(日本時間の14日の午後3時前頃に本エントリーの後半部分(線で区切られている下の部分)を追加しました。)
"Ask Warren" CNBC バフェット インタビュー (1-2)からの続き
Quick:でも、これは、あなたが想像されていたことでも、最悪のケースのシナリオですよね。何が、間違っていたのでしょうか?なぜ、我々は最悪のケースのシナリオに陥ってしまったのでしょうか?
Buffett: そうですね。我々は元々間違った方向に進んでしまっていたのです。なぜなら、我々は全ての人が信じてしまっていたこと、私も、政府も、住宅ローン供給ベンダーも、その借り手も、メディアもそう信じていた事、全ての人が家の価格は上がり続ける---または、最低でも大きく下がる事はありえない、と考えていた事です。そして、一旦人がその様なことを信じてしまうと、それは、国内中に広がります。
(コメント:この点については、日本のバブルがまさにそうでした。日本の場合は、家ではなく、土地でしたが、基本的には同じだと思います。)
あなたが貸している家で何があっても別に問題はありません。もしも、借り手が払えなければ、あなたは家を売って利益を得るだけです。または、大損をする様なことはないでしょう。ですから、借りている人々の収入が本当のところいくらであるのかは重要ではなくなった。なぜなら、家自体の価格はあがるはずだから。このセオリーの元に11兆ドルの住宅ローンの負債が組まれたのです。そして、それ(セオリー)が崩れた時、そしてピークで22兆ドルになっていたかもしれない家の価値は4または5兆ドル少なくなった。それは、人々の資産から非常に巨大な額が失われました。家は、ほとんどの人にとって最も大きな資産です。そして、次にそれを元に作られたこれらの投資商品、人々が理解できないもの、は価値が様々な意味でひっくり返り、そして他のものへと波及して行きました。、それは、皆さんご存知の、ある子供が「王様は服を着ていない(裸だ)」と言った様な事です。そして、彼がそのことを言った後で、その子供が「しかも、王様は下着もつけていない」と言った様なものです。ご存知の通り、様々な層がかかわり合って、そして関わり続けているのです。人々が恐怖を憶えた時、彼らは購買の習慣を変えます。彼らがたくさんのものを買うのをあきらめた時、人々は(物を買うのを)やめます。我々は、非常にたちの悪いネガティブ・フィードバック・サイクルにいます。それはいつか終わります。しかし、お分かりの様に、私はこれを映画の最後の台詞にしたくありません。私のアニュアル・レポートの最後の台詞(行)は、アメリカの最良の日はこの先にある、です。そして、我々は、なぜそうなのかについて、話す事ができます。でも、それが最後の(結局の)答えです。
しかし、どれだけ早くそこにたどり着けるのかは、賢明な政府の政策だけではなく、どの程度適切にそれが伝えられるのかに大きく依存します。人々は、もしあなたがパールハーバーを所有していたとして、12月8日に、どの様なことが起ころうとも対処する様に国が団結することを知っていなければなりません。(注:ご存知の方も多いかと思いますが、12月8日は、パールハーバー襲撃後、米議会が日本に対して宣戦布告を承認した日です。)
そして、我々はつまらないことで少し言い争っています。そうでなければ、我々はそれらのことは脇に置いておいて、全員で防御の計画を立てます、飛行機の製造を開始します、船の製造を開始します、それらは明日に用意ができなくても、人々は参加します。軍隊は、パールハーバーにあまりにも多くの船を配属しすぎた、その様な事は起こるべきでなかった、と海軍を非難したりしません。軍隊は、「それはあなたの失敗です。だから我々は我々の兵士を送りません。」等とは言いません。その様な事は決してありません。我々は団結すべきです。そして、今、それが本当に必要です。
(コメント:日本人としては、真珠湾攻撃の話の例は、ちょっと抵抗感がありますが、主旨としては、問題に対して、誰か、あるいは会社、組織、(政府の)部署を批判するのではなく、一致団結して、この問題に対処すべきだと言う事だと思います。現実には、共和党は民主党との対決姿勢を強めていたり、この問題がなぜ発生したのか、誰のせいだ、と言った論議が少なからずあるので、それらに対し、バフェットさんはコメントしているのだと思います。)
Quick: その様にはなっていないとお考えなのですか?現在、十分に団結していない、とのことですか?
(日本時間の14日の午後3時前頃に以下を追加しました。)
Buffett: はい。私は―私はなぜだか分かります。なぜかと言うと、経済的に言ってパールハーバー自体として、何が起こって、どの位の艦船が失われた、そしてそれらの全てについて、人々は何をすべきだったのか、全権を掌握し、命令を下すリーダーが誰なのか明白で、その人に対して誰が伝えるべきだったのかを知っています。そして、12月8日に議会で聴聞会が始まる等と言う事はありません。ご存知の通り、聴聞会は何週間もかかり、その間に、軍隊ともろもろの人々は、様々な方法でさらし者にされ、あるいはなじられ、または、なぜこの様な事が起きる事を防げなかったのかについて等々、そして、共和党の人達は、「あなた方民主党員達は、1933年から参加していて、全てはあなた方の間違えです」と言ったりはしません。今言った様なことは一切ありません。つまり、人々は、「我々はその事をやり遂げなければならない。」 そして、彼らは彼らのリーダーが行う事を信じ、党派色の強い事柄については脇に置いておいて、ついてながら言うと、我々、全ての人が戦争に勝つと感じていました。最初の6ケ月間、フィリピンのコレヒドール島が陥落し、ルソン島で戦死者が出てきて、とんでもない様々な問題、悪いニュースがあったとしても、それでも、一緒になって、リーダーに従えば、何とかうまくやり抜ける事をわかっています。
(注:昨年から、かなりの頻度で、様々な関係者が議会に呼ばれ聴聞会が行われています。その場で、議員達から辛辣な質問を受けている事について、ちょっと皮肉を込めて例えていると思います。また、オバマ大統領の景気刺激策に対しても、共和党議員が反発、批判を強めている事にたいしても、その様な状況ではない、と言う事を暗に示唆しています。対立点等はひとまず脇において、大統領の元に皆で一丸になって取り組めば、かならず問題は解決し、結果的にうまく行く、と言う意見だと思います。)
Quick: 我々は、本日の朝、解決策についてお話しする時間をたくさん取ろうと思います。しかし、経済について、あなたは今の状態からどの様になるとお考えですか?何がベストケースのシナリオで、何がワーストケースのシナリオですか?
Buffett: そうですね。10セントで、状況が好転する事はありません。そんなことは起こりません。つまり、多くの事柄はその様なことです。60万人を超える人が先月失業しました。そのことは、それら60万の人が悪い影響を被るだけでなく、それ以外の全ての人に影響を及ぼします。彼らは、職を失う事を恐れます。この国において、失業を恐れている人の割合は、職を失う実際の数よりもはるかに多くなります。そして、今までとは全く異なった振る舞いをしています。Costcoまたはウォールマート(両方とも安売りの大手で有名)ですら宝飾品売り場は大幅に落ち込んでいます。しかしそれ以外の売り場は順調です。
(注:今週の発表されたニュースで、2月のウォールマートの販売は非常に良かったとの事です。特に、キッチン・カウンター用品(トースターとかジューサー・ミキサー等、調理器具のこと)の販売が好調だった様です。これは、消費者が外食を減らし、自宅でもっと料理を作る様になった事の表れだとの、市場の認識です。)
人々はお金を節約し始めました。何年もの間、我々は彼らにお金を節約する様に言っていました。そして今、かれらは節約しています。それが、2重の魔法です。それで、我々はこの偉大なエコノミック・マシーン(注:米国経済機構の事、通常非常にうまく機能している)が世界が今まで見た事のない、異音を発して支障をきたし出し、そして、我々は、「ちょっとスピードをゆっくりにして、様子を見ましょう。」と言ったのです。そして、その異音は更に大きくなっています。そのマシーンをゆっくり動かせば動かす程、さらに異音・不具合を生じると言う、相互作用を我々が認識していないからかもしれません。ですから、やることは、それをもう一度動かす事です。それは、すぐには起こりません。ベッキー、つまり、失業は実質的な回復より遅れます。
Quick: 既に失業率は8%になっています。この先どちらに向かうとお考えですか?
Buffett: (具体的な)数字を示す事は私にはできません。なぜなら、率直に言って、それは、政府の政策がどの程度賢明な(適切な)ものなのかによるからです。失業率は更に高くなる事でしょう。恐らく、相当高い所まで行くでしょう。しかし、一方で今から5年後、そのマシーン(米国の経済機構・システム)は正常に機能している事でしょう。しかし、私は5年よりももっと早く、その様になってほしいと思います。我々はそれができます。
(注:バフェットさんは、5年後には問題は解決して、経済は正常に機能するだろうと見ている様です。つまり、日本のバブル崩壊後、10年以上経済が立ち直らずに停滞するシナリオは考えていない様です。もっと早く正常に機能させる事が可能だと言うのが、バフェットさんのメッセージだと思います。)
Quick: Joe (Kernen), ここであなたも加わって、何かおっしゃりたい事はありますか?
Kernen: バフェットさん、今、あなたがおっしゃった事は興味深い事です。我々の政策が賢明な(適切な)ものであるかによるとおっしゃいました。戦時中は、全ての人は、司令官と長官の元に集まるべきと言う事は分かります。しかし、現在の状況から脱出するために行うべき賢明な政策について、明らかに意見の相違があります。今、その“忠義な反対(陣営)”は、大統領を支えようとしようとしています。しかし、もし、間違った考えの政策が、もしもこの危機のために、今の時点で大急ぎで法制化されてしまうと思ったら、それは、忠義のある反対陣営の努めとして、どの様に考えているかを言うべきだと思うのですが。どうでしょう?
(注:Kernen氏は共和党支持だと思います。実際、共和党議員の間では、オバマ大統領の進める景気刺激策に対しては、強い反対意見を示しています。)
Buffett: それはその通りだと思います。ジョー、もし、あなたが戦場にいて、我々が本当に経済戦争の状況下にいる場合、少数陣営(意見)に対してたきつけたり(反発をあおる様な事)しない様にふるまう事が、多数陣営(意見)の義務です。もしも12月8日に、あるいは、7日かもしれません、ルーズベルトが、開戦についての投票を行うために議会を招集した時、彼は、「私のお気に入りの約10のプロジェクトを投入します。」等とは言いません。1941年の会戦の宣言に議会の人に8000の耳標を付けさせたりしません。
ですから、私は、少数陣営は、戦う上で大きな方法として明らかに作成された事柄については、支持する義務が本当にあると思います。6月5日または6月1日かもしれませんが、D-Day(注:Depression)の前に聴聞会を行ったり、戦力をどこに投下するのか、どんな天候ですべきなのか、何人の兵士を投下するのか、等全ての事について、533人に彼らの意見述べさせたりすべきではない、と思います。6月6日の後、「1マイル北に投下していれば、、、」と言われたりする別の聴聞会を行うべきではありません。
Kernen: それはそうです。しかし、問題を解決できないかもしれない、、、
Buffett: しかし、私は、、、
Kernen: ウォーレン、D-Dayの後に、グローバル・ウォーミングを解決できていないかもしれないです。
Buffett: 完全にその通りです。共和党陣営は、これが経済戦争であるとみなす、指導者は一人であるべきと認識する、そしてそのことを支持する義務があると思います。私はオバマ氏に投票しました。そして私は彼を強力に支持しています。私は彼が適切な人物であると思っています。しかし、民主党陣営は、この重要な疑問について一致を求めて、それを使って、共和党陣営を押しつぶすべきではないと思います。
Kernen: ふむ。
Buffett: 多くの事ですべき事は、第一の仕事は、経済戦争に勝つ事だと思います。第2は、経済戦争に勝つ事、そして、第3、。多くの事を全て彼らののどに詰め込もうとしたら、人々はあなたの元に結束することにはならないでしょう。ですから、私は、この問題が解決するまでのしばらくの間(当面、一時的に)、ご存知の通り異論のある多くの事柄について押し進めなるべきでない、と絶対に思います。そして、同様に何かについて指を指したり(非難の矛先を向ける)すべきでない。ご存知の通り、’George’--一つ前の大統領陣営が我々をこの様なところに陥れたなどと言ったりすべきでありません。忘れるべきです。ご存知の通り、海軍は真珠湾で失敗をした、あまりにも多くの船をそこにおいていた。しかし、海軍に対して非難の矛先を向ける事について考えてみれば、海軍が必要である事を認識します。ですから、私は、指を指したりしない、復讐をしない、その様なことは何もしない。ただ、前を見るだけです。
これで、"Ask Warren”の第1弾は終わりです。長いインタビューなので、一旦ここで休止します。正直、口語的な表現で重複した言い回しや、分かり辛い喩えもあり、訳するのに困った部分もありました。また、真珠湾の喩えは、日本人としてはちょっと、抵抗感をおぼえてしまいます。
しかし、バフェットさんのポイントは、この問題に対して、一致団結すべきだ、と言う事を強調していることだと思います。確かに、昨年から、米国内では、なぜ、この様な酷い状況になったのか、誰のせいだ、と言う論議・指摘が盛んに行われています。また、議会にグリーンスパン議長や、破綻したBear Stearns, Lehman Brothersのトップ、主要ヘッジファンドのトップ、SECのトップ、等を召還し、聴聞会が盛んに開かれていました。個人的には興味深いものも多々ありましたし、失敗を繰り返さないためにも原因の究明や調査を進める事に対しては賛成の意見です。尚、この聴聞会自体も、一般に公開されていて、ビデオも見れる様になっています。機会があれば、いくつか取り上げたいと思っているものもあります。バフェットさんのポイントは、もしかするとこの聴聞会の方ではなく、今年に入ってからのスティミュラス•パッケージを巡るやり取りの方に焦点を当てている様な気がしますが、"No finger point"と言う点を強調しているので、聴聞会の件も含まれていると解釈しています。
今週のJPMorgan Chase CEO Jamie Dimon氏もオバマ氏の元に、業界は一致団結し、大統領を支えるべきだとのスピーチがありました。議会、市場、業界等の動きとしては、バフェットさんが提言している様に、ここにきて米国が一致団結して、オバマ大統領の元でこの問題に取り組むべきとの動きが出てきている様に思えます。最近の市場関係者の発言や動きを見ていると、ここでのバフェットの話と不思議と結びつくところがあり、面白く感じました。
この後は、バフェットの手紙のエントリーを再開する予定です。