本日、6月の中古住宅の販売結果が発表されました。販売数量は、予想を下回り、年間のペースに換算して575万戸、これは過去4年半の中で一番低い数値とのことです。新規の住宅ローン申請件数は、今年の2月半ばから遡って最低の水準です。在庫に関しては、若干減り、420万戸で、これは8.8か月分の供給に相当し、5月のレベルと同程度とのことです。販売価格の中央値(中間値)は昨年に比べ微増で、これは過去11ヶ月で始めての増加とのことです。
参考までですが、米国の住宅の買い替えのピークは、5から6月です。(学校が終わり、夏休みの間に引っ越す場合が多い。)後、米国の場合、家の買い替えは非常に盛んで、日本における、車の買い替えに近いぐらいです。(日本の家の売買の感覚とは大きく異なります。)極端な場合、住んで1年もしないで、買い換える人もおり、3年以内に売ることも、こちらの常識では普通です。
上記情報で、在庫と価格がほぼ変わらないレベルだったのは、良いニュースだと思います。もし、この二つのどちらか、または両方とも悪買った場合、市場の反応はかなりだったと思います。
しかし、今後も状況は悪化していくと言う見方は変わっておりません。昨日のエントリーで少し述べました、Countrywide FinancialのCEOの話(サブプライムだけでなくプライムにも問題が広がりつつある)はやはりインパクトが大きく、本日のFT(米国版)の一面とWSJでも"Cuunrtywide, Prime Loans Begin to Go Sour"と言うサブタイトルで取り上げています。
以下、関連する話をまとめて書きます。
まず、Countrywide Financialに関してですが、この会社は、米国国内の住宅ローンの最大手です。WSJによると、Countrywideは過去の厳しい状況の中でも安定して利益を出し続けてきた実績があり、昨日の発表にもかかわらず、投資家の信頼を得ている会社とのことです。
この会社のCEOが決算発表時に、以下の様な発言をしています。
"It just takes a long time to change, to turn a battleship around,"
戦艦の向きを変えるには、多くの時間がかかります。
"This is a huge battleship, and it's headed in the wrong direction,"
これは、巨大な戦艦です、そして間違った(悪い)方向に向かっています。
“Looking to the second half of 2007, we expect difficult housing and mortgage market conditions to persist,”
2007年後半を見た場合、我々は、住宅と住宅ローンの難しい(厳しい)市場環境が続くと予想しています。
“I do think it’s important to observe what happens going forward,”
この先どの様なことが起こっていくのかを観測(注視)するのは重要なことだと思います。
”We are experiencing home price depreciation almost like never before, with the exception of the Great Depression.”
我々は、大恐慌の時代を除けば、かつて経験したことのないような、住宅価格の下落を経験しつつあります。
(注).本日発表の中古住宅の6月売り上げ実績では、中央値はあまり変わっていないようですが、これは、全体の場合なので、地域の差もあると思います。私は、CountrywideのCEOの見方のほうがより、現在まさに起きている状況なのではないかと思います。
発言の引用は以上です。以下に、Countrywide Financialの決算での注目される事項に関して取りまとめ、コメントします。
‐ 収益の悪化の大きな要因は、プライムのホームエクイティローンに関わる問題
サブプライムではなくプライムの問題が大きくなっていると言うのが、かなり重要な点です。ホームエクイティローンと言うのは、住宅の評価額(通常はその80%まで)と住宅ローンの残高の差に対して、融資を行うものです。昨今の住宅ブームから、評価額が上がり、それを基に、ホームエクイティローンを組んで、改築や車の購入をする人が増えていました。この傾向は、住宅価格の上昇が激しい(激しかった)地域では非常に顕著な傾向でかなりの人が、これを使って色々なものを購入したり、投資したりしていました。
ところが、地域によっては、住宅価格が下がりだしており、上記CountrywideのCEOの発言を見ると、返済に窮した人たちが増え、中には破綻する人も出てきているようです。また、ホームエクイティローンが米国の消費を牽引してきた部分もあるので、これが事実とすると、他の一部セクターへの悪影響は必至だと思います。
‐ このプライムのホームエクイティローン関連のロスは、第2四半期において、$388M(1ドル120円換算で約466億円)でした。ちなみに、サブプライム関連での、支払いは$25M(同レート換算で30億円)とのことです。
‐ 破綻した多くの負債者達は、家を売ることができなかったり、売っても負債が残ってしまったためとのこと
‐ 今年の初めに露見したサブプライムローンの破綻から、Countrywideを始め住宅ローン会社は貸し出し基準等の引き締めを行っていた。
‐ 住宅ローンの遅延は、カリフォルニアの中部、フロリダの南部、そして中西部で特に多い。
これは、住宅価格が急騰していた地域が中心なので、上記の話(住宅価格の下落が招いた問題)とつながっていると思います。
‐ Countrywideによると、4.56%のプライムのホームエクイティローンが遅延しており(昨年同期は1.77%)、サブプライムローンの遅延は、昨年の15.33%から23.71%に増えているとのこと。遅延の原因は、多くの見方であるローンの利率のリセットではなく、負債者が職を失ったり、それに近い状況に陥っているためのこととのことです。また、これらの人々は住宅価格が下落しているため、ローンの借り換え(組み換え)もできないでいるとのことです。
これも事実とすると、米国経済の足元はかなり揺らいでいる気がします。
FTによると、Mortgate等をベースとしたCDOは、昨今のM&Aの資金源となっており、ブームの大きな要因だったとのことです。ここにきて、クレジット・リスク等でCDOの需要は急速に落ち込んできているとのことです。
また、FT(米国版)の本日の25ページ目に、日本の銀行がサブプライムローン関連に1兆円($8.3B)融資しているとの記事がありました。事実とすると、米国のサブプライムローンに関わる問題は、日本市場にも影響が少なからずありそうです。
尚、上記はあくまでもニュースの一部に過ぎませんので、これだけを元に、米国経済が傾いていると判断することはできないと思います。また、情報の行き違いといった部分、可能性もあります。情報の取り扱いには、非常に気をつけるべきと思います。あくまでもご参考まで、と言うことを、ご了解下さいます様、よろしくお願い申し上げます。
参考記事)。
http://biz.yahoo.com/ap/070725/earns_countrywide.html
Financial Times, Wall Street Journal, on July 25
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