一昨日のエントリーの続きです。
2008年2月29日に掲載されたウォーレン・バフェット氏の株主向けの文書をセクション毎に訳しています。
http://www.berkshirehathaway.com/letters/2007ltr.pdf
規制されたユーティリティ事業(Regulated Utility Business)(注)ユーティリティ事業とは、電気・ガス・水道等のサービスを指します。米国では、この様な公共に属する様な事業を会社が営んでいます。ただし公共性のため行政からの規制がされています。そのためRegulated Unitilityと呼ばれているのだと思います。)
バークシャーは、様々なユーティリティの事業を所有する(営む)MidAmerican Energy Holdingsの87.4%(希薄後)を保有しています。その中で最も大きい事業は、(1) 380万の顧客を持つイギリスで3番目に大きい電力供給会社のYorkshire ElectricityとNorthern Electric; (2) アイオワの72万の顧客に電力を供給するMidAmerican Energy, (3) 6つの西部の州の170万の顧客に電力を供給するRocky Mountain Power, そして(4)米国で使用される8%のナチュラルガスを運ぶKern RiverとNothern Natural pipelines,です。
我々のMidAmericanの社主としてのパートナーはWalter Scott、そして二人の素晴らしい経営者Dave SokolとGreg Abelです。それぞれのパーティーがいくつ投票権を持つのか、と言う事は重要ではありません。我々は、大きな判断(動き)をする時は全員がその判断が良い(分別のある)ものだと思った時だけ行ないます。(注)つまり投票で決めるのではなく、全員が合意しない限り重要な変更は行わない、と言う事です)Dave, Greg, そしてWalterと8年間一緒に働いたことは、私の最初の考え:バークシャーは彼らより良いパートナーを持つ事はできない、を強く確信することになっています。
多少組み合わせとしては変な事なのですが、MidAmericanは、米国で2番目に大きい不動産の会社、HomeServices of Americaも所有しています。この会社は、1万8800人のエージェント(販売員)を抱え地元のブランドの名称を持つ20の会社を通して運営されています。 昨年は不動産販売が停滞した年でした。そして2008年は多分もっと悪いでしょう。しかし、我々は引き続き、質の高い不動産販売事業が分別のある価格で提示されれば、買収を行います。
MidAmericanの事業の主要な数字を下に記します。

1999年に、我々はMidAmericanの35,464,337株を35.05ドルで購入する事に合意しました。その年の一株当たりの利益は2ドル59セントでした。なぜ、中途半端な(きりの良くない)35.05ドルか?私は元々この事業はバークシャーにとって一株当たり35ドルの価値があると判断しました。そう、私は、“ワン・プライス(一つの価格)”男です(
See’sの話を思い出して下さい)。数日間、MidAmericanの代理を務める投資銀行家達は、バークシャーからの提示額を私から引き上げる事ができないでいました。しかし、最終的には彼らは私の一瞬の弱みをつかみ、私は降参して、彼らに35.05ドルで良い、と言わせたのです。彼らは最後の5セント硬貨を、私から搾り取る事ができた、と彼の顧客に説明することができたのです。その時は、痛かったです。
その後、2002年にパイプラインを購入するための資金を調達のため、バークシャーは670万株を60ドルで購入しました。最後に、2006年にMidAmericanがPacifiCorpを買収した時、我々は2326万8793株を一株当たり145ドルで購入しました。
2007年、MidAmericanは一株当たり15ドル78セントの利益をあげました。しかし、そのうちの77セントは、英国の法人税率の引き下げの結果、British utilityの繰延税が減少したことによる一時的なものでした。ですから、通常の利益としては、一株当たり$15.01の収益でした。そしてもちろん、私がしょげながら追加のニッケル(5セント)を提示して、良かったと思っています。
(このセクションはこれで終わりです。明日以降に続きます。)
ユーティリティ事業を主体とするMidAmericanが全米2位の不動産業も持っていると言う話は、恥ずかしながら自分にとっては初めて知る事でした。(バークシャーが不動産の事業を持っていることは知っていましたが、具体的には知りませんでした。)
このセクションで述べていますが、バフェット氏は今後、不動産事業を買収し大きくする様に考えている様です。米国の不動産市場は過去にない様な好景気から一転して、昨年から低迷しています。バフェット氏も述べていますが、2008年は恐らくさらに厳しい状況となる事が予想されており、その様な状況の中で、良質な不動産事業を価格が折り合えば、積極的に買っていくことを考えている様です。
現時点で全米2位との事なので、将来的にはバークシャーが不動産業で全米第1位となる可能性も少なからずあると思います。
興味深かったのが、大きな事業判断について、全員が合意しなければ行なわない、と語っている事が印象に残りました。大株主(今は、完全な社主?)にもかかわらず、投票権の数は関係ない、判断には経営陣との100%の合意が必要、と言うのは一般の常識とは一線を引く、ところだと思います。これもバフェット氏の経営スタイルの一端を表すところだと思います。