バークシャー・ハサウェイのアニュアル・ミーティングののウォーレン・バフェット氏とチャーリー・マンガー氏の株主とのQ&Aセッションの午後の部です。(昨日のエントリーは午前の部で、その続き)
このエントリーは、CNBCのWarren Buffett Watchのブログでのライブ中継から、主な部分を抜粋して邦訳したものです。ちょっと長いですが、興味深い話も途中で出てきます。
Source:
CNBC, LIVE BLOG ARCHIVE: Warren Buffett's Q&A With Shareholders (Afternoon Session)(会場の写真:Wall Street Journal, May 5, 2008, C1 (Reutersから))

(午後の部)
1:12 pm: Warren BuffettとCharlie Mungerがステージに戻り、株主からの質問を受ける。午前のセッションよりは、空席がいくつかある。しかし、アリーナは殆ど満席の状態。
1:14 pm: バフェット氏は、彼が何年もの間に多くの間違い(mistakes)をしたと語る。しかし、それらのどれ一つとして、”通常のdue diligence”で防ぐことはできなかったであろう。
(コメント:つまり、情報、資料を吟味して、それらの間違えを防止することは非常に難しかった(事実上不可能とも言えると思います。))
1:15 pm: ファイナンシング(コメント:Financing: 一般的な意味では融資すること)はするところがどこか必ずあります。どのようなことがあったとしてもと言って、「もしも仮に、ベン・バーナンキがパリス・ヒルトン(ホテル王ヒルトンの長女で有名な女優)と南アメリカに駆け落ちしたとしてもです。」会場は大爆笑。

(パリス・ヒルトン)
1:16 pm: 彼の信教について聞かれて、「自分は、アグノスティック(agnostic: 不可知論者(神の存在は知ることができないと考える))です。単に神がいるのか分からない、そして、神の存在を見つけることができるのか、分からない。」とバフェット氏。
1:20 pm: Kraftについて聞かれ、殆どの食品会社は、優良な資産(good assets)を所有していると答えた。彼は、コカコーラが良い例だと語った。何十年もかけて築かれたブランドの力のため、ビジネスを奪うことは非常に困難。「その分野でダントツのリーダーとなっているブランドの製品は、安心できます。」バフェット氏。
(コメント)
バフェットの手紙の”堀”の話といっしょです。
1:30 pm: バフェット氏「我々は、バークシャーを誰かに依存する様な形(方法)で経営していません。我々は、もしも会社以外の世界が昨日までのやり方が通用しなくなったとしても、会社がうまくやっていける様に望んで(経営して)います。
1:33 pm: 我々は通常5分以内に決断します。そして、適時、素早く行動をおこします。「もしも、我々が5分で決断できない場合、5ヶ月かかっても決断できないでしょう。」「我々は多くの時間を無駄にしています。しかし、それは我々が時間を浪費したいと思うことに対してだけです。」(“We waste a lot of time, but only on the things we want to waste time on.”)
(コメント:バフェット氏の短時間で決断する話は有名。
こちらのエントリーでも触れています。(お勧めです)。
中略
1:38 pm: チベットの問題で、コカコーラに北京オリンピックをボイコットする様に勧めるか?と聞かれ、「全ての国がオリンピックに参加すべきだと思う。」と回答。「オリンピックは、“素晴らしい行事(wonderful event)”である。そして、長い間、世界をより良くするために貢献している。」(バフェット氏)
「中国は完全ではないが(imperfect) 、正しい方向に進んでいる」(マンガー氏)
「米国も正しい方向に進んでいる、なぜなら、黒人や婦人の投票権を認めていなかった時もあった。」(バフェット氏)
1:40 pm: 「我々は、環境を守りながら、石炭を使う良い方法を見つけ出すだろう。Mid-Americanは、風力発電に多大な力を注いでいるが、依然として石炭に依存している。そして、(その日が来るまで)当分の間は石炭への依存は続くであろう。世界全体の規模でのリーダーシップと協力が必要となる。そして、過膨大なエネルギーを使っている過去がある米国は、非常に強いリーダーの立場ではない。」(バフェット氏)
「石油燃料と比べて、積極的に石炭を活用すること(being pro-coal compared to biofossil fuels)は、環境上も利点(理由)がある。ほとんどの人はその様には考えないが、私はそう思う。」(マンガー氏)
1:47 pm: どの様にすれば、核の拡散を防止できるか?と質問。
核については”精霊(The genie: 童話で人間の姿になって願い事をかなえてくれる。)は、ボトルの外に出てしまった。” 多くの知識があり、そして、害となることを行う誰かが常にいる。難点(chokepoint (コメント:窒息させるポイントでも良いかも?))は、核物質です。それは、人間が直面している根本的な問題です。世界の人口が多くなれば、側にいる人達(neighbor (近所))に害を加えたい人も増えます。核技術は、その様な人達に隣の洞穴に石を投げつける人よりも、もっと強い強力な武器を与えます。我々は、本当に大変危険な世界に住んでいます。そして、さらに危険になってきています。我々は、1945年以来非常に幸運でした。”(バフェット氏)(コメント:第2次世界大戦終了以来)1962年のキューバのミサイル危機の時、世界は核による対立を回避できたことを思い出しました。
1:52 pm: いかに自分が若い人達に経済的な責任を教えているのかを、長々と説明する女性に対して、拍手がおこり(彼女の演説を)中断させる。しかし、女性は(話を)止めずに続けていると、さらに大きな拍手がおこる。ウォーレンは、彼女に彼女の質問は何かと聞く。彼らが学ぶことを手助けするのに、何か他にすべきことはあるのか。(コメント:と言うのが彼女の質問だった様です。)バフェット氏は、今からそのクラスを集めることができると語り、「あなたができる最も重要な投資は、あなた自身にあります。良い習慣を若い内に身につけることです。」と助言。
1:56 pm: シカゴから来た9才の質問、バフェット氏が、その子が好きなシカゴ・カブスをSam Zellから買い取りたいか?そして、野球は良い投資か?観衆から大きな笑い。
バフェット氏は、テレビが(試合の観客を)球場から広げることによって、 野球のチームは良い投資となっている、と回答。バフェット氏は、質問者の年齢の時、自分は最終的には野球のチームを買おうと思っていた、でも、いまはそう思っていない、と答える。
2:04 pm: 質問:なぜ、アメリカ人はお金をもっと節約しないのか?
回答:この国は、あまりお金を節約しないかもしれない。なぜなら、お金があまりない国に比べて、節約する必要がないからだ。
2:09pm: 個人住宅が(余波を送り出し)引き金となった似た様なクライシス(危機)は、バフェット氏の人生の中で思い出すことができない、と語る。しかし、彼はその題目のバリエーション(派生版、変化版)は多く見てきている。これらのお金持ちになろうとする、そして、歯の妖精(tooth fairy)を信じようとする根本的な衝動(駆り立てる力)が存在します。(バフェット氏)
「それは、特に馬鹿げた混乱です。インターネットを使用して日用品の配達を行う、と言った本当に馬鹿げたものの方が、住宅ローンの混乱で起こったことよりも、まだ賢いくらいです。」(マンガー氏)
2:14 pm: バフェット氏とマンガー氏は、簡素なテーブルの両側に座っており、アリーナの角に当てられたスポットライトに照らされています。彼らは、まだ元気です。記者席、こちらでは、タイプし続ける100人程のレポーター達の間で、疲労の兆候が出てきています。
中略
2:20 pm: 米国での自動車の人気は、国内での大衆の移動手段(例えば、電車やバス等)の拡大の実現を非常に困難にさせている。それは、人間性によるものの(に起因する)様です。 (The popularity of the car in the U.S. makes expansion of mass transit in the country very unlikely. “It seems to be human nature.”)
2:22pm: 質問:クレジット・デフォルト・スワップ(CDS: credit default swap)の市場は、サブプライムに続き次のファイナンスの危機となるか?
バークシャーは 会社が倒産することに対して、事実上の保険として裏書きすることで、 その市場で事業を行っている。Federal Reserveが、Bear Stearnsが崩壊することを防止するため介入したことが例となる様に、問題(CDSによるファイナンス危機)が発生するとは思っていない。Credit Defaultは、変動が非常に激しい状態が続いている、しかし、今までの時点までで、それが問題を引き起こしてはいない。Fedが介入する用意がある限り、システム上のリスクとはならないと思う。いくつかの企業は、巨額の損失を被るかもしれない、しかし、どこかの誰かは、大きなお金を稼ぐであろう。(バフェット氏)(コメント:反対のポジションをとっている人は、巨額の利益を手に入れる。)
CDS市場において、愚行がある。しかし、住宅ローン市場ほどではない。「廃れた町の片隅にいた浮浪者達を追い出して、住宅ローンをもらう様なものだ」マンガー氏。
(マンガー氏のこの発言の原文部分:”bums were swept off skid row and given mortgages.”, skid rowは、a run-down part of a won frequented by vagrants, alcoholics, and drug addicts.)
(blog記者のコメント:チャーリーは、(今回のセッションで)たくさんの馬鹿げたことを話している様です。)
2:32 pm: 12才の質問:なぜバフェット氏は、Ben Grahamの導いた配当を導入しなかった(受け入れなかった)のか?
バフェット氏の答:冗談で、自分なりの何かをしなければいけなかったから。続けて(きちんとした)説明。See’s Candiesの様なバークシャーの子会社は、過剰な現金を産み出している。しかし、それを(得られた現金を)、配当として株主に支払うのではなく、会社内の他の分野に割り振っている。なぜかと言うと、会社(バークシャー)は、そのお金をうまく運用することができ、それによって、配当(の場合それ)に対して税金を納めることになる株主に対して長期的に利益をもたらすことができるためである。
(コメント:12才の子の質問とは驚きました。)
2:38 pm: 質問:バークシャーは、中国またはインドにおいて、大きな事業(ビジネス)の購入を検討しますか?
バフェット氏の回答:米国を除いた場合、どの国においても大規模な買収を行う可能性は非常に低い。多分、小さい会社を買うことはあるでしょう。(ただし)どの国であっても、大規模な買収(の案件)を除外する訳ではありません。(コメント:確率は低いが、もし良い投資案件があれば考慮する、ということだと思います。)
2:40 pm: 質問:投資と人生(生き方)において、誰から最も影響を受けましたか?
バフェット氏の回答: 最も影響を受けたのは、父親。後は、Ben Graham, Dave Dodd,...チャーリーは、Ben Franklinから多くのことを学びました。両親は、非常に重要な先生で、何を言ったかではなく、何を(実際に)行ったかで多くのことを教えてくれます。
(コメント:自分にとっては、非常に印象深い言葉です。)
マンガー氏は、学び方は人によって異なる。(違う方法でも人は学ぶ)彼は、たくさんの本を読むことで学んだ。
2:46 pm: 経営者への過剰な支払い(給料) バフェット氏は、“大きなかつら(big wigs)”は、当惑させられることを好みません。ですから、株主達は、過剰な支払いを見た場合、遠慮せずに声を大にして言うべきです。そして、プレスが残りの仕事はしてくれます。
(原文:“big wigs” don’t like to be embarrassed, so shareholders should speak up when they see excesses and the press will do the rest.)
バフェット氏は、その様な行動をとることは、株主にとって困難だった、と付け加えました。
2:49 pm: 「ハイ・ランキング・エグゼクティブ(高い地位にいる経営者達)は、過剰なお金を得るべきでない、 道徳上・倫理上の義務(“moral duty”)がある」(マンガー氏)
2:51 pm: 質問: どの様にして、会社の競争における優位性(competitive advantage)が持ちこたえられると分かるのですか?特に、製薬会社の”パイプライン上にある(開発中の)(“in the pipleline”)製品等については、評価することが困難です。
バフェット氏の回答:単独の製薬会社が将来的にもうまく行くかどうかを見極めることは困難です。しかし、グループとしては長期的にはうまくいくことでしょう。我々は、製薬会社に関しては、一社ごとに選択することはしません。
2:54 pm: 「中国の人々は、彼らの将来性を悟りつつあります。(気づきつつあります。)」
(コメント:バフェット氏の発言の様ですが、不明)
2:58 pm: バフェット氏は、今から20年後のバークシャー・ハサウェイが、その企業文化-良い経営者達が彼らの労働寿命の残りをそこで働きたいと思う場所であり続ける-を維持していることを望んでいる。それと、(その時に)世界の”最も年を取った現役の経営者”をしていること。(がバフェット氏の望み)
観客は、総立ちで拍手を送りました。それで、Q&Aのセッションは終了となりました。
3:10 pm: 休憩後、バフェット氏は、正式なアニュアル・ミーティング(年次株主総会)を開催しました。それは、まったく通常の流れです。
3:15 pm: バフェット氏、マンガー氏、他の取締役達は再選され、ミーティングは解散となりました。
(引用・邦訳終わり)
(後記)
どうも、このQ&Aセッションがアニュアル・ミーティングの目玉の一つの様です。時間のかけ方からいっても、そのことがうかがわれます。メディアのヘッドラインもこのセッションの中からのものが多く、今回は特にこれと言うよりも多種の話題があり、メディアによって取り上げている部分が異なる様でした。(とCNBCでも書いてあります。)
様々な質問に答えるバフェット氏とマンガー氏、面白い質問もあり、回答も興味深いものがありました。質問者に子供もいたりするのに驚かされました。ビジネスの世界、ファイナンス業で成功している人の中には、(当然のことながら)かなり教育熱心な人もいて、子供の頃から投資の教育をする家庭も少なくない様です。
バークシャーの第1四半期の結果は、長期のデリバティブの現時点での含み損を考慮したため、大幅な減益となりましたが、それについての目立った質問、討議はなかった様です。(少なくともQ&Aのセッションにおいては)バークシャーの株主達は、十分にその理由を分かっていることの表れなのかな?と推測しています。正直、ちょっと意外でした。
先ほど(米国時間の日曜日の午後)、記者団とのニュースカンファレンス(プレスカンファレンス)が行われた様です。こちらの方も、CNBCに載っています。内容を読んで、おもしろい内容でしたら、こちらもアップします。(する場合、多分明日)
今回は参加できなくて残念と思ったのですが、CNBCのブログのおかげで随分、雰囲気はつかめました。
このエントリーが皆さんのご参考、お楽しみにもなれば、幸いです。