先週の金曜日2月29日にバークシャー・ハザウェイのWebサイトに、日本で「バフェットからの手紙」として有名な、毎年恒例のバフェット氏のバークシャーの株主宛の手紙が掲載されました。
以下に本バフェット氏の手紙のリンクを添付します。
http://www.berkshirehathaway.com/letters/2007ltr.pdf
私のブログの読者の方はご存知の方も多いかと思いますが、本ブログはタイトルは"戦略的ハイテク株投資”となっていますが、積極的にバフェット氏の関連の話を取り上げているのが特徴です。(ちょっと話題がそれますが、正直なところ、ブログのタイトルを変更しようかとも思っています。)
せっかくの機会なので私のブログでもバフェット氏の手紙を取り上げ、訳をしようと思っております。今年の手紙は、pdfで22ページで構成されています。訳をすることは、時間がそれなりにかかる事なので、どうあつかうか悩んでいます。しかしながら、今までの経験でバフェット氏に関する記事の訳は、自分で後で振り返って見ても、色々な意味で役立っているので、できる限り訳してみようかと思っています。
尚、訳に関してはできるだけ原文の意味を忠実に日本語にする様に努めておりますが、一部英語特有の表記、言い回し等に関しては日本語の意味に則した様な形に変更している場合がございます。また、私が言うまでもない事ですが、英文を読む事が苦でない方は、原文を読まれる事を推奨致します。なんと言っても、バフェット氏の文章に直接触れる事ができる素晴らしい機会だと思います。
前置きが長くなってしまいましたが、取りあえず第1弾として、一番最初のセクション”
To the Shareholders of Berkshire Hathaway Inc.:”の部分を訳した物を以下に記します。皆様のお役に立てば幸いです。
バークシャー・ハザウェイの株主の皆様へ:
2007年の我々の純資産の増加分は123億ドルとなり、一株当たりの株主資本はClass AとClass Bの両方とも11%増加しました。過去43年の間に(それは、現経営陣がこの会社を引き継いでから)、(一株当たりの)純資産は19ドルから7万8008ドルに増加、複利で年21.1%の上昇となりました。全体として、昨年の我々の76の事業はうまく行きました。
問題があったいくつかの事業は、基本的に住宅に関連した事業で、それらは煉瓦、カーペット、そして不動産の仲介事業でした。これらの企業の後退は大きくなく一時的なものです。我々のこれらの事業分野における競合力(とその位置付け)は依然として強く、我々は良い時であろうと悪い時であろうと正しく運営できる一流の経営者(CEO)を擁しています。
しかしながら、いくつかの大手のファイナンシャル企業では、私か昨年の手紙で述べた”(自らを)弱める融資手法(weakened lending practice)”に手を染めたことにより企業の根幹を揺るがす問題に直面しています。Wells FargoのCEO John Stumpfは、多くの貸し付け業者の最近の行動をうまく評して、以下の様に語っています。:「業界は昔ながらのやり方が十分にうまく機能している時に、お金を失う新たな手法を考案したことは興味深いことです。」
皆さんは、「神様、もう一度だけバブルをお願いします」と嘆願した 2003年のシリコンバレーのバンパー・ステッカーを思い起こすかもしれません。(注)米国では、その時々の時評、メッセージを書いたステッカーを車のバンパーに貼ったりすること(ケース)があります。)
残念ながらこの願いは、全てのアメリカ人が住宅の価格は永遠に上がると信じる事となる形で、さっそくかなえられてしまいました。HPA(house price appreciation=住宅価格の上昇)が、全ての問題を解決してくれると確信し、 その確信によってお金を掘り起こ(融通)した貸し付け業者にとって、債務者の収入と現金資産をあまり重要と見なさなくさせてしまいました。
今日、その様な誤った信念によって我が国は広範な痛みを被っています。住宅価格が低下することによって、巨額の金融の愚行が明らかに(人目にさらされる様に)なってきました。潮が引いた時、初めて誰が裸で泳いでいたのか分かります。(注)バフェット氏のかつての有名な発言をここでも使用しています)そして我々は、いくつかの最大手の金融企業が醜悪な状態にあることを目撃しています。
すこし明るい話題に話を移しましょう。バークシャーが最近買収した、CEOのPaul AndresとJacob Harpazがそれぞれ経営するTTIとIscarは、2007年素晴らしい結果を残しました。Iscarは、私の見立てとして素晴らしい製造施設・能力を有していると昨年報告しましたが、韓国の並外れた素晴らしい工場を秋に訪問した事で確認する事ができました。
最後に、我々の保険事業、バークシャーの基幹事業は、非常に素晴らしい年を過ごしました。理由の一つは、我々はこの事業に於いて最も優れた保険の運用者を擁したことです。これについては後で詳しく述べます。しかし一方で、2007年は2年続けて大きな保険をかけられた大災害がなかった幸運に恵まれました。
その様な良い時期(パーティー)は終わりました。(That party is over.)
2008年、我々の事業を含めた保険業界の利益は、急激に下がる事は確実です。価格は下落し、(災害に対する)露出は避けられようもなく上昇するでしょう。たとえ仮に、米国が3年連続して大災害を免れたとしても、業界の利益率は4%程度は下落するでしょう。もし、風が吹き荒れたり(ハリケーン)、地面が揺れたりした(大地震)場合、結果は更に悪くなるかもしれません。
ですから、この先数年間の保険の収益が低下する事に備えて下さい。(心の準備をしておいて下さい)
以上、一旦ここで引用の訳は終わります。このシリーズは明日以降のエントリーに続きます。
(後記/コメント)
バークシャーの基幹事業である保険のビジネスが今後数年間厳しくなる見通しを明確に示した事は、バフェット氏らしいな、と思いました。今後の自分の会社の先行きに対して悪い事は言わないのが通例だと思いますが、株主に対する情報開示の責任を持って、それを示していると解釈する事もできるかと思います。
保険事業の先行きに対する厳しい見方と、第4四半期の利益が前年同期に比べ18%下がった事等から、バークシャーの株は、今日2.5%下落しています。AIGの株もつられて下がるかと思いましたが、以外に堅調でした。恐らく、先週かなり下落したので、ある程度の悪材料は織り込み済みとの解釈ができるかと思いますが、バークシャーと比べて、保険事業の比率が(当然の事ながら)高いので、今後(中長期)のAIGの動向を興味を持って見て行こうと思います。
今日3月3日(日本時間では4日)CNBCでバフェット氏のインタビューの特番を組んでいます。こちらも既にCNBCを始めとして多数のメディアで大きく取り上げられています。こちらの方も、私のブログでも後日取り上げる予定です。