本日のWall Street JournalのMoney&Investingに
What Could Topple Bulls’ Wall of Worryと言うタイトルの記事が掲載されています。この記事は、現在の市場の不安要因に関して、よくまとめられており、現状を把握と再認識する上で、非常に良い記事と思い、本日のエントリーで取り上げたいと思います。
Wall of Worryについての説明は、Investopediaによると以下の通りです。
A phrase used to describe a bullish market trend occurring in the face of negative uncertainties.
否定的な不確定要因に直面しながら、強気のマーケット・トレンドが起きていることを、示す言い回し(慣用句)
使い方としては、Stocks climbing a wall of worryという様な形でよく使われます。それと、
一つ前のエントリーの中にも、'Stocks Climb a Wall of Worry'について書いてありますので、そちらも良かったら参照して下さい。
このWSJの記事は、米国の株式市場は、いくつかの不安な材料を抱えながらも、過去最高の記録を更新し、上昇を続けている現状を捉えて、書かれたものです。
以下に記事の引用とその要約、そして私のコメントを付加しております。
“The stock market is again living up to one of Wall Street’s oldest sayings. It is “climbing a wall of worry”-rising to record heights despite deep worries that any one of several risks could send it tumbling.”
株式市場は、再び昔ながらのウォールストリートの言い伝えの(格言)の一つの状況におかれています。それは、「心配の壁を登る」-いくつかのリスクの内の一つでも起きれば、一気に下落へと向かう様な深い懸念を抱えながらも、記録的な高値を更新中です。
(WSJ)
“The “wall of worry” idea is that stocks can still flourish when people are nervous. Skeptics hold money on the side-lines. As their fears are alleviated, they put money into stocks, pushing the market higher. The market keeps climbing only if worries are held in check. Here are some of the main concerns and what it could take for them to knock the market down.”
“wall of worry”の考えは、投資家が心配している時(状況)でも、株(式市場)は順調に上がっていくことを、指しています。懐疑的な投資家は、お金をサイド‐ラインに(脇に)おいて様子を見ています。不安が緩和されると、その投資家達は、お金を株に投資しだします、それが市場をさらに上げるのです。市場は、心配・不安が抑制された場合にのみ、上がり続けます。以下に、(現行の)主な不安要因についてと、それが、如何に市場を下落させることになるかについて、書きます。“
(以下、WSJの記事の一部を引用しますが、割愛している部分が少なからずあります。よろしければ、是非、原文を読まれることをお勧めいたします。)
High-risk investments: The biggest fear now is that some risky corner of the market could blow up.
リスクの高い投資: 最大の不安は、窮地にある危機的要因に火がつく。
(これは、サブ・プライムローンに関連する問題が顕著になることに関してです。現状、楽観的な見方としては、住宅ローン市場全体から見た場合、サブ・プライムローンの比率は小さく、景気全体に影響をもたらすことはない、と言う考えで、これが、今の時点で、大方の見方となっている。一方、この見方に対して、懐疑的で、サブ・プライムローンの問題が他の、ハイリスク・ボンド等に飛び火するのではないか、といった見方をする人たちもいます。詳しくは、WSJの記事を参照してください。)
Global growth: Strong global growth sustained by a U.S. consumer who refuses to stop spending, and by strong growth outside of the U.S.
グローバル・グロース: 現時点では、米国の消費者の購買意欲は、引き続き非常に強い。また、中国、インド、ヨーロッパといった地域の経済は強い伸びを続けている。しかし、ガソリン価格の高騰、不動産市場の低迷といったことが、消費者の購買意欲に影響を及ぼすのでは、といった不安がある。
Earnings: Investors now widely expect Q2 corporate profit reports to surpass analysts’ lowered expectations of low-single-digit growth.
投資家達は、今週から始まる第2四半期の決算発表に関しては、アナリストの(保守的な)数字を一ケタ台の伸びに落とした予想を、上回る好決算を見込んでいる。 (WSJの記事の内容をまとめて、簡略・意訳したものです。詳しくは、WSJの記事を参照してください。)
Inflation: Investors are counting on mild inflation. That’s a combination widely known as a Goldilocks economy – not too hot, not too cold. Inflation fears knocked down stocks this spring. The worries pushed the yield of the benchmark 10-year Treasury note, which is sensitive to inflation, to 5.25%, a multi year high.
投資家達は、軽微なインフレになることを当てに(期待)している。それは、ゴルディロックス経済と呼ばれる、景気が過熱するでもなく、冷え込むのでもない、ほどよい経済成長を期待している。インフレに対する懸念が、この春に、株価の下落をまねいた。その心配が、インフレに敏感に反応する10年満期の米国国債の利率を、ここ数年の中で最も高い、5.25%に引き上げた。
しかし、価格変動の激しい、食品と光熱費を除いた“コア”インフレーションの値は、米連銀が望む年2%に近いところまで戻しています。懐疑的な見方としては、食品と光熱費の高騰が他の物価を引き上げることになることを、懸念しています。しかし、今の時点では、債券市場は、それ程懸念していないようです。10年満期の米国国債の利率は、5%に近い値で、懸念を和らげてい、ます。
The weak dollar: The dollar has been trading around a record low against the euro and a 26-year low against the pound.
ドル安は、国際的にビジネスを展開している会社の利益を引き上げています。そして、米国産の商品を、より競争力のある現地価格で提供することを可能にしています。しかしながら、このドル安の状態は、(低い米国債の金利にもかかわらず)、中国と日本が、米国債を買っていることに頼っています。もし、これらの国々がドル安による投資に不安を持ち、ユーロ等への分散投資をさらに行った場合、株や米国債に対する需要が急落することになりかねません。(日本に関しては、このシナリオの可能性は低いと思います。)
分散投資の流れが、ユーロ高に対する貢献をしていますが、現時点で、海外の米国株とボンドに対する需要は、依然として強いものがあります。
Liquidity: Liquidity-the cash available to investors has been one of the market’s main drivers. Liquidity is created in part by low interest rates, by a booming world economy and by big dollar-denominated trade surpluses in the Middle East and Asia. (以下、割愛します。PEのブームにも触れており、原文を読まれることをお勧めします。)
投資家に対する資金の入手の容易性は、市場のメイン・ドライバーであり続けています。これは、低い利率や、全世界的な好景気、そして、中近東とアジアでのドル建てでの貿易黒字が生み出したものです。
(WSJの記事には書いてありませんが、この様な状況が続くのかが、不安要因だと思います。)
As long as interest rates remain low, no more huge investment funds blow up, foreigners keep funneling money into the U.S. and the consumer doesn’t stop spending, the thinking goes, liquidity can keep pushing stock higher.
金利が引き続き低い状態である限り、これ以上のファンドの大きな問題が発生することはなく、外国人は引き続き、アメリカにお金を注ぎ込み、そして、消費者は、購買をやめなければ、流動性資金は引き続き、株を押し上げていくだろう。Source:
What Could Topple Bulls’ Wall of Worry
WSJ(米国版), July 16, 2007; Page C1
(WSJ引用・要約終わり)
よくまとまっていると、思います。 しかし、私は、これだけいろいろな問題を抱えて、それらが今の時点では何とか抑えられている、と考えています。これらの問題が今後も抑えられる保障はなく、むしろ、何かのきっかけで、今抑えている状況が、崩れる可能性は少なからず、あると思います。
WSJの記事では、上記の結論(フォントに色をつけている部分)で締めくくっていますが、私は、かなり危ない状況になっており、いつトレンドが逆転してもおかしくないと思います。
ただし、私の投資のポジションに関しては、昨日のエントリーで取り上げましたが、Dennis Gartman氏のルールに従っています。
6. "Markets can remain illogical longer than you or I can remain solvent," according to our good friend, Dr. A. Gary Shilling. Illogic often reigns and markets are enormously inefficient despite what the academics believe.
我々の友達のゲーリー・シリング博士によると、「市場はあなたや私が思うよりもずっと長くロジカルでない(論理的ではない)状況が続くことができる」とのことである。市場が非論理的な状況が続いたり、学術的な見地と相反して非常に非効率的である場合が多くある。
(長い文章にお付き合い下さいまして、ありがとうございました。)
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