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バフェットからの手紙 (8)- 2008年版 

バフェットからの手紙 (7)- 2008年版 の続きです。)

しかしながら、クレイトンの198,888人のローンの借り手は住宅市場の崩壊の間も普通に支払いを続けています。予期していない損失はありません。これは、これらの借り手が普通ではないくらい信用できるからではありません。この点は、FICOのスコア(クレジット・リスクの標準的な基準)からも証明されています。(コメント:FICOと言うのは、消費者の支払いの信用度をスコア化したもので、米国では非常に普及しています。)

全米の中央値は723に対して、彼らのFICOスコアの中央値は644です。そして、約35%は、一般に“サブプライム”に位置付けられる620よりも低いです。多くの悲惨な一般の住宅ローンの集まりは、FICOスコアではるかに良いクレジットに位置付けられる借り手達によって構成されています。

年末までの時点で我々が現在発行しているローンの延滞率は3.6%です。これは、2004年の2.9%, 2006年の2.9%から若干上昇しています。(我々が発行したローンに加えて、他の金融機関の様々なタイプのポートフォーリオのかたまりを我々は購入しています。)クレイトンの08年中に発行したローンのフォークロジャー(担保権執行)は、2004年の5.3%, 2006年の3.8%に対して、3.0%です。

なぜ我々の(ローンの)借り手 – 特徴として、それ程多くない収入と非常に良いからかけ離れたクレジットスコアを持つ人々 – は支払い状況が良いのでしょうか? その答えは、貸し付けの基本原則(Lending 101)に立ち戻った基本的なものです。我々の借り手は、住宅ローンの支払額の全体が彼らの実際の – 望んでいるものではく – 収入と比べてみてどうなのかを、単に見る。そしてその約束を続けて行く事ができるか判断しただけです。住宅価格の動向が何であれ、彼らは借入金を全額払う意思を持って住宅ローンを選択しているだけです。

我々の借り手達が行った事、行わなかった事が重要な点です。かれらは、ローンの支払いを借り換えによって行う様な事を充てにしていませんでした。彼らは、リセット時に彼らの収入に対して過大となる”teaser”レートを選択していません。(注:teaserレートは、住宅ローンの支払いの初期一定期間非常に低い金利を適用する住宅ローンのオプションです。数年前まで、大変流行していました。)

もちろん、(この先)我々の多くの借り手も問題を抱える事になるでしょう。彼らは、一般的に、困難・不幸な状況(職を失う等)に陥った場合に、すぐに使い切ってしまう程度のほんの少しの蓄えしかありません。死、離婚そして医療費の支払い等全て問題を引き起こしますが、支払いの遅延や破綻(抵当権施行)の主な原因は失業です。もし、失業率が上昇したら – 2009年確実に上昇する事となる様に – 更に多くのクレイトンの借り手達は問題を抱えることになります。そして、我々は更に大きくしかし依然として対処できるレベルの損失を被る事でしょう。しかし、我々の問題は、住宅価格の動向によって生じる・影響を受ける様なものではありません。

現在の住宅クライシスについてのコメントは、ほとんどの破綻(フォークロジャー:抵当権施行)は、住宅の価値が住宅ローン (いわゆる、”upside-down”ローンと呼ばれる)よりも低くなったから発生するのではない、と言う重大な事実をしばしば無視しています。むしろ、フォークロジャーは、借り手が合意した月々の支払いを払う事ができないために、起きています。借金からではない、貯金(蓄え)から意味のある(必要十分な)頭金を既に入れている住宅所有者は、単に現在の住宅の価値が住宅ローンよりも少ないからと言って、住んでいる家から立ち去る事はほとんどありません。

住宅の保有は素晴らしい事です。私の家族と私は、50年間住んでいる、そしてこれからももっと住み続ける現在の家(での生活)を楽しんでいます。しかし、利益や借り換えの可能性ではなく、楽しみとユーティリティが購入の基本的な動機であるべきです。そして、購入する家は、購入者の収入にあったものであるべきです。

現在の住宅破綻は、住宅購入者、貸し手、斡旋者、そして政府にいくつかのシンプルなレッスンを教えました。そのことが、将来の安定化を確実にすることでしょう。住宅の購入は、神に誓う正直な最低10%の頭金と借り手の収入で問題なく支払う事のできる月々の支払いが伴うべきです。その収入は、注意深く検証されるべきです。

人々を住宅所有に導く事は、望ましい目的(ゴール)ではありますが、我が国の第1の目的であるべきではありません。彼ら(国民)を彼らの家に居続けさせることは、大きな望みです。(コメント:原文では’the amibition’。Ambitionは英英辞典での意味は、’ a strong desire to do or to achieve something, typically requiring determination and hard work’ 原文のままの方が雰囲気が良く伝わる気がします。)



原文:Warren Buffett's Letters to Berkshire Shareholders, 2008

更新が滞り、お楽しみにされていた方、本当にすみませんでした。実は、今日病院に行き(小規模な)手術をしてきました。まだ、体調は良くなっていないのですが、今後は、パソコンに向かう時間もここ1週間に比べ取れる様になると思っています。(先週末から体調を大きく崩してしまっていました。)

バークシャーの株主総会は今週末なので、残念ながら、「バフェットの手紙」日本語版シリーズは総会前までに終了する事は現実的に無理の状況となってしまいました。総会開催中は、昨年の様にCNBCがBlogで実況中継等を行う場合は、このブログでも同様にその邦訳を中心にカバーしようと思っています。

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