを引下げたのは、市場に与える影響は大きかったと思います。

特に海外の事業は二桁の伸びにも関わらず、米国内の事業、特にファイナンス関連の事業の下落が大きく、全体として見込みを下回る結果となった事は、着目すべき点だと思います。

今回のGEの発表は、以下の様な状況を意味していると思います。

- 米国内の景気の停滞が顕著になってきており、企業の収益を引下げてきていることを明確にしめしている。
- 海外の事業を展開している会社でも、海外の伸びがあっても、米国内事業の下落を全体の収益として吸収できていない。
- 不動産、金融の市場から、企業収益の悪化が他のセクターの企業にも広がりつつある。

今までは依然として好調な海外、特に新興国の需要が減速してきた場合、更に収益が落ちるリスクがあると思います。また、海外事業の比率が低い企業、あるいは、米国内の事業が中心の企業の収益動向は、もっと厳しいことになる可能性が高くなると思います。

売り上げは伸びていながら、利益が減っている事も気になります。これは、利益率・マージンが低下していることを意味します。まだ詳細等調べていませんが、これは内容的には非常に悪い材料となる可能性があると思います。(例:売り上げが今後停滞したり、下落した場合、利益はさらに落ちる)

今回のGEの発表は、かなり注意しなければならない点が多くある気がします。

4月10日の米国市場 

10-Apr-2008.png

主要インデックスの終値

DOW: 12581.98 +54.72 (+0.44%)
Nasdaq: 2351.70 +29.58 (+1.27%)
S&P500: 1360.55 +6.06 (+0.45%)

本日の主なニュース

3月の小売店の販売結果が発表されました。全体としては予想通り悪く、3月の販売結果は過去13年で最も弱かったとの事です。

Wal-MartとCostcoは良好な結果を出した数少ない企業です。Wal-Mart、第1四半期の利益の見込みを引き上げ、また、4月の売り上げも従来の見込みを上回るであろうと発表しました。この2社の株は発表後の日中は結構上昇したのですが、その後多少下がり、終値はWal-Martは0.96%の上昇、Costco 0.74%の上昇でした。

一方で、その他のほとんどの企業は、販売状況がおもわしくなく、JC Penney, Gap, Limited Brandsは、売り上げの急激な下落を発表しています。また、これまで好調だった高級デーパートのSaksも売り上げが低迷している事が明らかになりました。株価に関しては、悪材料が既に盛り込まれていたためか、JC Penney 2.95%、Limited Brandsは2.47%の上昇となりました。Gap は0.67%下落でした。

今年は、イースターが昨年より2週間早く、販売日数が昨年より1日少ない等の理由からも、今年の第1四半期の小売りの販売状況は悪いだろうと予想されていました。

Retailers post sluggish sales in March

労働省が発表した先週の失業保険申請件数は、その前の週よりも5万3千件少ない、35万7千件でした。予想の38万3千件を下回りました。2月の貿易差損は、623億ドルで、1月の590億ドルから上昇となりました。これは、第1四半期のGDPに対してネガティブな要因となるとのことです。

Increase in trade deficit raises concern

先週の末から急速に盛り上がりを見せている、MicrosoftのYahooの買収提案に関連する動きが今日もありました。

本日のWSJの報道によると、対抗案として、YahooはTime WarnerのAOLとインターネットの事業で合併するとの案件をまとめようとしている、とのことです。WSJによると、この計画は、AOLのダイアルアップ(電話回線を使った接続サービス)を除いたAOLの事業を、Yahooと合併し(Yahooに吸収させる)、更に、Time Warnerが現金の投資を行ない、引き換えに合併した企業の20%を所有する計画との事です。Yahooは、得た現金を使って、自社の株を30ドルから40ドルの間で、買い戻しを行なう予定です。

一方のMicrosoftはNews Corporationと共同の買収案の話を進めているとの報道がありました。

これらのニュースにより、Yahooの株価は本日、2.95%上昇しました。

(コメント)昨日発表されたGoogleのテクノロジーを使用する話も、 AOLと合併するのであれば、対抗案としては十分に理解できるアプローチだと思います。ただし、このAOLと合併の話自体がどれだけ現実的なものなのか、もしそうだとしても、Microsoftとの合併に比べて、株主にとってメリットが提供できるのかは、大きな課題だと思います。

AOLの事業は完全に下落のトレンドにあり、Time WarnerもAOLの処遇をどの様にするかで迷走を続けており、確かにYahooとくっつけることは、Time Warnerとしてもメリットがあるとは思います。しかし、Microsoftの提示額を上回る様な案件にすることは、(資金繰りからしても)困難で、かつ、AOLと一緒になる戦略的なメリットがYahooにどれだけあるのか、と言う点では、大きな疑問符がつきます。

Yahooの一連の動きで、Microsoftが買収提案額を引き上げるのでは、との観測もありますが、Yahooの現在の株価は、今日の上昇を含めても、Microsoftの提案額よりも低いです。株価が低いのは、この案件が、まとまらない可能性があるためです。 つまり報道的には盛り上がっていますが、投資家は慎重に見ていることの表れだと思います。

主なセクター・株の動き

(ファイナンス)上昇と下落に分かれています。

(住宅) 主要企業の株は全て上昇しています。大きく上昇したのはMeritage Home 6.21%, Beazer Homes 5.17%です。

(小売り) 主要なところはほとんど上昇しています。

(テクノロジー)主要なところはほとんど上昇しています。

まとめ・コメント

3月の米国の小売り状況は、予想通り悪かったのですが、セクターは全般的に上昇しました。悪いニュースが発表になって株価が上がるのは、昨日のボーイングでもそうですが、最近良くあるパターンです。

今週に入り多少下落していた住宅セクターは、今日は上昇となっています。これは、政府の住宅ローン破綻に対する救済措置の法案が近いうちに可決する事を期待してのことだと思います。法案は、少なからずメリットはあるとは思いますが、それを材料にここまで上がると言うのは、何とも言えません。逆に言えば、大きな調整が再びおきるリスクは高まっているとも言えます。

今日のNasdaqが他のインデックスより大きく上がっているのは、Bank of Americaのアナリストが、半導体セクターをアップグレードした事等から、半導体を中心としてテクノロジー株全体が買われた事が主な要因です。これに加え、MicrosoftのYahoo買収に関わる話が盛り上がり、案件が近いうちにまとまるのではと言った期待も、テクノロジーセクターに好材料をもたらした様です。

前四半期の決算では、テクノロジーの多くの企業は大幅な増益を発表しても、株価は下落する様な場合が多くありました。今回もそれなりに良い決算を発表するところが多いと推測していますが、実際の決算がどうなのか、株価がどう動くのか注目しています。

また、全体として全四半期までは、ファイナンス・住宅といった特定のセクターは非常に悪かったものの、その他は堅調な決算を発表する会社が多かったのですが、今回、それらの企業、特定のセクター(例えば小売り、他)の決算のトレンドが低迷を示す様な兆候が明確になってくるのかが注目です。

消費者のコンフィデンスは非常に低くなってきている、原油等資源株は依然として高騰が続いている、失業率が上がってきている等、マクロで見てネガティブな材料がかなり多い気がします。

一方で、ドル安の恩恵や新興国での事業が順調に伸びていることによって、大きく業績を伸ばしている企業も多く目にします。 来週以降の決算発表がどうなるのかが注目です。まずは、皮切りとして明日GEが決算を発表するので、注目したいと思います。

4月9日の米国市場 

9-Apr-2008.png

主要インデックスの終値

DOW: 12527.26 -49.18 (-0.39%)
Nasdaq: 2322.12 -26.64 (-1.13%)
S&P500: 1354.49 -11.05 (-0.81%)

本日の主なニュース

Citigroupが、120億ドルのレバレッジを使用したローンと債券をプライベートエクイティに売却する予定と、WSJが報道し話題となっています。

Citi Nears Deal to Sell Debt to Buyout Firms

Lehman BrothersとGoldman Sachsがlevel3の資産がそれぞれ425億ドルと823億ドルあることが分かり、流動化が難しい資産を多く抱えているため、さらなる損失の計上が懸念され上記2社の株は、それぞれ7.17%, 2.66%下落しました。

United Parcel Service (UPS: 日本の宅配便業に近い会社)が第1四半期の利益の見込みを引下げるプロフィット・ワーニングを行ないました。引き下げの理由として、米国経済の停滞と燃料費の高騰を挙げています。株価は本日3.7%下落しました。UPSの本日の下落幅は、2006年7月以来で最大のものとのことです。原油の価格が記録を更新し、112ドルを上回った事も下落の要因となった模様です。
Oil's jump, UPS warning spark sell-off

ボーイングが開発中の787のスケジュールが現時点での予定より6ヶ月遅れる事を発表しました。実用の運行のスケジュールは2009年の第3四半期になるとのことです。ボーイングの787計画スケジュールの延期はこれで3回目です。787は外部の会社による組み立ての行程が多いのが一つの特徴の様ですが、これが遅延の一つの理由としてある様です。スケジュール延期の噂は既に広がっており、今回、それが発表された事で、投資家達は安心したとのことで、株価は本日4.8%上昇しました。
Boeing 787 launch to be delayed again

Microsoftとの買収に絡む攻防が白熱しているYahooは、本日GoogleのAdSenseをテストすることを発表しました。これは、AdSenseを利用する事により、同様の機能を有する自社開発の製品の開発費が必要となる事、Googleから使用料を得られる事から、キャッシュフローを大幅に改善できる利点があります。
Yahoo to test Google ads facing Microsoft deadline

(コメント)確かに上記の様なキャッシュフロー上のメリットはありますが、Googleに対抗する同機能の技術をギブアップすることになる、と言う戦略上かなり重大な判断となります。言い換えれば、開発費の削減になる代わり、将来の大きな収益源となる可能性をあきらめることを意味します。Microsoftに買収された場合、この選択はあり得ないと思います。

添付の記事で、アナリストの発言として、「Microsoftからの買収提案額を引き上げる交渉に使えるので、非常に賢い動きだ」との引用がありますが、私は全く同意できません。

本当に、自社単独で生き延びようと考えているのであれば、このオプションを選択する意味はありますが、価格交渉に使うのはリスクが大きすぎます。(はっきり言って、このアナリストの言う様に、Yahooが買収額の交渉として、このカードを使ったとしたら、私は賢いのではなく、逆だと思います。私は、このアナリストの見方は的が外れていると思います。)

Microsoftは、買収提案を破棄する、と言う究極のカードがあり、これを使ったら、Yahooの株は大きく下落する事は明白です。”Googleからの技術供与を受け、自社単独で生き延びる” = “株価の大幅な下落”の様なシナリオをYahooの株主が受け入れるとは思えません。この様な発表はMicrosoftの態度を硬化させるだけで、良い条件を引き出す材料になる可能性は低いと思います。3週間後にMicrosoftがProxyバトルを仕掛けたら、Yahooの株主の多くはMicrosoftにつくと思います。(私は、Yahooは打つ手がないので、苦し紛れに発表した、と言う様に受け取っています。)

このエントリーを書いているところで、以下のニュースを見つけました。
Yahoo/Google deal is anti-competitive: Microsoft

Googleのクリック・アドの市場の独占を許す事になる。と言うのが主旨ですが、こっちの主張の方が理にかなっており、クリック・アドを使用する顧客企業も賛成するところが多いと思います。これで、Microsoftの主張に同意する動きが加速し、Microsoftの術中にはまっていく様な気がします。

主なセクター・株の動き

(ファイナンス)主要なところは全て下落しています。

(住宅) 下落しています。

(小売り) 主要なところは全て下落しています。

(テクノロジー) 下落しているところが多いです。一方で、Intel, IBM, Oracle, Microsoftは上昇しています。

まとめ・コメント

ここ数日のニュースを見ると、景気は今後さらに厳しくなる、と言った見方は強くなり。更に悪化する可能性も高くなってきている様に思えます。その一方で、市場の下落の幅はそれ程大きくないのが、印象的です。ここ数日、何度か書いていますが、市場は来週から本格化する企業の第1四半期の決算結果を見てから動こうとしている様に思えます。

今週の月曜日に大幅な減益となる四半期決算を発表したアルミニウム製造大手Alcoa、そして、今日のUSPのプロフィット・ワーニングも燃料費の高騰を要因に挙げています。現時点では、原油の価格は下がるどころか、上がっており、これが今後の企業の収益に与える影響、インフレーションの懸念材料はまったく払拭できていません。

仮に原油価格が下がったとしても、その恩恵を得るまでには時間がかかるので、しばらくの期間続いている原油価格の高騰の影響は、企業決算その他で、今後ますます目にする事になると思います。

昨日のIMFのレポートはかなりインパクトが大きかった様で、本日のFTやWSJでも大きく取り上げられています。(FTの記事が非常に良いので、できれば後で別途、エントリーで紹介したいと思っています。)今日のCiti, GS, Lehman, Morgan Stanleyの関連のニュースを見ても、最悪の状況は終わったとはとても思えない状況で、IMFのレポートの内容を支持する様に思えました。
ちなみに、昨日、Morgan StanleyのCEOのJohn Mack氏が、クレジット・クライシスは終わりを迎えつつあると思うと発言しています。
Morgan Stanley's Mack Sees End of Crisis

”自由の国、アメリカ”なので、自由に発言する事は当然のことですが、「良くそんな事を言えるなあ」と思ってしまいます。大抵の場合、実際はそうならなくても、発言に責任を求めたりはされないケースが多いので、企業の経営陣のこの手の発言は別に珍しい事ではないのですが、個人的にあきれてしまいます。ちなみに、「Lehmanも一ヶ月前には、新たな資金調達は必要ないと思っている」と発言し、1ヶ月も経たない間に、実際には資金調達を行なう等、この手の事例を挙げるときりがありません。

いずれにせよ、短期的な大きなイベントはやはり来週からの決算発表になるので、注視していきたいと思っています。今週金曜日のGEの決算も来週以降の決算動向を占う上でも注目だと思います。


バフェットからの手紙 (10-3)- 2007年 

バフェットからの手紙 (10-2)- 2007年版の続きです。

非現実的な数字 – 株式を公開している企業が利益を絞り出しているやり方
Fanciful Figures – How Public Companies Juice Earnings

(続き)

アメリカの会計(アカウンティング)の“名誉のシステム”の不備について話を展開してきましたが、バークシャーにおいて、 本当に巨大なバランスシート(貸借対照表)のアイテムとしてまさにこのシステムが存在することを指摘する(申し上げる)必要があります。

あなた方へ提出する我々が作成した報告書の全てにおいて、我々は保険事業の損失の留保(蓄え)を推測して見積もらなければなりません。もし、我々の見積もりが間違っていた場合、我々のバランスシートと業績報告書(Earnings Report)の両方が間違っていることになります。そのため、当然のことながら(自然と)我々はこれらの推測が正確である様に最大限の努力をはらっています。それでも、全ての報告書の我々の推測は、きっと間違う事でしょう。

(バフェット氏は、現時点での利益を高めて報告するために行なわれている企業会計の不備を指摘し、それによって将来の収益に対する下落、不安要因を高めていることを問題として提起する一方で、自社の会計においても不確実性があることを、明確にしています。最後の行はイタリックで書いてあり、ベストはつくしても、推測が間違うことは必ずある、としています。)

2007年の最後に、我々は、年末までに起こった全ての損失の出来事に対して支払う予定の見積もりとして560億ドルの保険の債務を公表しました。(現在の価値に合わて割り引いている約30億ドルの蓄え(準備金・資産)を除く)我々は、何千もの多くの出来事、そしてそれらの各々に対して、我々が想定する支払いの過程で発生する関連のコスト(例えば弁護士費用)を含む我々が支払うお金を反映した見積もりをしています。それらの(多くの)出来事の中のいくつかのケースでは、ある大けがに対して、従業員の手当が保証されているため、50年またはそれ以上の期間支払う様、請求されたものもあります。

我々は、 年末までに発生した損失で、(請求を)まだ聞いていないものに対しても大きな蓄えをしています。時々、損失が発生しても、保険の対象になっている事が知られていない場合があります。(何年もの間見つからない(発覚しない)でいた横領・着服を思ってみて(考えてみて)下さい。)我々は、時々、我々が何十年も前に保証したものが対象となった契約による損失(の請求)を聞いたりします。

損失の債務の見積もりを正確に行なうことの問題を説明した物語を、私は数年前に皆さんにお話しました。ある人が、ヨーロッパで重要な業務旅行中(出張中)に、彼の妹からお父さんが亡くなったとの連絡を受けました。彼女のお兄さんは(彼は)、帰る事はできない。しかし、 費用は支払うから、葬式は全て済ましてれ、と言いました。彼が戻ってきた時、妹は式は素晴らしかった、と話して、合計8000ドルの請求書を彼に渡しました。彼は全額支払いました、しかし、一ヶ月後、葬儀場の方から10ドルの請求書がきました。彼は、それも払いました。そして、また別の10ドルの請求を一ヶ月後に受け取りました。その翌月、3度目の10ドルの請求書を受け取った時、困惑した男は、彼の妹にどうなっているのか聞きました。「あら、」彼女は、答えました。「私、兄さんにお話しするの忘れていたわ。お父さんをレンタルのスーツを着せて埋葬したことを。」

我々の保険会社では、我々が知らない事があります。しかし、殆ど確実に、大きな、そして数多くの“レンタル・スーツ”が世界中で埋められています。我々は、それらの請求を正確に見積もろうと取り組んでいます。10年、または20年の間には、我々は我々の現時点での推測がどれ程不正確なのかを、うまく推測する事ができる様になるでしょう。私は、個人的には、我々の示した留保(蓄え・準備金)が十分であると信じています。しかし、私は過去に何度か間違えをしてきています。



これでこのセクションは終わりです。バフェット氏は、多くの企業が企業会計において利益を引き上げてみせるために、行なっている処理方法について、異議をとなえています。特に問題として、年金のパフォーマンスの予想数値が実現できない様な高い数値になっており、これは将来の企業収益のマイナス材料となる事、予想と大きく異なる可能性が高い事等を挙げています。

一方的に批判をするだけでなく、自分の会社においても経理上バランス・シートにおいて不確実なものがあり、また、将来の収益にも影響する可能性があることを明確にし、説明しています。株主に対して、不確実な部分、リスクとなる部分に関しても、きちんと書いているところが、非常にバフェットさんらしいな、と思いました。

バフェットさんの株主向けの文章もとうとう最後のセクションを残すところとなりました。明日以降に、最後のセクションをエントリーします。(内容としては、アニュアルミーティングに関してです。)

4月8日の米国市場 

8-Apr-2008.png

主要インデックスの終値

DOW: 12576.44 -35.99 (-0.29%)
Nasdaq: 2348.76 -16.07 (-0.68%)
S&P500: 1365.54 -7.00 (-0.51%)

本日の主なニュース

Washington Mutualが、プライベート・エクイティのTPGから70億ドルの資金供給を受ける事を発表しました。(昨日の報道では50億ドルとなっていましたが、調達資金は70億ドルとなった様です。)また、第1四半期の収益が11億ドルの赤字となる見込みを示しました。これは、一株当たり1ドル40セントの損失で、アナリストの予想平均の51セントの赤字を大きく上回る悪い内容となっています。この発表に併せて、四半期の配当を一株当たり15セントから1セントに引下げる事、3000人の人員を削減する計画を発表しました。

資金融資の計画は、WaMuの1億7600万株を、TPG が一株8ドル75セント(今日の終値は$11.81)で購入する事による15億4000万ドルと、55億ドル分の転換優先株(初期転換価格8ドル75セント)で購入する事等によるとの事です。また、TPGの創業者の一人で1996年から2002年までWaMuの取締役だったDavid Bonderman氏がWaMuの取締役になるとのことです。

株価は本日10.19%下落しています。メディアによると今回の資金調達による株式の希薄化が今日の下落の要因の一つと報道しているところがありました。

WaMu gets $7 billion infusion, cuts jobs, sees loss

全米不動産協会(The National Association of Realtors)が発表した2月のペンディングの住宅販売は、インデックスを始めた2001年からで、最も低い数値となったことが明らかになりました。(ペンディングは、契約書にサインして、最終的な売却前の状態。尚、ペンディングで契約が行なわれないケースもアメリカでは良くあります。)インデックス値は、84.6で1月の86.2から下落しています。アナリストの予想は、86.3で予想を下回っています。昨年の2月は、107.6でした。統計を取り始めた時の数字を100としています。これまでの最低は、昨年の8月の85.8でした。
Pending home sales hit low in February

Fedが3月18日のFOMCの議事録を公開しました。内容としては、先日のバーナンキ議長の議会発言とほぼ同様で、実質GDPは2008年前半は下落となる見込みだが、後半から徐々に回復する事を予想しているとのことです。

3月18日FOMC議事録

Fed: Severe downturn possible

IMFによると住宅ローン関連の損失は9450億ドルに達するかもしれないと、Bloombergが報道しました。レポートによると、IMFは最悪のクレジット・クランチはまだこれからあるかもしれない、としています。今の時点での金融機関の公表された損失の合計は2320億ドルなので、IMFの最悪時の予想額は、その4倍以上です。この記事の中で、IMFのレポートからの引用として、「最近の市場の混乱は、単なる流動性の(が起因した)問題ではなく、貧弱な資本と脆弱なバランスシートが元となっていることを反映しており、その影響は更に広く、深く、そしてさらに長引くこととなるでしょう。」、「深刻な資金調達(ファンディング)とコンフィデンスの危機により長期にわたって問題が続く危険性があります。」といった様なことが記事に書かれています。

IMF Says Financial Losses May Swell to $945 Billion (Update3)

主なセクター・株の動き

(ファイナンス)下落しているところが多いですが、下落幅はそれ程大きくありません。Wachovia, Goldmanは若干上昇しています。

(住宅) 今日は下落しています。

(小売り) 上昇と下落に分かれています。TargetとWal-Martは上昇しています。

(テクノロジー) 下落しているところが多いです。その中で、HP, RIMMは微増、Ciscoはほぼ変わらず、となっています。

まとめ・コメント

Washington Mutualの資金調達は、予想通り発表となりました。本件発表時に、今四半期の赤字が従来の予想よりも大きくなる事、人員削減、営業所の閉鎖等のリストラクチャリングを併せて発表しました。今日は10%ちょっとの下落でしたが、昨日の30%を上回る上昇と合わせると、昨日今日で2割以上上昇しています。

ペンディングの住宅販売の結果はやはり悪い数値でした。予想よりも悪かったので、さすがに今日はホームビルダーの株は下がっていますが、ここ最近の大幅な上昇を考慮した場合、かなり高い水準で、年初から見ても大きく上がっているところも多い様に思います。

FOMCの議事録をざっと目を通しましたが、予想としては今年の後半から回復といったソフトランディングのシナリオとなっていますが、 読んだ印象としては、Fedが、今の状況,今後の見通しにも楽観視できる様な状況ではないと、考えている様に受け取りました。

さらにかなり強烈なのが、IMFのレポートです。上に添付したBloombergの記事から引用しただけですが、かなり事態は深刻で、さらなる大きな危機が起こりうる可能性を示唆しています。(個人的には、見方としては、同意できます。)実際のところ、どの程度で収束するのか非常に興味を持っています。

セクター毎、個別の株としては大きく下落するものもありましたが、株式市場全体としては、それ程大きな下落とはなりませんでした。恐らく、来週から本格化する第1四半期の決算結果を見てから、動こうと考えている投資家が多いのでは、と想像しています。 今日のニュースを見てみても、市場が底を打ったとの可能性はかなり低い様に思えます。

バフェットからの手紙 (10-2)- 2007年版 

バフェットからの手紙 (10)- 2007年版 のセクションの訳の続きです。

非現実的な数字 – 株式を公開している企業が利益を絞り出しているやり方
Fanciful Figures – How Public Companies Juice Earnings

(続き)

今世紀について考えてみましょう。投資家にとって、たったの5.3%の市場価値(価格)の増加とすると、ここ最近13000を下回っているDowは、2099年12月31日で約2,000,000近くになる必要があります。我々は、今世紀に入ってから8年経過したところにいます。それは、この100年の間の残りを5.3%(年当たりの増加)で行ったとして到達すべきである1,988,000の内、今の時点までで2000未満しか積み上げていません。

DOWが14000または15000と言った様なきりの良い千の単位の数字を超える見込みについて、コメンテーターが定期的に過呼吸気味になることは、おもしろい事です。もし、彼らがその様な対応を続けたとしたら、一世紀に5.3%の年間の伸びは、彼らがこの先92年の間に最低1986回その様な経験をすることを意味します。

配当は、引き続き2%程度となるとしましょう。もし仮に、株価の年間の平均増加が20世紀の(と同じ)5.3%だったとして、計画する資産の証券の部分は、0.5%の経費を考慮すると、7%以下の伸びとなります。そして、コンサルタントや高額なマネージャ(“手助けをする人たち”)が間に(何層も)入ることを考えると、0.5%はコストとして、低く見積もりすぎているかもしれません。

誰でも、自然と(当然)平均よりも良いものを期待します。そして、手助けをする人が関わるグループは、平均よりも 低くならざるを得ません。その理由は単純です。1) 投資家達全体として、平均所得(リターン)から発生したコストを差し引いたものが、利益となります。2) パッシブ(活発に取引をしない)とインデックスの投資家達は、殆ど取引を行なわないため、平均所得に対して引かれるコストは非常に低くなります。3) そして、平均所得のグループとしての残りのグループは、アクティブ(頻繁に取引する)投資家達です。しかし、このグループは、取引、運用、助言(アドバイス)の高額なコストが発生します。そのため、アクティブ投資家達は、インアクティブ投資家達と比べ遥かに大きなパーセンテージ(割合)が所得から失われる事になります。それは、パッシブ・グループ-“何も知らない人達”-が必ず勝つことを意味します。

今世紀の間に証券(株券)による10%の年間利益を期待している人達 – 配当から2%と価格の上昇による8%を描いている – についても話をするべきだと思います。これはDOWが2100年までに約24,000,000のレベルに達する事を予想していることを暗に示します。もし、あなたのアドバイザーが証券による二桁の利益(リターン)について話したとしたら、この計算を彼に説明して下さい-彼らをあわてさせることにはならないでしょう。多くのヘルパー達((資産運用の)手助けをする人達)は、「なぜ、時々、私は朝食の前に6つの不可能な出来事を信じたりするのか」といった様な事を言う、どうやら不思議な国のアリスに出てくる女王の直系の子孫の様です。口の達者なヘルパー達は、あなたの頭に空想・幻想を注いでくれる一方で、彼は手数料を彼のポケットに入れていることに気をつけて下さい。

(コメント:この最後のくだりを読んで、大笑いしてしまいました。参考までに、原文を以下に添付します。

Many helpers are apparently direct descendants of the queen in Alice in Wonderland, who said: “Why, sometimes I’ve believed as many as six impossible things before breakfast.” Beware the glib helper who fills your head with fantasies while he fills his pockets with fees.

注:女王の“朝食の前に6つの不可能な出来事を信じる”については、こちらに説明があります。不思議の国のアリスの中で、登場する女王の話です。)

いくつかの企業では、米国のものと同様の年金プランがヨーロッパにあります。そして、会計上、そのほとんど全てが、米国のプランは米国外のプランよりも多く利益を得る、と想定しています。この食い違いには当惑させられます。なぜ、これらの企業は、米国のマネージャーに米国外の年金資産を管理させないのでしょうか?そして、彼らにこれらの(米国の)資産と同じマジックを働かせないのでしょうか?私は、今までに一度もこの謎(パズル)が説明されたのを見た事がありません。しかし、そのような収益(リターン)の想定を点検する任務を課されている監査人達と保険経理人達は、それについて問題視していない様です。

しかし、パズルでないのは、なぜCEO達があえて高い投資(リターン)を想定しているかです。それは、より高い利益をレポート(報告)できるからです。そしてもし、私が信じる様に、彼らが間違っていたら(実現不可能な投資リターンを想定)、にわとりはリタイアしてから長い時間経たないと、ローストされるために家にはやってこないでしょう。

(注:以下、上の段落の訳の原文です。

What is no puzzle, however, is why CEOs opt for a high investment assumption: It lets them report higher earnings. And if they are wrong, as I believe they are, the chickens won’t come home to roost until long after they retire.

ちょっと分かりづらい喩え・表現ですが、CEO達が現実的でない(実現が無理な企業年金の)投資リターンを想定してそれを前提に決算を報告していることについて、バフェット氏は批判しています。想定しているリターンが間違っていることが分かるまでには、かなり長い時間がかかる事を喩えをつかって表現しています。この喩えは、この後の年金の話にも共通するものだと思います。)

境界ぎりぎり、あるいはもっと悪いこと、現状の利益を可能な限り最大の数字にしてレポートする試みが、 何十年もの間、行なわれてきました、コーポレート・アメリカはこれをやめさせる(減らせる)べきです。私のパートナーのチャーリーの言う事、「もし、あなたが3つのボールを左の柵の外に打ったのであれば、次のスイング少し右を狙うべきです。」を聞くべきです。

************

どれほど、年金のコストが株主達をこの先驚かす事になることであったとしても、これらの衝撃は、税金支払い者による彼らの体験によって何倍以上のものになるでしょう。公共の年金は巨大で、多くの場合、まったく不十分な資金しかありません。この時限爆弾の導火線は長く、それらの問題は、これらの役人達が去った後かなり時間が経ってから、やっと初めて明らかになるものなので、政治家達は、暗に痛みを伴う税金によって負わせることで逃れようとしています。早期退職(リタイア)- 時として40代前半 - に関して、気前の良い生活費の調整 は、これらの役人達にとって簡単に約束できます。人々の寿命が長くなり、インフレーションが確実な世界では、それらの約束は決して簡単にできるものではありません。



ここで、一旦終了します。このセクションは後少し残っています。米国の企業年金の話は、どうやら時限爆弾の様です。最後の部分で書かれている問題は、ある意味では、日本の年金の抱える問題と根本的には共通する部分があるかと思います。

このエントリーは、2008年2月29日に掲載されたウォーレン・バフェット氏の株主向けの文書をセクション毎に訳した物です。http://www.berkshirehathaway.com/letters/2007ltr.pdf

4月7日の米国市場 

7-Apr-2008.png

主要インデックスの終値

DOW: 12612.43 +3.01 (+0.02%)
Nasdaq: 2364.83 -6.15 (-0.26%)
S&P500: 1372.53 +2.13 (+0.16%)

本日の主なニュース

Washington Mutualが、プライベート・エクイティのTPGから50億ドルの資金を調達する件について、合意が近いとの報道が、本日の朝ありました。情報筋によると、月曜日か火曜日にも発表される可能性があるとのことでした。株価は、本日29.30%の大幅な上昇となりました。尚、この資金調達・投資案件が行なわれた場合、既存の株主にとっては株の希薄化になるのですが、WaMuの資金繰り等、安定化につながると、非常に好意的に評価されているようです。尚、調達予定の50億ドルは、先週金曜日の株価で換算したWaMuの時価総額約90億ドルの半分以上の投資額です。

Washington Mutual seen near $5 bln TPG deal

このWaMuの資金調達のニュースで、ファイナンスセクターは今日は一時かなり上昇しましたが、引けにかけ若干上昇のベースが落ちて終了しています。

クレジット・カード会社のDiscover Financial Servicesが、ダイナース・クラブ(Diners Club International)をCitigroupから、1億6500万ドルで買収する事を発表しました。DFSの株は本日5.54%の上昇となりました。
Discover Buying Diners Club From Citi

(コメント)ディスカバーは昨年Morgan Stanleyからスピンオフして上場した会社で、米国内で比較的有名なクレジットカードです。(私の理解では、対象顧客は、所得層としては中間かそれ以下だと思います。)国内の事業は強いのですが、海外はあまり強くないため、ダイナースのネットワークを使って、今後海外展開にも力を入れていく方針の様です。買収される側のダイナースは、高級路線で、日本でも結構ブランドとして認知されていると思います。私は、買収額が小さいのでちょっとびっくりしてしまいました。Citiも今後コンスーマーの事業に力を入れる方針と聞いていますが、そうであれば、ダイナースを手放すのはもったいないと思うのですが、色々事情があることでしょう。ディスカバーの傘下でダイナースが今までの様な、プレミアムを維持できるのか注目です。会社の文化、強みを考えると、ダイナースの先行きと言った点ではちょっと不安を感じます。

MicrosoftによるYahooの買収劇が白熱してきました。これに関しては、別途エントリーで後ほど詳しく取り上げる予定です。

概要としては、先週土曜日にMicrosoft CEOのSteve Ballmer氏がYahooの取締役に対して、提案後、Yahooが積極的に話し合いに応じないため、交渉が進展していない事を指摘し、この先3週間以内に合意が得られない場合、株主に直接働きかけ、委任状を獲得して取締役の入れ替えを行なう事も辞さないと書いた手紙を送付しました。これに対して、YahooのCEO Jerry yang氏と会長のRoy Bostock氏は、Ballmer氏に対して、買収には反対していないが、価格が問題との返事を送り返したとの事です。

この件に関連して、先週の金曜日にロイターがMicrosoftはYahooの買収提案額を引下げる事を検討しているとの報道があり、買収を巡る駆け引きが急遽激しくなってきています。今日のYahooの株価は2.33%下落、Microsoftの株は金曜日の終値と同じで終了しています。

Yahoo Wants Better Deal From Microsoft

市場終了後にアルミニウム製造の大手Alcoaが第1四半期の決算を発表しました。結果は、昨年同期に対して利益が半減する大幅な減益でした。純利益は3億300万ドル、EPS37セントでした。アナリストの事前予想はEPS44セントでそれを下回りました。利益の下落の主な要因は燃料費の高騰、原材料のコストの増加、そしてドル安を挙げています。Alcoaの株価は、決算発表前の本日4.00%下落しています。

Alcoa first-quarter profit falls more than 50 pct

主なセクター・株の動き

(ファイナンス)上昇しているところが多いです。Wells FargoとMorganChaseは微減でした。

(住宅) 日中は大きく上昇していましたが、結果的には若干の上昇で終了しているところが多いです。

(小売り) 下落しているところが多い様に思えました。その中で、Targetは少し上昇しています。

(テクノロジー) 上昇と下落に分かれています。特に目を引いたのは、 Apple (1.84%) とGoogle(1.22% up)が上昇したのに対して、RIMM (1.60% down), Cisco (1.85% down)と明暗を分けた事です。メディア関連、ケーブルTVの会社等は今日は上昇しているところが多かったです。

まとめ・コメント

今日は、Washington Mutualのニュースが大きく取り上げられ、市場のセンチメントも良く順調に上昇しましたが、あまり長続きはしなかった様です。上にも書きましたが、今回報道された資金調達が行なわれた場合、株式の希薄はかなり大きくなる可能性があるにもかかわらず、株価が大幅に上昇するのはちょっと個人的には納得できない面があります。

恐らく、WaMuの破綻等を懸念する投資家もいたと思われるので、その点では、この資金調達が行なわれる事は、破綻の可能性が遠のいたこと、また、投資家のコンフィデンスの上昇につながったと解釈はできます。しかし、短期的な破綻は回避できても、今後の収益が順調に回復する保証はありません。

今日のニュースを見ても、買収や合併といった業界の再編を示唆する動きが出てきています。これは、昨年までのプライベート・エクイティを中心とした投資・投機的な企業買収ではなく、低迷するセクターの中で、生き残りをかけたり、将来への布石を打つべく、企業が戦略的に動いているのが特徴だと思います。

Discover Financial ServicesによるDinersの買収はちょっとびっくりしました。これも上に書きましたが、うまく行くのか、特にダイナースにとってはかなりリスクの高い案件だと思います。(彼らが望んだ事ではなく、親会社のCitigroupが決めたことだと思います。)

MicrosoftとYahooに関しても、急遽動きが活発になってきました。Yahooの取締役陣は株主からのプレッシャーがかなり強くなってくると思います。Ballmer氏の手紙によると、猶予期間は3週間との事で、急速に事態が展開してくる可能性も出てきました。個人的にはYahooの第1四半期の結果が大きな鍵を握ると思います。決算結果が良ければ、Microsoftに対して、買収価格の引き上げを迫ることができると思いますが、もし結果が悪かった場合は、株主から買収提案を受け入れる様に強く迫られる可能性が高いと予想しています。

市場終了後に発表されたAlcoaの決算結果が予想以上に悪かった事は、明日の市場に与える影響は少なからずあると思います。特に、気になるのが大幅な減益の理由として、燃料費の高騰、ドル安による原材料、コストの増加は、Alcoa固有の問題ではなく、同様の影響を受ける企業が少なからずあると思います。

明日は、2月のペンディング住宅販売の結果と3月18日のFOMCの議事録等が発表される予定です。内容によっては、明日はかなり大きく動く可能性もあるかと思います。ただし、大きな流れを見る上では、来週から本格化する企業の第1四半期の決算結果の内容と今後に対する見方だと思います。

4月3日の米国市場 

3-Apr-2008.png

主要インデックスの終値

DOW: 12626.03 +20.20 (+0.16%)
Nasdaq: 2363.30 +1.90 (+0.08%)
S&P500: 1369.31 +1.78 (+0.13%)

本日の主なニュース

本日発表された先週の失業保険申請件数は40万7千件で、その前の週の38万件(36万9千件から修正)から上昇しました。アナリストの事前予想は36万5千件で、予想よりも高い(悪い)数字でした。
U.S. Department of Labor

ISMの発表した3月のNon-Manufacturing (Service)セクターの景況指数は、0.3%上昇して49.6%となりました。これで、3ヶ月続けて50%を下回る(後退を意味する)となりました。予想は48.5%で予想よりも良い数字でした。
March 2008 Non-Manufacturing ISM Report On Business®

Merrill Lynch CEOのJohn Thainが日経のインタビューで、Merrillは新たに資金調達をする計画はない、と語ったことが、こちらのメディアでも大きく取り上げられています。この発言により、クレジット市場の問題は峠を越した、との見方が強まってきている様です。
Merrill and RIM nudge Wall Street higher

昨日住宅セクター向けの政府の救済策の話を少し書きましたが、今日のWSJに記事が掲載されました。

救済案の概要としては、ホームビルダー等の企業の、現行の過去2年を引き延ばし過去4年にに遡って支払った税金に対して、損失を相殺することができる。(61億ドルのコスト)抵当流れとなった不動産の購入者に対してタックス・クレジット(税金の払い戻し)事等で、総額として150億ドルを見込んでいる様です。

(全文を読むのには、購読契約が必要ですが、以下のリンクで概要の序文を読む事ができます。)
Senators Move on Housing Relief

主なセクター・株の動き

(ファイナンス)上昇と下落と分かれていますが、幅は大きくありません。

(住宅) 今日も順調に上昇しているところも多いです。

(小売り) 上昇と下落に分かれています。BestBuyがアナリストのダウングレード等から売られ、本日は3.21%の下落でした。

(テクノロジー) 上昇と下落に分かれています。上昇で目についたのは、RIMM 5.86%, Apple 2.79%等です。一方、Ciscoはアナリストのダウングレードから2.92%の下落、Googleも2.27%の下落となっています。

まとめ・コメント

今日は予想以上に良かった3月のISMサービスの指数の発表とMerrill John Thain氏の発言等が好材料視され、上昇となりました。Merrillが損失を計上しないのであれば、やはりファイナンスセクターのクレジットの問題は峠を越しつつある、あるいは、既に超したとの見方が強まっても不思議はありません。

その割には今日の市場は若干の変動はあったものの落ち着いた動きでした。Merrillのニュースがかなり注目を集めた一方で、ファイナンス・セクター全体がそれ程大きく上がらなかったのは、市場は慎重に状況を見極めようとしていることの表れかと思います。

昨日市場終了後に第1四半期の好決算を発表したRIMMは、今日は大きく上昇しました。RIMMのニュースでテクノロジー全体が見直され、買われるのを期待していたのですが、それ程でもありませんでした。

今日Appleが上昇したのは、米国での音楽販売でWal-Martを抜いて一番になった事、携帯電話でのiPhoneのシェアが上昇したこと等、が要因の様です。テクノロジーのその他の株は上昇と下落に分かれており、特にCiscoが下がったことが気になりました。

RIMMが良い決算を発表しても、セクター全体として上がらないのは、市場がRIMMの好決算はRIMMだけの話で、テクノロジー全体の市場トレンドとは別と見ていることの表れだと思います。

住宅セクターは今日も順調に上昇となっています。ここに関しては完全に底は打ったとの見方からの買いになってきている様に思えます。(個人的には、同意していません)

セクター毎に多少ばらつきがありますが、全体としては若干上昇となり、多少なりとも落ち着きつつあるある様にも思えました。

企業の第1四半期の決算結果を見てから、売買の判断をしようと考えている投資家も多いのでは、と想像しています。

バフェットからの手紙 (10)- 2007年版  

非現実的な数字 – 株式を公開している企業が利益を絞り出しているやり方
Fanciful Figures – How Public Companies Juice Earnings

前上院議員のアラン・シンプソン氏の有名な発言、「ワシントンの主要道路を通行する人たちは、渋滞を恐れる必要はありません。」けれども、もし彼が本当に廃れた道路を探したとしたら、上院議員は、コーポレート・アメリカのアカウンティング(会計)を見ることになったでしょう。

1994年にどの道路事業が望まれるかの重要な国民投票が行なわれました。アメリカのCEO達は、 米国上院に圧力をかけ、投票結果は88対9によって、財務会計基準審議会(FASB: Financial Accounting Standards Board)に黙る様に命ずることとなりました。

その非難の前まで、FASBは、 誰一人反対する事なく、 全会(全員)一致で、 報酬の一環として供与されているストックオプションの価値は経費として処理すべきと、企業のトップに言う様な、大胆さを見せていました。

(コメント:バフェット氏は、 企業会計原則の指針の選択の投票を 道路事業と言う喩えを使って、表現しています。この投票について少し調べてみたのですが、 United States Senateのサイトにありました。(こちらです)既存のストックオプションとストックパーチェシング•プランの会計上の扱いを継続することをFASBに対して命ずる様な議決です。FASBがストックオプションを経費として処理すべきと言っていた事を、企業のCEO達が上院に圧力をかけて黙らせたようです。)

上院議員の投票(結果)後、 FASBは-現在は、上院において88のCPA(Certified public accountant: 公認会計士)を有し会計原則を教えています-企業は(ストック)オプションの(企業会計)の報告に二つの選択肢から選ぶことができることを法令として布告しました。望まれる処理法は、その価値を経費として処理することでしたが、オプションが市場価格で発行される限り、企業に経費として扱わない事を許されていました。

アメリカのCEO達に正念場がやってきました。そして彼らの反応はかなり酷い状況です。この先6年の間、S&P 500の企業の内たった2社しか望まれる道を選んでいません。その他のCEO達は、“所得(Earnings)”をより高く報告するために、 巨大で明らかな経費を無視する事、廃れた道を選択しています。 彼らのうちの何人かは、もし経費として処理する方を選んだとしたら、数年先には、 経営者達が求める巨額の(オプションの)承諾を認める前に、 取締役達が再考する(考え直す)様になると考えている、ことは確かだと思います。

多くのCEOにとって、廃れた道を行く事だけでは十分でなかった事が明らかになってきました。弱められた決まりでは、発行されたオプションの行使価格が市場価格よりも低い場合、所得として扱うことになっていました。まったく、問題ありません。その様なじゃまな(面倒な)決まりを避けるため、多くの企業は、現状の市場価格で付与された様に示すため内密にオプションをバックデートし、実際には市場よりもかなり低い価格で配布していました。

(コメント:これは、ストックオプションのバックデーティングの問題に関して述べています。バックデーティングは、ストックオプションを配布する際に、日にちを遡って過去の株価(市場価格)が低かった日を設定する事で、不正に行使価格を低くする事です。バフェット氏が書いていますが、実際、多くの企業で行なわれていた事が明らかになり、問題となりました。)

数十年に渡る、ばかげた(無意味の)オプションの会計処理は、今は収束となりましたが、他の会計処理の選択肢は残っています。それらの中で重要なのは、投資のリターンの想定を使用して、年金の経費の計算の中に入れている事です。多くの会社が引き続き安定しない所得を申告する事になるこの想定を選択し続けている事は、驚くことではありません。S&Pの中で年金のプランがある363の企業にとって、2006年のこの想定は平均8%です。それでは、これを達成できるチャンスについて見てみましょう。

全ての年金ファンドにおいて債券と現金の平均保有率は、約28%です。そして、これらの資産からの収益は、5%未満になると予想する事ができます。より高い利率はもちろん手に入れる事ができますが、それらは相応(または、それ以上の)損失のリスクを伴います。

このことは、資産の残りの72%-ほとんどが証券で、直接保有しているかヘッジファンドまたはプライベートエクイティの投資の様な媒体を通しているかのどちらかです。- ファンド全体として前提とする8%を達成するためには9.2%の利益を(証券で)稼がなければなりません。そして、その収益は、 今は以前と比べさらに高くなっている全てのフィー(手数料)を支払った後で、到達しなければなりません。

この想定がどれだけ現実的なのでしょか? 私が2年前に少し話したいくつかのデータをもう一度見てみましょう。20世紀の間、Dowは66から11,497に上昇しました。この上昇は、一見ものすごく見えますが、年間の複利に(計算)すると5.3%になります。(縮小されます。) 一世紀を通して Dowを所有した投資家は、この期間のほとんどにおいて、気前の良い配当を得ている事になったことでしょう。しかし、最後の頃の年ではたったの2%程度のものです。それは、素晴らしい世紀(100年)でした。



ここで一旦終了します。このセクションはまだ続きます。この後に今世紀の話になります。ちょっと喩えが分かりづらい部分もありますが、セクションのタイトルとここで書かれていることが合致しており、構成も、冒頭のアラン・シンプソン前上院議員の発言の引用とうまく喩えを合わせていると思いました。

バフェット氏は、企業の所得に関する会計処理の問題を提起し、この後、本題へと移っていきます。


4月2日の米国市場 

2-Apr-2008.png

主要インデックスの終値

DOW: 12608.92 -45.44 (-0.36%)
Nasdaq: 2361.40 -1.35 (-0.06%)
S&P500: 1367.53 -2.65 (-0.19%)

本日の主なニュース

バーナンキ議長が議会で証言し、米国経済はリセッション入りする可能性を示唆しました。しかし、金利の引き下げと緊急措置の効果から、今年の後半には、再び成長の勢いを取り戻すだろうとの見方を示しました。

Chairman Ben S. Bernanke
The economic outlook
Before the Joint Economic Committee, U.S. Congress

以下に声明の中から、今後の見通しについてリセッション入りの可能性を示唆する部分を含んだ段落を引用抜粋し、訳した物を追加します。

"Overall, the near-term economic outlook has weakened relative to the projections released by the Federal Open Market Committee (FOMC) at the end of January. It now appears likely that real gross domestic product (GDP) will not grow much, if at all, over the first half of 2008 and could even contract slightly. We expect economic activity to strengthen in the second half of the year, in part as the result of stimulative monetary and fiscal policies; and growth is expected to proceed at or a little above its sustainable pace in 2009, bolstered by a stabilization of housing activity, albeit at low levels, and gradually improving financial conditions. However, in light of the recent turbulence in financial markets, the uncertainty attending this forecast is quite high and the risks remain to the downside."

「全体として、短期の経済の見通しは、1月の終わりにリリースしたFOMCでの見通しと比べて弱まってきています。現時点では、 2008年前半を通しててみた場合、 実質GDPはそれ程伸びない様に思われ、 伸びたとしてもごくわずかで、若干下落することもあり得ます。我々は、今年の後半には(経済に)刺激を与える金利と財政政策によって経済活動は強化されると予想しています。そして、2009年は、住宅市場の動きが少なからず落ち着き、金融市場の状況が改善することによって、継続して伸び、あるいは多少ペースが上がると予想しています。しかし、最近の金融市場の混乱を考慮すると、今回のフォーキャスト(市場予想・見込み)は不確実性が高く、そしてダウンサイドに対するリスクは引き続きあります。」

以下のURLでバーナンキ議長がJoint Committeeで、特にリセッション入りの可能性が書かれている部分について質問され、応答しているビデオが見れます。そのまま、見ていると次のビデオで、上記の引用の部分を含むバーナンキ議長の議会での証言が見れると思います。ヒアリングの練習にもなるかもしれないので、ご興味のあるかたは、是非、見てみて下さい。

バーナンキ議長が質問に答えているビデオ

(個人的には、センシティブな質問に関して(リセッション入りの可能性)なので、バーナンキ氏がもの凄く慎重に答えているところが、笑ってしまいました。リセッションは経済のサイクルの中で当然あるべき物なので、なぜここまで警戒するのか、理解に苦しむ部分あるのですが、、、良くも悪くも株式市場への影響を考えると慎重にならざるを得ないのだと思います。)

市場終了後に、カナダのResearch In Motionが四半期の決算を発表しました会計上の第4四半期の利益は、4億1250万ドル、EPS72セントで、昨年似比べ2倍以上の増益となったことを発表しました。アナリストの予想はEPS70セントでそれを上回りました。共同CEOのJim Balsllie氏は、カンファレンスコールで、RIMは米国景気の停滞によるビジネスの低迷のサインはまったくないと語ったことが報道されています。株価は本日1.44%の下落でしたが、決算発表後のアフターアワーズでは5%近い上昇となっています。
Research In Motion 4Q profit soars

主なセクター・株の動き

(ファイナンス)上昇と下落と分かれていますが、幅は大きくありません。

(住宅)  今日も順調に上昇しているところも多いです。日中は大幅に上がっていましたが、多少落ち着いて終了しました。

(小売り) 上昇しているところが多い様に思われます。幅は大きくありません。

(テクノロジー)主要なところはほとんど下落しています。

まとめ・コメント

大幅な上昇となった昨日から明けた本日は、上下しましたが変動幅も大きくなく、終値は昨日に比べ少し下落した程度で終了しています。バーナンキ議長が議会で証言しましたが、特に市場に大きな影響を与える様な事もなく、あまり材料視されなかった様です。

バーナンキ議長の議会証言の文書のリンクを上に添付しました。市場ではあまり反応はありませんでしたが、Fedの現在の市場に対する見方と政策に関して、良くまとまっており、一読の価値はあると思います。

Bear Stearnsの救済の件に関しても書かれており、Chapter11を申請する直前であったことを明らかにし、なぜ救済したかと言う事について、理由(言い訳)を説明しています。 大まかなところでは、市場が大混乱になる恐れがあったため、特別救済の措置をとった、と言った様な内容です。(重複になりますが、是非、一読をお勧めします。)

上に書きましたが、市場終了後にカナダのブラックベリー(メール等を使うことに特化した高機能携帯電話)で有名な、Research In Motionがアナリストの予想を上回る利益が昨年同期に比べ倍増以上する好決算を発表しました。この発表席上で、共同CEOが米国景気停滞によるビジネスの影響は全く見られないと発言しています。最近のパターンだと、ハイテクの企業が好決算を発表しても、先行きに対して慎重な発言したり、その様な懸念をいだく様な見込みを示すと株価が大幅に下落するパターンが続いていましたが、今回のRIMMの共同CEOはその辺りを十分に考慮した発言の様な気がします。

これが、明日以降テクノロジー・セクター全体に対して好影響を及ぼすと良いと個人的には少し期待しています。

また、住宅セクターの株が、悪いニュースが立て続けに発表されているにも関わらず、上昇し続けている、と 私のブログで何回か書いていますが、本日の記事でその理由かもしれないものを見つけました。

民主党と共和党の上院議員の間で、破綻に直面するホーム・オーナーを救済するために数10億ドルを使用する救済案のドラフトに合意した、とあります。(添付記事参照)
Stocks Waiver as Market Looks to Bernanke

この話が事前に多少なりともリークしていたのであれば、最近の住宅セクター株の一見おかしな急上昇の裏付けと考えることもできるかと思います。まだ、この救済案の具体的な内容は(私は)分からないのですが、数10億ドルを使う案の様なので、どの様なものなのか興味を持っています。

しかし、ここのところ立て続けに発表されるFedや政府の政策は特定の企業や個人を救済する様なもので、少し前であればモラル・ハザードの問題として大きく批判的な意見等も出てきたと思うのですが、今の状況ではそう言った批判的な意見は陰を潜めている様です。

これらのFedや政府の過去にも滅多にない踏み込んだ政策、関与は背景にある事態の深刻さを物語っている様に思います。無事、バーナンキ議長の声明の様にソフトランディングで終わるのかどうか、非常に興味深く、注目しています。


4月1日の米国市場 

1-Apr-2008.png

主要インデックスの終値

DOW: 12654.36 +391.47 (+3.19%)
Nasdaq: 2362.75 +83.65 (+3.67%)
S&P500: 1370.18 +47.48 (+3.59%)

本日の主なニュース

昨日Lehman Brothersが転換優先株を発行して30億ドルを調達する計画を発表しましたが、その翌日の本日に予定を上回る40億ドルを調達したと発表しました。添付の記事によると、当初の予定の30億ドル分の転換優先株にたいして需要は3倍と高かっため、15%価格が上昇となったとのことです。
Lehmanの株価は、本日16%を上回る大幅な上昇となりました。

Lehman raises $4 billion of capital to hush critics

ヨーロッパの大手銀行UBSとDeutsche Bankが、米国の住宅ローン投資関連で230億ドル以上の損失を計上する見込みである事を発表しました。

発表された内容の概要は以下の様な物です。(以下添付の記事の概要を抜粋して訳しています。)

- 銀行とアナリストの間では、まだ以下の様な危険性が引き続き存在することに合意している。
* 大手のグローバルに事業を展開する銀行は、米国住宅市場の悪化からさらに巨大な損失を招く見込み。
* 来年の前半にかけて多くの人員削減が起きる。

- UBSは会長が退任する事を発表、第1四半期の損失の計上は約190億ドルとなる見込み。これにより、過去9ヶ月間に計上した損失は374億ドルに達する見込み。(これは現時点で発表してる銀行の中で最も多くの額を発表している)

- UBSの第1四半期の決算は121億ドル純損失となる見込み。これに伴い151億ドルの資金調達を新たに行ない、問題の米国の不動産を管理する事業部を新設する。

- 現在までで、他と比べると比較的この問題の影響が比較的少なかったDeutsche Bankは、第1四半期に40億ドルの損失を計上する見込みを発表。損失の理由として、米国住宅価格の下落、破綻件数の増加、クレジットの問題を挙げている。

-2つの銀行とも、市場の状況は3月の後半になって一気に悪化した事を警告している。

この発表を受け、2社の株は上昇、ファイナンスセクター、株式市場全体の大幅上昇の要因となった様です。

UBS, Deutsche Bank Wallow in Write-Downs

自動車メーカーが米国の3月の販売結果を発表しました。発表によると、昨年3月に比べ、GMは売り上げ19%減、Fordは14%減、トヨタは10%減となりました。日産は4%減、ホンダは3%減と比較的厳冬しています。
US auto sales fall in March

本日発表の3月ISM製造業指数は2月より0.3ポイント上昇して48.6となりました。市場予想の平均は47.5だったので、予想よりも良い数字でした。(ただし、50以下は景気後退を示している)

http://www.ism.ws/ISMReport/MfgROB.cfm

主なセクター・株の動き

(ファイナンス)大幅に上昇しています。Lehman 17.8%, Goldman 6.94%, Morgan Stanley 6.89%, JPMorgan 9.43%, Wells Fargo 8.21%, Bank of America 7.78%等です。

(住宅) 大幅に上昇しています。 Lennar 13.66%, DR Horton 8.38%, Meritage Homes 9.47%, KB Home 8.9%, 等です。

(小売り) 5%近い上昇をしているとことが多くあります。

(テクノロジー)上昇しているところが多い様に思えましたが、大きく上がっているところはそれ程多くない様に思えました。主要なところで上がったところは、Google 5.73%, RIMM 4.68%, Apple 4.2%, 等です。

まとめ・コメント

本日はLehmanの転換優先株による資金調達が予想以上に良かった事から、Lehmanの資金繰り等の問題や破綻の懸念が大きく後退、ファイナンス・セクターの信用不安の懸念が払拭された様です。さらに、UBSとDeutsche Bankの損失計上の発表から、問題の解決に対して積極的に取り組んでいる姿勢が高く評価された様で、ファイナンス・セクターを中心に市場は大きな上昇となりました。ISM製造業景況指数が前月に対して下落の予想に対して結果は上昇となった事も、市場のセンチメントの好転に寄与した様です。

しかし、これ程上昇するとはびっくりしました。Lehmanの転換優先株発行に関しても、既存の株主に対しては、一株当たりの価値の希薄をまねくものですし、業績がこれで良くなることを示すわけでもありません。この発表で明らかなのは、この資金調達によって短期的な資金繰りができたこと、それによって破綻の短期的な可能性は大幅に低くなったこと、Lehmanに対して投資したいと思う投資家が意外な程多かったこと、だと思います。

多くのメディアで、Lehmanに続き発表されたUBSとDeutsche Bankの損失計上のニュースも、今日の上昇の要因と書かれています。上に発表の概要を書いていますが、これらのニュースで市場心理が好転するのは個人的には驚きです。しかし、最近の市場の動向、メディアの報道等を見ていると、株式市場は底を打ったのではないか、といった論調の記事が多くあり、市場関係者の中にもその様に考える人が多くいる様です。

”市場が底を打ったのでは”と考える人たちに取っては、確かに今日発表されたニュースを見ると、やはりそうだ!、と思っても不思議はない気がします。ISM製造業景況指数に関しても、予想より良く、取り様によっては、市場が底を打った事の表れ、と考えることもできるかと思います。後は、ドルが多少戻し、それにより、原油価格が下落した事も明るいニュースとして捉えられた様に思えます。

本日発表された3月の米国内の自動車販売の結果は、昨年に比べ大きく下落しています。これらも、消費者の購買意欲が衰えており、消費者支出の低迷を示すものだと思います。昨日のエントリーにも書きましたが、多くの企業は業績の不振から人員削減を積極的に行なっており、今後、失業率が上昇する可能性も十分に考えられます。今日のUBSとDeutsche Bankの発表にもありますが、ファイナンス・セクターの企業は今後も大幅な人員削減を行なう事はほぼ確実だと思います。

今日から第2四半期に入りました。良いスタートを切ったとも考えられますが、引き続き注意が必要な状況だと思います。

3月31日の米国市場 

31-Mar-2008.png

主要インデックスの終値

DOW: 12262.89 +46.49 (+0.38%)
Nasdaq: 2279.10 +17.92 (+0.79%)
S&P500: 1322.70 +7.48 (+0.57%)

本日の主なニュース

財務長官のハンク・ポールソン氏が、金融市場の監視体制を強化するための計画を発表しました。大雑把なところでは、従来あった7つの連邦組織を、Federal Reserve, 新たに新設されたfinancial regulatorとconsumer protection and business practiceの3つに分けることにしたとの事です。(Fedの権限が強化されたと思います。)

FACT SHEET: TREASURY RELEASES BLUEPRINT FOR A STRONGER REGULATORY
STRUCTURE


Citigroupが組織改革を発表しました。概要としては、リージョナル・ユニット(事業部)を新設し、それぞれのリージョン(地域)担当のCEO職を設置、各CEOはPandit氏に直接レポートするとのことです。添付の記事によると、リージョンは、Asia Pacific, Western Europe, Middle East and Africa, Central and Eastern Europe, Mexico and Latin Americaに分かれる様です。(日本はどういう位置付けになるのか、ちょっと気になります。)

また、コンスーマー•グループを、バンキングとクレジットの事業に分けることを発表しました。

Citigroup creates regional, global units

(コメント)CEOがPandit氏に変わったので、組織も大きく変わる事が予想され、今回の組織発表もPandit氏体制への変化の一環だと思います。事業を地域毎に分けて取り組む、コンスーマーバンキングに力を入れる戦略の様です。割と無難なアプローチだと思います。新体制の効果等に関しては、将来になってみないと分かりませんが、注目です。
Lehman Brothersが、転換優先株を発行して、30億ドルを調達する計画を発表しました。また、Lehmanは不正取引で損失を被ったとして、日本の丸紅に対して、3億5000万ドルの賠償を請求する訴えを起こすことを明らかにしました。(この件に関しては、今日のFTの一面にも載っています。)
Lehman to raise $3 billion to quash stability fears

Dellがテキサス州オースチンの工場を閉鎖することを発表しました。これは、既に発表となっている前従業員数の10%に当たる8800人を削減する計画の一環としての様です。添付の記事によると、Dellは既に3200人を削減している様です。今回の工場の閉鎖によって900人が削減されることになるとの事です。
Dell to shut Austin plant, review finance business

主なセクター・株の動き

(ファイナンス)上昇と下落に分かれていますが、幅は大きくありません。

(住宅)主要なところは全て上昇しています。5%以上大きく上がっているところもありました。

(小売り) 主要なところは全て上昇しています。

(テクノロジー)上昇しているところが多い様に思えましたが、上昇の幅は大きくありません。下がったのは、HP, RIMM等です。

まとめ・コメント

今日で第1四半期も終わりました。今日は大きく変動する事もなく、全体としては、少し上昇して終了となりました。ニュースも株価に大きく影響を与える様な、大きなニュースはなかったと思います。Citigroupとデルのニュースを取り上げていますが、どちらも、会社の体制を変える一環の発表です。

米国の企業の場合、収益が落ちてきたりすると、トップが変わったり、大きな組織変更が行われ、それに伴い、大きな人員削減が行なわれる事が多くあります。この様な改革により従業員数が削減され、職を失う人たちが出てきます。米国経済が順調であれば、削減された人員を他の会社、分野で簡単に吸収できますが、景気の失速により多くの企業は求人数を減らす、または、凍結したりしてきています。

多くの企業がリストラ、リオーグ(組織変更)をする中、景気の状態が改善しなければ、失業数は上がっていくと思います。第1四半期には、経済指標でも景気の失速を示す発表が多くなってきましたが、失業率は今までの時点ではまだ大きく上昇していません。

昨年の12月に行なわれたCNBCのウォーレン・バフェット氏のインタビューの中で、バフェット氏が失業率が大きく上昇した場合、ドミノ倒しの様な状況になる危険性を示唆しています。私も、失業率の上昇は今後の大きなダウンサイドとして、非常に注意しなければいけないと思っています。