今日の米国株式市場は、午前中小高く、2時ごろにかけて一旦落ちたものの、そこから再度上昇し終了しました。各主要インデックスは、昨日終値に比べ、Dow 0.72%, Nasdaq 0.58%, S&P 500 0.54%それぞれ上昇しています。

午前中にGMがスト決行中だった労働組合と仮の条件で合意したとの発表があり、これを好感して市場全体は上昇しました。GMの株価は、午後2時以降に急上昇し、前日比で9.36%の大幅な上昇となりました。スト決行となった昨日は、株価は落ちずに、スト解消で大幅上昇ということは、ストが株価に織り込み済みで、解消がポジティブ・サプライズということになります。しかし、先週のメディア等の報道では、合意するとの見方が支配的だったので、本日の大幅上昇は、釈然としないものがありますが、まあ、そんなこともあるということだと、自分に言い聞かせています。
尚、DOWが他のインデックスを上回る結果だったのは、GMの株価の貢献度が高かったためと思います。DOWの企業では、Alcoaが3.97%とGMに次いで2番目の伸びでした。原油の価格も上昇しています。これで、市場が上がっていることが、面白いところです。今週後半に、GDP等経済指標が発表されるので、それらのデータ・結果は、中短期的な株価の動向を見る上では重要な尺度となると思います。
ビジネス的には、厳しい状況に立たされているBear Stearnsですが、本日、New York Timesが、株式の20%程度を外部の投資家・企業に販売することを交渉中であるとの報道が行われました。この投資の候補は、Warren Buffett氏を初めとし、Bank of America, Wachovia, と中国のCitic Group及びChina Construction Bankとのことで、この報道から、Bear Stearnsの株価は、7.67%の大幅な上昇となっています。Buffett氏がBearに対する投資に非常に興味を持っているとのことが、上昇の大きな要因のようです。やはり、Buffett氏の名前は非常に影響力が強いことを象徴するニュースだと思います。
Buffett Said to Consider Bear StakeBy Landon Thomas Jr
New York Times, Published: September 27, 2007
この記事の中にも言及していますが、Buffett氏は87年の市場暴落の後、危機に陥っていたSalomon Brothersに出資し、その後91年に暫定的にCEOに就任したことがあります。最近でも、Countrywide FinancialにBuffett氏が出資するのでは、との噂がありましたが、まさに困ったときの、Buffett氏だのみの感じもします。まあ、Buffett氏が実際に出資することになるのであれば、投資として十分に価値があることを裏付けることだと思います。
一方、Goldman Sachsのアナリストが、Merrill Lynchの第三四半期の利益予測を従来の一株あたり1.95ドルから、15セントに大幅に引き下げ、来年の利益見込みに関しても大幅に下落する見込みとの見込みを示しました。この報道により、Merrill Lynchの株価は一時大幅に下落しましたが、その後戻し、前日比0.51%の下落で終了しています。
CDO等、Structured Finance Productの問題やM&Aブームの終焉等、今まで絶好調だった投資銀行の市場環境は急速に悪化しています。このアナリストの予想の修正は現在の状況に即したものだと思いますが、もしそうであれば、それは、Merrill Lynchだけの問題ではないと思います。一方で、厳しい市場環境・材料の中で、どう対処するかで、明暗が分かれるのも事実だと思います。これは、先週発表になった各主要投資銀行の決算発表の明暗が一つの事例になると思います。
明日以降、今週はGDPの発表、8月の新築住宅の販売状況等が発表される予定です。これらのデータがどうなのか、ポジティブ、ネガティブなサプライズはあるのか、それに対する市場の反応・動きはどうなるのか等、気になることは多々あります。
Fedの金利引下げをきっかけに、DOW Jonesは過去最高のレベルに近いところまで戻してきています。その間、報道された主要なニュースは米国経済の減速を示唆するものが殆どの気がします。個人的には、今の状況は、”Climbing of Wall of Worry”でもなく、“Irrational Exuberance”に思えてなりません。
Wall of Worryに関しては、以前のエントリー、”
不安要因を抱えながら、上昇する米国市場 ”で取り上げています。
このエントリーを読み直してみましたが、非常に興味深く感じました。もしよろしければ、是非、読んでみて下さい。
この記事の数週間後に、Liquidityの問題が大きく取り上げられ、大きな調整があり、それに対して、Fedがディスカウント・レートの引き下げを含み積極的な対応を行ったことなど、いまさら読み直すといろいろ考えさせられる部分があります。
(以下、引用)
金利が引き続き低い状態である限り、これ以上のファンドの大きな問題が発生することはなく、外国人は引き続き、アメリカにお金を注ぎ込み、そして、消費者は、購買をやめなければ、流動性資金は引き続き、株を押し上げていくだろう。 Source:
What Could Topple Bulls’ Wall of Worry
WSJ(米国版), July 16, 2007; Page C1
(WSJ引用・要約終わり)
よくまとまっていると、思います。 しかし、私は、これだけいろいろな問題を抱えて、それらが今の時点では何とか抑えられている、と考えています。これらの問題が今後も抑えられる保障はなく、むしろ、何かのきっかけで、今抑えている状況が、崩れる可能性は少なからず、あると思います。
WSJの記事では、上記の結論(フォントに色をつけている部分)で締めくくっていますが、私は、かなり危ない状況になっており、いつトレンドが逆転してもおかしくないと思います。 (引用終わり)
尚、上記、WSJの結論は、Bullの視点での主張で、記事・記者の趣旨は異なると思います。私の上記表現は、WSJ自体の意見のように表現しています。至らない部分がありましたことを、補足かたがたお詫び申し上げます。
(ご訪問いつもありがとうございます。blogランキングに参加しております。クリックのご協力いただければ幸いです。)
人気blogランキングへ