サブプライムローンの問題が広がりを見せようとしています。サブプライムローンの一つの大きなリスクは、与信の問題もあるのですが、他にもやっかいなことがあります。
それは、インタレスト・オンリーと呼ばれるローンで、サブプライムローンの選択肢の一つです。このローンの特徴は、一定の期間、利息のみを払うだけで良いと言うローンです。インタレスト・オンリーの期間は通常3~10年で、この期間内は、月々の支払いが非常に少なくすみます。一方、インタレスト・オンリーの期間終了した場合、月々の支払いは、大きく上がります。
私の以前の
サブプライムローンのDMを紹介したエントリーで、月々の支払いの例で、融資額に対して、支払額が非常に低いことを宣伝しています。
例えば、25万ドル(1ドル122円で換算して3050万円)を借りて、月々の支払いが644ドル(同レート換算で、約7万9千円弱)。
つまり、“3000万円のローンを組んで家を買って、月々の支払いは、8万円以下”
と言うのは、ちょっと話がうますぎますよね。これはインタレスト・オンリーを利用しているものと推測されます。(紹介例には具体的な説明がありません。) 日本人の感覚だと、ちょっと話がうますぎて、警戒すると思いますが、米国では、これは、れっきとした住宅ローンの一つのオプションとして存在します。
このインタレスト・オンリーを利用することにより、一般的には、収入に対して購入が困難な位の高額な物件でも、購入が可能になります。
一つ重要な点は、このインタレスト・オンリーは、サブプライムの顧客だけでなく、通常のプライムローンでも取り扱われています。つまり、リスクの高いローンが幅広く普及していることを意味します。
このインタレスト・オンリー ローンは、期間が終了した時、月々の支払いが大幅に上がるため、返済不能に陥る可能性・リスクは高いものの、その時に住宅が購入した時点よりも上がっていれば、最悪、販売することにより、完済することもできる、と言った考えと、ここ数年の不動産ブームの価格上昇もあって、急速に普及してきました。また、インタレスト・オンリー ローンが、ここ数年の不動産ブームの隠れた牽引力となっていました。
ここにきて、不動産市場の停滞、金利の上昇、そして、インタレスト・オンリーの期間の終了に伴う、月々の返済額の上昇によって、利用者の返済不能が増えてきていると推定されます。インタレスト・オンリー ローンは数年前からはやってきているので、この利用者で返済に窮する人たちは、今後、ますます増えてくることが予想されます。
これは、米国の住宅ローンに関連する時限爆弾で、一部、露見しつつありますが、今後、ますます大きな問題となって表面化してくるのでは、と思います。
(追記:株式や他の投資でもそうですが、インタレスト・オンリーをうまく利用し、レバレッジをかけることで、不動産投資で大きく稼ぐことも可能だと思います。インタレスト・オンリーが悪と言う事でなく、リスクを理解した上で、使いこなすことが肝要です。この問題は、ブローカー等が、リスクの説明を十分にせずに、ファイナンスの知識があまりない顧客層に売り込んでいたことだと思います。)
この話は、実は、新しい話ではなく、昨年くらいから、一部のメディアでは取り上げていました。一つの代表的な例として、ここでは、9月11日のBusiness Weekの記事を取り上げます。
Nightmare Mortgages (Business Week, September 11, 2006)
For cash-strapped homeowners, it was a pitch they couldn't refuse: Refinance your mortgage at a bargain rate and cut your payments in half. New home buyers, stretching to afford something in a super-heated market, didn't even need to produce documentation, much less a downpayment.
現金に窮する住宅オーナにとって、“ローンを組み換えることによって、特別低レートで、月々の支払いを半分にする”と言う宣伝は、拒むことが出来ないものです。 また、加熱する市場で、無理をしてでも購入しようとする新たな住宅購入者は、非常に低い頭金で、且つ書類も必要とせずに、(住宅ローンを組むことが)済みました。
Those who took the bait are in for a nasty surprise. While many Americans have started to worry about falling home prices, borrowers who jumped into so-called option ARM loans have another, more urgent problem: payments that are about to skyrocket.
この誘惑に乗せられた人たちは、今、非常に厄介な驚きに直面しています。多くのアメリカ人が、住宅価格の低下を心配している中で、オプションARMと呼ばれるローンを利用した人々は、急を様子する別の問題を抱えています。それは、支払いが急上昇することです。
The option adjustable rate mortgage (ARM) might be the riskiest and most complicated home loan product ever created. With its temptingly low minimum payments, the option ARM brought a whole new group of buyers into the housing market, extending the boom longer than it could have otherwise lasted, especially in the hottest markets. Suddenly, almost anyone could afford a home -- or so they thought. The option ARM's low payments are only temporary. And the less a borrower chooses to pay now, the more is tacked onto the balance.
オプションARM (日本語で言うと、選択型変動金利ローンかな?)は、今までに考案された住宅ローンの中で、最も複雑でリスクの高いものかもしれません。 魅力的な、最低支払い額によって、オプションARMは、まったく新しい住宅購買層を呼び込み、特に住宅ブームが加熱する地域での、ブームを(本来沈静化するべき時期を)引き伸ばすことになりました。 突然、誰でも家が買える、と思わせたのです。オプションARMの低い(月々の)支払いは、一時的なものでしかありません。 殆どの人は、今(元本を)、支払らわずに、バランス(未返済の元本)に一時的に追加する選択をしています。 (注)。支払いの選択 (利息のみか、元本も返済するか、選べるのがオプションARMの特徴です)
The bill is coming due. Many of the option ARMs taken out in 2004 and 2005 are resetting at much higher payment schedules -- often to the astonishment of people who thought the low installments were fixed for at least five years. And because home prices have leveled off, borrowers can't count on rising equity to bail them out. What's more, steep penalties prevent them from refinancing. The most diligent home buyers asked enough questions to know that option ARMs can be fraught with risk. But others, caught up in real estate mania, ignored or failed to appreciate the risk.
請求書の期限が近づいています。 2004年と2005年に、option ARMsを利用した人々は、高い支払いのスケジュールに設定が変えられています。これは、低い支払いの時期は、最低でも5年間と思っていた人を驚かせます。そして、住宅価格の水準の低下により、住宅ローンの借り手は、(住宅)資産の上昇による(価格が上昇した家を処分することによる)緊急返済の手段を当てにすることはできなくなりました。さらに、高いペナルティ料が、ローンの組み換えを阻害しています。殆どの勤勉な住宅購入者は、option ARMsがリスクをはらんだものであることを、質問することにより知ることができます。(コメント: 多分、日本人の殆どはこちらだと思います。) しかし、それ以外の、不動産の熱に取り付かれた人々は、リスクに対しての考慮を無視、または払わずにいました。
以下、長いので残念ながら割愛します。是非、原文を読んでください。非常に良くまとまっていると思います。
以下、残りを簡単にまとめますと、
Option ARMsで窮する利用者の実例や、この住宅ローンを販売するブローカー(アメリカでは、日本と違って、住宅ローンを組む場合、ブローカーを利用するのが一般的です)は、option ARMを販売する方が手数料を多く得られる(ブローカーが積極的に売り込んでいた。)等の話や、なぜヘッジ・ファンドがからんでいるのか、ファイナンス業界のかかわり等(他の債権と組み合わせて、CDO等にして販売する等)に関しても、まとめて説明しています。 この記事の後に、経営破たんが表明化したNew Century Financialや最近話題のBear Stearnsも登場します。
ちょっと古い記事ですが、今読んでもこの住宅ローンに関連するリスクが良く理解できると思います。
また、
FRB(米連銀)のWebサイトに、このインタレスト・オンリーとOption ARMについて、非常に詳しく親切に説明されたものがあります。 超お勧めです。
時間があれば、こちらの方も取り上げたいと思っているのですが、いつできるのか分からないので、先にリンクだけでもと思い、ご紹介します。 個人的には、FRBは本当にうまく金利の舵取りをしていると思います。それだけでなく、この様なすばらしい内容の情報まで提供しているところに、感銘を受けました。
冒頭にも書きましたが、不動産市場の停滞、金利の上昇、そして、インタレスト・オンリーの期間の終了に伴う、月々の返済額の上昇によって、利用者の返済不能が増えてきていると推定されます。インタレスト・オンリー ローンで返済に窮する人たちは、今後、ますます増えてくることが予想されます。これは、米国の住宅ローンに関連する時限爆弾で、一部、露見しつつありますが、今後、ますます大きな問題となって表面化してくるのでは、と思います。
(長い文章にお付き合い下さいまして、ありがとうございました。)
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