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バフェットからの手紙 (7)- 2007年版  

製造、サービス、小売り事業 (Manufacturing, Service, and Retailing Operations)

これらの事業分野において、バークシャーの我々の活動は、多岐に渡る事業活動を行っています。それでは、このグループのバランスシートと損益計算書の概要を見てみましょう。

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ロリーポップ((注)キャンディ)からモーターホームといった幅広い製品を販売するこの種々雑多のグループは、昨年、平均有形資産自己資本の23%の収益を得る喜ばしい結果を達成しました。特筆すべきは、これらの事業は、非常に少ないファイナンシャル・レバレッジを使用して(ほとんどレバレッジを使わずに)、この収益を達成しました。我々は素晴らしい事業を所有している事は明らかです。しかし、我々は、このグループの多くの企業を自己資本に対して大きなプレミアムを付けて買収しています。バランスシートの中の営業権の項目にそれは反映されています。そして、そのため収益は企業価値(原文では'Carrying Value')の平均に対しては、9.8%の収益と少なくなっています。

(コメント: 一般に(Net) Carrying Valueと言った場合、(Net) Book Valueと同義と解釈されます。この場合は、Intangible(無形の)は含みませんが、このバフェットさんの文章の中では、Intangibleを含めた意味で使っています。(Netではない)

http://www.investopedia.com/terms/c/carryingvalue.asp
http://www.investopedia.com/terms/b/bookvalue.asp

バフェットさんのここでの話のポイントは、自己資本を元にしたリターンと買収の際に支払ったプレミアムを考慮した場合のリターンの両方を提示する事で、買収企業による事業グループのパフォーマンスを二つの視点から説明しています。

自己資本に対するリターンは非常に良いパフォーマンスであるが、買収の際に支払った額は営業権とその他無形資産(Goodwill and other intangible: ブランド、特許、トレードマーク、コピーライト、その他)に対してのプレミアムが高いため、それらを考慮した場合の、パフォーマンスは低くなる。と述べていますが、企業規模を考えた場合、どちらも素晴らしい数字だと思います。プレミアムに関しては、中長期的にはその無形資産の価値が業績の伸びにも貢献すると思います。コメント終わり)

このセクターの会社でいくつかニュースに値するものを挙げます。

Shaw, Acme Brick, Johns Manville, そしてMiTekは、住宅市場の急速な低迷のため厳しい状況となりました。2007年の税引き前の利益は、それぞれ27%, 41%, 38%, 9%の下落となりました。全体として、これらの会社は税引き前の利益が2006年の12億9600万ドルに対して9億4100万ドルに減りました。

昨年、Shaw, MiTek, Acmeは統合する(吸収合併し統合する)契約を行ないました。これは将来の収益に貢献することとなると思います。これらの事に関しては期待していてください。

小売り事業にとって厳しい年の中、See’s, Borsheims, Nebraska Furniture Martは傑出した良い結果を残しました。

2年前、Brad KinstlerhaはSee’sのCEOになりました。我々は、滅多にバークシャーの中で、経営者を異なる業界に移動させたりしません。しかし、以前我々のユニホームの会社FechheimerとCypress Insuranceを経営していたBradについては例外的な処置をとりました。この移動は、非常にうまくいきました。彼が経営する様になった2年の間に、See’sの利益は50%以上上昇しました。

Borsheimsでは、株主ウィークエンド(Shareholder Weekend)の間の27%売り上げ増によって、売り上げは15.1%増えました。(注: バークシャーは株主総会開催期間中にShareholder Weekendと呼ぶ、株主特売会を行ないます。)2年前に、Susan jacquesは、店の改装と拡張を提案しました。私は懐疑的でしたが、スーザンは正しかったです。

スーザンは25年前に時給4ドルの女性販売員としてBorsheimsに入社しました。彼女は経営の経験がありませんでしたが、1994年に私は彼女をCEOにすることに躊躇しませんでした。(躊躇せずに彼女をCEOにしました)彼女は、非常に賢く、仕事が大好きで、そして、彼女は同僚達が大好きです。そのことは、どの様な時でもMBAに勝ります。

(ちょっと余談:チャーリーと私は履歴書・職務経歴書(レジュメ)の愛好家ではありません。レジュメではなく、我々は、頭脳、情熱、そして誠実さに注目します。我々の素晴らしい経営者のもう一人、Cathy Baron Tamrazは、我々が買収した2006年の初め以来、Business Wire’sの収益を大幅に伸ばしています。彼女は社主の夢の人です。Cathyと事業の見込みの間にいる事は、良い意味で危険な事です。 述べておくべき事ですが、Cathyはタクシーの運転手が最初の仕事でした。)

(コメント:ここでのバフェット氏の人選とその基準は注目すべき点だと思います。バフェット氏の経営の特徴を表すものだと思います。)

最後に、Nebraska Furniture Martは、我々のオマハとカンザスシティの店舗でそれぞれ約4億ドルを販売し、記録的な収益をあげました。これらは、全米で際立ったトップ2の家庭用家具の店舗です。多くの家具の小売店にとって悲惨な年に、カンザスシティの売り上げは8%上昇、一方、オマハは6%売り上げを増やしました。

この結果は、非凡なRonとIrvのBlumkin兄弟のお陰です。二人とも私の個人的な友人で素晴らしいビジネスマンです。

Iscarは引き続き驚くべき道を進んでいます。その製品の小さなカーバイド切削器は、大きくて非常に高価な機械機器をより生産的にすることができます。カーバイドの原材料は中国で発掘されたタングステンです。何十年もの間、 Iscarはタングステンをイスラエルに運んでいました。そこで、頭脳的な作業により、何かもっと価値のあるものに変えられていました。2007年の終わりに、 Iscarは中国の大連に大きな工場を作りました。実際、我々は今度は頭脳をタングステンに移動させています。 Iscarは拡大のための大きな事業機会を迎えようとしています。 (注:以前はタングステンを頭脳的な場所に移動、今度は逆に頭脳をタングステンに移動。) Eitan Wertheimer, Jacob Harpaz, Danny Goldmanに率いられる経営陣がその多くの事業機会をものにする事を確信しています。

フライト・サービスは、2007年に税引き前利益が49%上昇し5億4700万ドルの記録を達成しました。企業向けの航空機事業は、世界的に非常に素晴らしい年でした。そして、各々の分野において突出したリーダーである我々の会社の2社もその恩恵をを十分に得ています。

パイロットのトレーニングを行う事業のFlightSafetyは売り上げを14%伸ばし、税引き前の利益を20%増やしました。我々は、米国の業務用パイロットの58%をトレーニングしていると試算しています。CEOのBruce Whitmanは、2003年に高度なフライト・トレーニングの父、Al Ueltschiが築き上げたリーダーのポジションを引き継ぎ、そして価値のある後継者である事を実績をあげて証明しています。

ジェット機の部分所有の考案者、NetJetsは他社をよせつけない業界の盟主として君臨しています。我々は、487機を米国、135機をヨーロッパで運用しています。我々の競合する3社を合わせた数の2倍以上の規模です。大きな機内を持つ市場での我々のシェアは90%近いため、価値(売り上げ・収益)においての優位性はさらに大きいです。

安全、サービス、安心に対する誓い-NetJetsのブランドは年ごとに強くなっています。一人の男、Richard Santulliの情熱がこの背後にあります。防空壕に一緒に入る人を選ぶのであれば、Rich以上に良い人はいません。どの様な困難、問題があっても、彼を止めることはできません。

ヨーロッパは、Richの粘り強さが成功を導いたことの最も良い例です。最初の10年は、我々はそこで少しの進捗しかありませんでした。実際には、累積の損失は2億1200万ドルに達していました。しかし、Richがヨーロッパの事業を経営させるためMark Boothを引き入れてから、進展が見られました。そして今、本当に勢いに乗っています。昨年の収益は3倍となりました。

11月に、我々の取締役達はColumbusのNetJetsの本社に集まり、そこで洗練された運営状況を見る事ができました。どの様な天候であっても、一日に1000便程の運行を行ない、卓越したサービスを期待している顧客に応える責任ががあります。我々の取締役達は施設と能力、さらに優れたRichとその仲間達に感銘を受けて帰りました。

(これで、このセクションは終わりです。このエントリーは続きます。)

一昨日のエントリーの続きです。尚、このエントリーのシリーズは、2008年2月29日に掲載されたウォーレン・バフェット氏の株主向けの文書をセクション毎に訳したものです。
http://www.berkshirehathaway.com/letters/2007ltr.pdf

この記事へのコメント

ROE

「tangible net worth」は自己資本のことですので、平均自己資本の23%の税引後利益を計上した、つまりROEが23%だったということですね。

カッツさん、

おっしゃる通り'tangible net worth'は自己資本の事なのでその様に修正致しました。ご指摘ありがとうございました。昨晩夜中にエントリーを書いていて、十分見直ししてなかったのですが、ご指摘頂き助かりました。

ROEに関してなのですが、カッツさんがおっしゃる様に、(平均)自己資本に対する税引後利益の割合がROEですね。(以下、野村証券のサイト参照)
http://www.nomura.co.jp/terms/search/roe.html

実は私はカッツさんのROEのコメントを見て、一瞬あれっと、思いました。なぜかと言うと、米国(英語)でのROEの計算は通常, Net IncomeをShareholders' Equityで割ったものです。割られる方はNet Income(純利益=税引後利益)で一緒ですが、Shareholders' Equityはtangibleとintangibleの両方を含みます。一方、上記の自己資本は、カッツさんご指摘の通り英語でtangible net worthです。

ROE: http://www.investopedia.com/terms/r/returnonequity.asp
Shareholders' equity

Shareholders' equity includes both tangible and intangible items (such as brand names and reputation). (以下のWikipediaからの抜粋)

http://en.wikipedia.org/wiki/Shareholders%27_equity

念のため、InvestpediaのShareholders' Equityの説明も見てみましたが、表現は異なるもののTangible Assetを含む様になっています。

http://www.investopedia.com/terms/s/stockholdersequity.asp

と言う事で、ちょっと話がづれてしまいますが、日本と米国とROEの計算方法が異なるのでしょうか???

いづれにせよ、原文でも、自己資本に対する税引後利益の割合が23%と言うことです。(日本のROEに該当)

バフェットさんのバランスシートの表の中で、Equityは約$25.5Bなので、Net Income(純利益)をEquityで割った場合、約9.2%になります。多分これがこちらで一般に言うROEになるのではと思います。(私の当初の’Equity'の訳は単に”資本”にしていましたが、日本では通常”株主資本”に該当する様なので、本日変更しております。)

尚、バフェットさんが言っている’tangible net worth'は、

Tangible Net Worth(自己資本)=Total Assets - Liabilities - Intangible Assets

と想定すると、2007年末の数字を使うと、以下の様になります。

$38,322M - ($8,930M+$828M+$3,079M) - $14,201 = $11,284M

2007年のNet Income$2,353Mを上記で割ると、20.9%になります。バフェットさんは自己資本の平均で、上記は07年末の自己資本なので、数字的には近いと解釈できるかと思います。

長くなってしまいましたが、念のため私の調べた事(特に日本と米国のROEの違い、今でも、計算が異なる(と思われる)のが、ちょっと納得いかないのですが、、、)書かせて頂きました。

何かご存知でしたら、教えて頂ければ幸いです。

今後もよろしくお願い致します。

日本の会計基準では
当期純利益/(純資産-新株予約権-少数株主持分)

米国の会計基準では
当期純利益/(純資産-少数株主持分)

という違いでしょうか。

2006及び2007のChairman's letterより
2,353÷{(25,485+22,715)÷2}=9.76%
2,353÷{(25,485-14,201+22,715-13,314)÷2}=22.75%
ということが分かりますね。

カッツさん、

私も、2006年と2007年の数字を使えば、平均値が取れる、と今日気がつきました。(遅いですよね。)カッツさんが計算の確認をして下さり、助かりました。

ありがとうございました。

ROEの方ですが、私のコメントが明確でなかった様ですみません。

私のポイントは、米国ではROEで使用するShareholders' EquityはIntangibleとtangibleの両方を含むと解釈しています。つまりROEの計算において、Intangibleの数字も含まれると認識しております。
ROE: http://www.investopedia.com/terms/r/returnonequity.asp
http://www.investopedia.com/terms/s/stockholdersequity.asp

上で添付した以外にも、以下のサイトの説明でもShareholders' EquityとBook Valueの違いが書かれています。

http://beginnersinvest.about.com/cs/investinglessons/l/blles3bkvalue.htm

バフェット氏の手紙の中のEquityもIntangibleが含まれており、ROEを計算する場合、このEquityの数字を使用するのではと思っています。

一方、日本の場合、カッツさんが書かれた様に、ROEの計算には自己資本(Tangible Net Worth)を使用する、つまりIntangibleのアセットは除かれている様に認識しております。

この解釈だと、日本と米国で計算がかなり異なる(intangibleを含める・含めない)と思ったしだいです。

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