先週は、月曜日と火曜日は比較的順調に上昇したものの、水曜日以降大きく下落して週を終了しています。特にNasdaqは、水曜日からの三日間で7%も下落しており、週を通し場合6.5%の大幅な下落となりました。

テクノロジー株は、今週の水曜日前までは、業績の良さとサブプライムとの関連性の低さ等から、注目を浴びつつあり上昇してきましたが、水曜日のCiscoのCEO John Chambers氏の今後の見通しについて、サブプライムの問題から銀行・住宅関連の会社からのビジネスの引き合いが急激に停滞してきているとの発言がありました。この発言が引き金となり、ここ最近順調に株価が上昇してきたテクノロジー株が一気に売られ、大幅な下落となっています。
私の理解では、Ciscoは2007年第4四半期、2008年の売り上げ予想自体は落としているわけではなく、Chambers氏は米国の一部セクターでの事業に関して低迷していると言う趣旨で発言したことが、懸念が高まる市場センチメントを一気に刺激して、大きな反応を引き起こしたと考えています。Ciscoのビジネス自体は、BRICs等向けの事業は非常に順調で、トータルで見た場合は、依然として堅調だと思っています。
Chambers氏は、前回の四半期決算では、「自分のキャリアの経験の中で、グローバルなビジネス環境は最も順調な状況にある」と発言しており、それが引き金で、市場は大きく上昇しました。 今回は、一転して慎重な発言をして、市場全体を下落させています。Chambers氏は、ITバブルの時にも、非常に楽観的な発言をし、バブルをエスカレートする様な事態を引き起こしたりしています。Ciscoの様な、業界を代表する超一流企業の経営者としての発言の重みをもう少し考えてもらいたいと、個人的には思います。
ただし、発言自体に関しては、IT関連の事業において米国の需要は今後停滞することは、恐らく現実問題としてあるのだと思います。IBMも10月の第3四半期発表時にハードウェア事業の低迷を明らかにしており、テクノロジー・セクターにおいて米国内(及びヨーロッパ)の大企業向けのセグメントは急速に停滞することが予想されます。
この予想を前提とした場合、IBM、Oracleといった企業が今後の売り上げ等に関して影響を受けることが予想されるため、これらの企業の株が調整を受けることはある程度やむを得ないと思います。今週の問題は、特定の企業・セクターに留まらずハイテク全体が大きく売られてしまっていることです。市場のセンチメントも180度変わり、悲観的になってきていると思います。市場のセンチメントの変化を端的に表しているのが、今週のGoogle、Apple、RIMM、NVIDIAといった企業の株価の大幅な下落です。これらの企業は、米国内の大手企業向けのIT事業の低迷の影響は比較的少ないはずにも関わらず、大きく売られています。
私自身は、多くのハイテク企業、特に米国内の事業比率が低い会社は引き続き堅調な業績を維持すると考えており、この考えを変えていません。自分の今の時点での状況の分析と、投資戦略に関しては、別エントリーで書く予定です。
以下に今週の主なニュース・動きについて記します。
11月5日(月): Citigroupがクレジット関連で80億ドルから110億ドルの損失を計上する見込みを発表。CEO Chuck Princeは責任をとって辞任。他のファイナンス企業も同様の発表をする見方が強まる。Googleが携帯電話向け事業戦略の概要を発表。ハイテク有力企業の株は順調に上昇。
11月6日(火): クレジットの不安が高まりつつあるものの、市場全体は上昇。ハイテク株は順調に上昇を続ける。
11月7日(水): GMが大幅な赤字決算を発表。Washington Mutualがサブプライム関連のクレジットで27億から29億ドルの損失を計上する見込みを発表。Morgan Stanleyも同様の大幅な損失を発表するとのアナリストの予想が明らかになる。ファイナンス・セクターの株は大きく下落。市場終了後に、Ciscoが決算を発表。決算自体はアナリストの事前予想通り(利益は若干上回る)。しかし、John Chambers氏の発言にアナリストは失望。アフターアワーズで、Ciscoの株は9%程度下落。
11月8日(木): 朝発表の米国小売業界の10月の販売状況とクリスマス商戦の売り上げ見込みが予想を下回る。Fedのバーナンキ議長が米国景気の低迷するとの見方の声明が発表される。声明発表後、市場はは下がったものの、後半値を戻して終了。Nasdaqは戻したものの2%の下落。
11月9日(金): Wachoviaが、10月の時点で住宅ローン関連で11億ドルの損失があったことを発表。UKのBarclayが100億ドルの損失を計上する予定との噂が流れる。ハイテク株は、有力企業を中心に全面安。市場全体も下落するが、ファイナンス、住宅関連は上昇している会社もあった。
次のエントリーで、少し違った角度から、現在の状況に関して、分析します。
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