(私のコメントを追記しています。)
FOMCの金利政策が発表された先週の火曜日12月11日の朝にCNBCは、サンフランシスコで行われたヒラリー・クリントンの資金集めの会合・イベントに参加しているバフェット氏に生放送のインタビューを行いました。以下のCNBCのウェッブサイトで、本インタビューのビデオとトランスクリプトが掲載されています。
Warren Buffett's Complete CNBC Interview: Video and Transcript (1 of 2)以下、上記ウェッブサイトにあるバフェット氏インタビューのビデオのトランスクリプトの邦訳です。(一部、英語と日本語の表現の違い等のため、意訳している部分があります。あらかじめご了承ください。トランスクリプトがあるので、英文を読まれる方は、是非上記URLのビデオ、トランスクリプトをご覧になって下さい。
Becky Quick(CNBCインタビュアー): (最初にイントロダクションの部分がありますが、割愛いたします)
最初にFedに関してのお話をお聞きしたいと思います。昨晩少し話しましたが、Fedの金利の(25bp引き下げの)判断についてお聞かせください。一投資家として見た場合の、あなたににとって、どの様な意味があるのでしょうか?
Buffett: 一人の投資家の意見として、Fedの本日のアクションは何も意味はないと思います。 我々は、もしFedが金利を上げたとしても、あるいは50bp下げたとしても、我々の好きな株を(今日)買うだけです。我々は、そのことを(Fedの金利発表を)元にして売ったりもしません。 ビジネスを所有する、または株を所有することによってビジネスの一部を所有する人にとって、Fedが行うことは、それ程重要ではありません。 もし、あなたが農場を今日買うとしたら、もしあなたがアパートを今日買うとしたら、そしてそれが良い投資と思えたら、Fedが行うことを待ったりしないでしょう。
我々は、1973年にワシントン・ポストを買いました。それは、100倍以上になりました。買ったとき、Fedが何をしていたのか、私は知りません。ですから、投資の決断を下す上で考慮する要素ではないのです。
Becky: そうはおっしゃいますが、あなたが以前にやられたような、例えばドルに賭ける、またはドルが下落することに賭けると行ったような事を考えている時、Fedが何をしようとしているのか、といった事に注意を払う必要がありますよね。
Buffett: ええ、それは大きなマクロ・ファクターです。 Fedは、ドルがどうなるのかという事に関して、第一の決定要因ではありません。 ドルが安くなっている現在の状況で、もし彼らが金利を更に引き下げたら、ドルに対するプレッシャーが強くなる、というのは事実です。しかし、本当の(為替の)決定要因は現在のアカウント・バランス、通商差益です。そして、もし、あなたが一日に20億ドルを国外に送っていることを続けたとしたら、それは資産に対してすることと同じで、ドルに対してプレッシャーがかかります、そしてその様なことが起こっているわけです。
Becky: 我々が話をした殆どのエコノミスト達は、彼らはFedが今日25bp引き下げることを予想しています。何人かの人々、特に何人かのマーケット・プレイヤー達は、50bpの引き下げを要求しています。今日、悪いニュースが発表されており、その様な悪いニュースを全て見た場合、金利を引き下げることでどの様なリスクがあるのでしょうか?
Buffett: そうですね、いくつかあります。為替市場に対する影響です。しかし、私はFedの政策については、Fedの総裁達に完全に委ねています。簡単に調達できるお金は、明らかに景気を刺激するでしょう。そして、彼らがどの程度の刺激が必要なのかにもよると思います。しかし、それによって違いは生じません。もし、あなたが今日株を買う、または売ったとして、そしてそれを5年後に振り返った場合、重要なことは、Fedが今日したことではありません。 重要なことは、その会社が何をしたのかになります。
(コメント: 確かに5年間保持すると決めて、株を買うのであれば、Fedの政策は重要ではないですよね。)
Becky: 景気について、あなたの視点で見た場合、どの様に思われますか?今の状況はどうなっているのでしょう?
Buffett: ある面、驚いている様な状況です。 我々は、深刻な住宅市場の低迷を抱えています。これは、非常に多くの人に影響を与えます。そして、資産の影響に多大に関わっています。一方で、今の時点では、(まだ)雇用には影響を及ぼしていません。 そして今、ドミノが列で並べられているものを、我々は抱えています。もし、失業率が上昇することがあった場合、深刻な影響を与えるかもしれません。しかし、今の時点では、ご存知の通り、失業率は4.7%です。それが4.8または4.9になったとしても、それほど大きな違いはありません。しかし、失業率が大きく上昇したとしたら、恐らく経済の多くのドミノの駒が倒れること(にぶつかる事)になると思います。
Becky: 先週金曜日に出た雇用の数字に関して、どう思われますか? 何人かのエコノミストが予想していた数値よりは強かったですが、ADPの数字から見た場合にはそれ程ではありませんでした。
Buffett: それはその通りだと思います。 しかし、住宅関連の産業の状況を考えた場合、驚くほど強い数字だと思います。我々は、煉瓦、カーペット、建物の断熱材等、そしてペイントの事業を行っています。それらの分野は、かなりの影響を被っています。自分達の家が毎年、自動的に値上がりするだろうと思っていた何千万人のアメリカ人が、貧乏になってきているように感じる様な状況にあります。そして、多くの人がリファイナンスをしています。それは、今のピクチャーにはまだ入っていません。現時点では雇用はそれ程大きな影響を受けていません。大きな影響を受けないのであれば、リセッションにはならないと思います。しかし、影響を受けるのであれば、大きなドミノがそこにあると思います。
Becky: 今、あなたは、多くのあなたの事業が、この様なこと(住宅関連の市場の問題)に直接関わっているとおっしゃいました。煉瓦から、カーペット、断熱等。 あなたは、会社の事業責任者の方々と頻繁にお話されているかと思います。彼らは、あなたになんと言っているのでしょうか? 6ヶ月前と比べて、良くなってきているのでしょうか、それとも悪くなってきているのでしょうか?
Buffett: そうですね、建築関連の産業は、どれもより厳しい状況にあると言えると思います。そして、彼ら(それらは)6ヶ月前もそれ程、加熱していませんでした。 私は、我々の全ての小売事業、貴金属販売の、クリスマス時期の数値を手に入れています。
サンクスギビングの後のブラックフライデーとその後、最初の数日間の売り上げは凄まじいものでした。 それらは、すごい勢いで先細りとなってきています。私は、カレンダー、その他全てを調整しています。しかし、最初の数日間の後は、かなり軟調な状況が続いています。我々はクリスマス・シーズンはどうなるのか注目しています。しかし、今の時点では、強く上昇していく様には思えません。
(一旦、引用、邦訳終了)
この話は、続きます。
(追記: コメント)
「Fedの金利政策は投資判断において、意味をなさない。」と言い切ってしまっているところが、バフェット氏らしいな、と思いました。実際、長期で保持する事を前提に考えた場合は、その通りだと思います。また、(その会社の株を所有する)ビジネス・オーナーといった立場で考えた場合は、まさにバフェット氏が言う通りだと思います。
Fedの政策が、為替に対する影響についても質問され(良い質問だったと思います。実際バフェット氏は為替の投資でも、大きく利益を上げています。)、それに対しても、関係はあるものの、第一の決定要因ではない、との見方を示しているところは、参考になりました。
私自身は、米国株の投資に関しては、バフェット氏の投資手法とは、まったく異なるので、この話をそのまま受け入れて、自分に適用することはできませんが、参考になるところは多々ありました。個人的には、今の市場は、あまりにもFedの金利政策に注目が集まりすぎている気がします。投資手法が中短期であったり、イベント・ドリブンの投資手法であれば、当然、非常に重要なことだと思いますが、その傾向が市場全体にかなり波及している気がし、ちょっと行き過ぎな気がします。ただし、遅かれ早かれ、市場も企業やセクターの業績を主とした観点(金利が上下するから、業績があがるではなく、業績を先に考慮する)に変わってくるのでは、と思います。
上記の考え方の違いは、円とドルの為替の動向を見た場合に”ドル安・円高”なのか”円高・ドル安”なのかといった見方と似た部分があると思います。
私の日本株の投資に関しては、長期投資を前提としているので、考え方としては改めて参考・勉強になりました。